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SLAによるITマネジメントのあり方

第1回:今、IT部門に求められているSLAとは

著者:アイ・ティ・アール  金谷 敏尊   2007/3/8
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SLAとSLMから学ぶITマネジメント

   昨今、SLA(Service Level Agreement:サービスレベルアグリーメント)やSLM(Service Level Management:サービスレベル管理)というキーワードを頻繁に耳にするようになってきた。しかし、それらの意味する所や効果的な活用法についてはまだまだ議論の余地があり、捉え方も人によって異なるのが現状である。

   そこで本連載ではSLA/SLMの解説を通じて、サービスレベルを用いたITマネジメントのあり方を探ってみる。第1回目の今回は、SLA/SLMの概要について解説し、その背景とメリットについて解説する。

サービスレベルとは

   「サービスレベル」と聞いて皆さんが連想するのは何だろうか。コールセンターの営業時間、システムダウンの発生回数、サーバ保守要員の到着時間など様々な回答が予想されるが、実はこれらはいずれもサービスレベルである。

   よく「弊社のシステムはサービスレベルが低いから」などと表現されるように、サービスレベルとは一般に「ITサービスの水準」を意味する。転じて、IT以外のサービスを指す場合もある。

   例えば、配送先へ遅延なく品物を届けることは、物流のサービスレベルといえるだろう。筆者の身近な人々は、ショップの評価をするのに「あのレストランはサービスレベルが低い」などと表現することがある。これも、味つけや店員の対応の良し悪しなど、やはりサービスの水準のことをいっているのである。蛇足だが、一度しか入ったことのない飲み屋が名前まで覚えていてくれたりすると「あそこはCRMができている」と評したりもする。

   それでは、本連載の主題であるSLAとは何だろうか。


SLAとは

   SLAとはService Level Agreementの略であり、日本語では「サービスレベル合意」などと訳される。NDA(Non-Disclosure Agreement)が秘密保持契約と訳されるのと同様に、SLAもサービスレベル契約と解釈されることがあるが、必ずしも契約だけを意味するのではない。

   例えば、組織間で何らかの協定や合意の証としてSLAを締結することがあり、この場合は「合意書」と訳した方が適当である。契約書というよりは規定書や覚書に近く、法的拘束力を持たないことも少なくない。

   ここでは、SLAを「サービスを提供する側とその利用者の間に結ばれるサービスの水準に関する合意書」と定義する。具体的には「適用範囲」「管理項目」「達成目標」「条件」などのサービスの水準に関する約束事を記載するものである。

   そしてSLMとは、このSLAに基づいて日常の活動が適正に実行されているかを監視し、評価を通じて維持・改善を行う管理のことをいう。つまりSLMは「合意」「実行」「評価」「改善」のマネジメントサイクルによって成り立っている(図1)。

SLAとSLM 出典:ITR
図1:SLAとSLM
出典:ITR

   SLMはITサービスの水準を管理することが目的であり、SLAはその手段と捉えるとよいだろう。

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株式会社アイ・ティ・アール 金谷 敏尊
著者プロフィール
株式会社アイ・ティ・アール
金谷 敏尊

シニア・アナリスト
青山学院大学を卒業後、マーケティング会社の統括マネージャとして調査プロジェクトを多数企画・運営。同時にオペレーションセンターの顧客管理システム、CTIなどの設計・開発・運用に従事する。1999年にアイ・ティ・アールに入社、アナリストとしてシステム・マネジメント、データセンター、アウトソーシング、セキュリティ分野の分析を担当する。著書「IT内部統制実践構築法」ソフトリサーチセンター刊。


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