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SLAをどのように策定していくのか
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「第1回:今、IT部門に求められているSLAとは」では、SLA(Service Level Agreement:サービスレベルアグリーメント)の必要性について解説した。
確かにSLAは広がりつつあるが、「SLAの必要性はわかってもどのように策定すればよいかわからない」や「作ってはみたものの記述内容に自信がない」という声をよく聞く。そこで、第2回の今回はSLAの策定プロセスについて取り上げていく。
SLAには様々な締結の機会が考えられるが、ここでは情報システム子会社が親会社との間で結ぶSLAを例に解説する。
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SLA締結の機会
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SLAを締結する機会は、様々な組織において存在する(図1)。
図1:SLA締結の機会 出典:ITR (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
多くの人がまず思いつくのは、外部委託先との間で交わすSLAではないだろうか。アウトソーシング、ASP、通信キャリアの提供するサービスをはじめ、セキュリティ監視やフィールドサポートなどの様々なサービスにおいて、すでにSLAは適用されており、目にする機会も多いだろう。
次に、情報システム子会社が親会社と締結するSLAが考えられる。国内では大手企業の多くが情報システム子会社を有しているが、市場競争が激化するなかでサービスレベルのコミットメントを要求される機会が増えている。それと同時に、情報システム子会社が親会社で培った技術をグループ企業向けに展開する例も増えてきており、そこにもSLAを締結する動きがある。
ここでは、このような情報システム子会社を例にあげてSLAを策定するプロセスを探っていく。なお、親会社のIT部門がユーザへのITサービスの提供者として機能している場合は、ユーザ部門向けに内部的なSLAを提示するケースもある。ユーザ向のSLAについては次回以降で取り上げていく。
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SLA策定の枠組み
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前回、SLM(Service Level Management:サービスレベル管理)には、合意・実行・評価・改善の4つの段階があると説明した。SLAの策定はその中で、合意フェーズにあたる(図2)。
図2:SLA策定の枠組み 出典:ITR (画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
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SLMの実行においてもっとも重要な合意フェーズ
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合意フェーズには以下の4つのプロセスがあり、各々はいくつかのタスクから構成される。
- サービスのメニュー化
- 評価項目の設定
- サービスレベルの設定
- 利用者との合意
表1:合意フェーズの4つのプロセス
SLMを実行する上で、合意フェーズはもっとも注意を要し、サービスの提供者と利用者の双方が不利益な条件を避けるために神経を使うところでもある。また、サービスレベルは対価(課金やコスト)に見合った水準であることを要求されるため、協議の過程で日頃の不満がでやすい。
そのため、利害関係による過度な対立を生まないように、提供者と利用者との間でSLMの目的や方針に対する認識を十分に共有しておくことが重要だ。この点が不十分であると、合意するまでに長い時間を浪費したり、極端にハードルの低いサービスレベルが設定されたりして、使いものにならないといった弊害を招くことになる。
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著者プロフィール
株式会社アイ・ティ・アール 金谷 敏尊
シニア・アナリスト
青山学院大学を卒業後、マーケティング会社の統括マネージャとして調査プロジェクトを多数企画・運営。同時にオペレーションセンターの顧客管理システム、CTIなどの設計・開発・運用に従事する。1999年にアイ・ティ・アールに入社、アナリストとしてシステム・マネジメント、データセンター、アウトソーシング、セキュリティ分野の分析を担当する。著書「IT内部統制実践構築法」ソフトリサーチセンター刊。
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