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SLAによるITマネジメントのあり方

第5回:重要性が高まるベンダーマネジメント

著者:アイ・ティ・アール  金谷 敏尊   2007/4/20
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ベンダーとの付き合い方

   「第4回:企業とベンダーが結ぶSLAとは」では、ベンダーと締結するSLA(ベンダーSLA)の内容について解説したが、適切なIT調達を行うにはベンダーマネジメントについても留意が必要である。

   国内企業はベンダーと付き合ううえで様々な課題を抱えているが、それらは必ずしもSLAで解決できるものばかりではない。そこで、第5回ではベンダーマネジメントについて取り上げ、IT調達のあり方について深く掘り下げて解説していく。SLMよりもやや広範なテーマであるが、参考にしていただきたい。

ベンダーマネジメントの課題

   今日では、情報システムの構築・運用において、製品や労働力を外部から調達することは一般的となっている。しかし、市場のIT製品/サービスは多様化の一途をたどっており、IT部門におけるベンダーや製品の選定機会も格段に増えてきている。

   より幅広い選択肢が期待できるようになった反面、日々のベンダーマネジメントの負荷や難易度は高まっている。特に国内の大手企業においては委託先の増加や多様化が著しく、「契約管理が行き届かない」や「最適なベンダーを選定できない」といった問題が浮上している(図1)。

ベンダーマネジメントの課題 出典:ITR
図1:ベンダーマネジメントの課題
出典:ITR
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

   ベンダーマネジメントに関する課題は、国内市場に限った話ではなく、海外でも似たような傾向が見られる。図2はIT組織における課題の重要度を調査したものだ。

IT組織の課題と重要度(ワールドワイド) 出典:Forrester Research
図2:IT組織の課題と重要度(ワールドワイド)
出典:Forrester Research

   これによると、「ITベンダーの集約・少数化」を重要課題とする企業は66%にものぼり、委託先の増加にともなう管理負荷が高まっている状況がうかがえる。さらに、「プライムコントラクタ(元請業者)の選別」についても50%の企業が重要と回答している。

   個々のプロジェクトを立ち上げるたびにベンダー選定を行えば、自ずと契約先は増えることとなる。このため、有力なプライムコントラクタを選別して、そこに調達先を集約することが多くの企業で検討されているのである。

   フルアウトソーシングを実施することでベンダーの1本化をはかっている企業はある。だからといって安心はできない。特定ベンダーとの深い関係は、裏を返せば技術、製品、サービス面において中立的な選択ができなくなるリスク(いわゆるベンダーロックイン)を意味するからだ。また長期契約が続くと、関係が慢性化したり、馴れ合いが生じたりすることもあるだろう。

   このような種々の課題を解決するために、IT部門は意識的にベンダーマネジメントに取り組む必要がある。また、情報システム子会社にIT業務を全面委託する場合も、再委託先として様々なベンダーが紐づいているため、同様の課題が存在する。

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株式会社アイ・ティ・アール 金谷 敏尊
著者プロフィール
株式会社アイ・ティ・アール
金谷 敏尊

シニア・アナリスト
青山学院大学を卒業後、マーケティング会社の統括マネージャとして調査プロジェクトを多数企画・運営。同時にオペレーションセンターの顧客管理システム、CTIなどの設計・開発・運用に従事する。1999年にアイ・ティ・アールに入社、アナリストとしてシステム・マネジメント、データセンター、アウトソーシング、セキュリティ分野の分析を担当する。著書「IT内部統制実践構築法」ソフトリサーチセンター刊。


INDEX
第5回:重要性が高まるベンダーマネジメント
ベンダーとの付き合い方
  ベンダーマネジメントの機能
  ベンダーに期待される自主性