TOPセミナー/イベント・カレンダーイベントレポート> 次バージョン以降のリリーススケジュール
MySQL Conference & Expo Report
MySQL Conference & Expo Report

次期バージョンの姿が見え、より飛躍するMySQLを追う

著者:野村総合研究所  梶山 隆輔   2007/5/16
前のページ  1  2  3  次のページ
次バージョン以降のリリーススケジュール

   パートナー企業向けのミーティングなどを通じて、2007年から2008年にかけてMySQLのロードマップが紹介された。まず次期バージョンとなるMySQL 5.1のリリースが2007年の第4四半期となったほか、従来5.2として予定されていたバージョンが6.0に変更され、リリース予定は2008年第2四半期となったことが発表された。

   ここでアナウンスされた各バージョンの特徴的な機能は以下の通りである。
MySQL 5.1(2007年第4四半期リリース予定)
プラガブル・ストレージエンジン
トランザクションやデータ管理を行うMySQLのストレージエンジンの開発を容易にするアーキテクチャ。これによりMySQL社以外からも新しいストレージエンジンが登場する予定。
パーティショニング
テーブルやインデックスを複数のディスクやファイルシステム上のパーティションに分散して配置する機能。格納する値の範囲、ハッシュ値、特定のカラムの値やそれぞれの組み合わせで分割の単位を決めることができる。
行レベルでのレプリケーション
複数のMySQLサーバにデータをコピーするレプリケーション機能で、更新があった行のみの他のサーバにコピーするオプション。
※現在のバージョン5.0までは、それぞれのサーバでクエリを再実行することで同期させている。
MySQL Clusterでのディスク利用
4.0から導入された非共有型のクラスタリング機能で、データの補完先としてディスクを利用できるように。
※現在のバージョン5.0までは、オンメモリDBのみ。
データインポート(リストア)のパフォーマンス向上


MySQL 6.0(2008年第2四半期リリース予定)
Falconストレージエンジン
トランザクションをサポートするストレージエンジン。従来は5.1のリリースに間に合う予定だったが延期に。
サブクエリのパフォーマンス向上


MySQL 6.1(リリース時期未定)
全てのストレージエンジンでのオンラインバックアップ
一部ストレージエンジンでは6.0で利用可能にしたいとのこと。SELECT文などのDMLは継続して処理可能が、バックアップ中はDDLの実行が一時的にブロックされる。

表1:MySQLのロードマップ


MySQLとIBMが提携

   MySQLとIBMの提携が発表されたことが、今回のカンファレンス中の大きなニュースの1つである。これは以前IBM System i(旧iSeries)用データベースのDB2がMySQLのストレージエンジンになることだ。MySQLのコミュニティ版とエンタープライズ版のバイナリがそれぞれリリースされる予定という。ただしこれはIBM System iのi5/OS用のDB2(DB2 for i5/OS)に限定した発表であり、WindowsやLinuxなど他のOS向けのDB2には関連しない。

   すでにIBMでは、Zend社の協力でSystem i上においてPHPアプリケーションの動作を保証しているが、今回の提携によりSugarCRMなどPHPとMySQLを利用するアプリケーションすべてがSystem i上のDB2と連携可能になるという。データ管理やバックアップ、高可用性オプションは、すべてDB2の機能を利用することになる。このDB2をMySQLのストレージエンジンにするという発表は、実態としてはDB2にMySQL利用アプリ向けのインターフェースを追加した形ともいえるだろう。


新しいストレージエンジンが続々登場中

   MySQL 5.1から実装されるプラガブルストレージエンジンのアーキテクチャにより、MySQL社以外のサードパーティやコミュニティにて新しいストレージエンジンの開発が始まっている。将来的にはMySQL社の製品に取り込まれるケースだけではなく、オプションや別製品として公開および販売される可能性もあるだろう。

   いずれも開発途上の段階だが、今回のカンファレンスではニーズや目的に特化した個性的なストレージエンジンが数多く登場した。2日目の基調講演後にはMySQLのストレージエンジンに関する重鎮とサードパーティの代表者が意見を交わし合うパネルディスカッションなども行われ、参加者は大いに盛り上がった。

パネルディスカッションの様子
図6:パネルディスカッションの様子

エンジン 開発元 概要
solidDB Solid Information Technology テレコム系の組込DBとして実績のあるsolidDBを、エンタープライズ向けのストレージエンジンとして実装。すでにSolid社よりエンジンを組み込んだバージョンのMySQLであるsolidDB for MySQLを無料配布中。MySQL Enterpriseと同等レベルのサポートサービスを販売。同期・非同期などロジックを選択可能な高可用性オプションを用意。
NitroEDB NitroSecurity ネットワークやセキュリティ関連のログなど数千万件クラスの大量なデータを迅速に処理することを目的に作られたエンジン。トランザクションはサポートしないが、カラムの数によらず検索性能が変わらない仕組みを実装。大量のインサートが行われている最中でも、テーブルフルスキャンが必要とされる集計も短時間で処理可能。
PBXT(PrimeBase XT) SNAP Innovation GmbH MVCC(マルチバージョニング)に対応した大量の同時アクセスのハンドリングを得意とするエンジン。MySQLのサーバフロントエンドと連携した通常のストレージエンジンとして機能すると同時に、BLOBの管理を効率化する独自APIを用意(MySQLのセキュリティ管理等は経由しない)
AWSS3 Mark Atwood氏 Amazonが提供するオンラインストレージサービス(S3)に対してMySQLのSQL文でデータの操作を行うためのエンジン。SQL文をS3独自のAPIに変換する位置づけ。
DB2 for i5/OS IBM 詳細は上記。IBM System i上のi5/OSのみで利用可能。技術的な詳細は未発表。
MyISAM++ MySQL AB MySQLに当初から搭載され、現在も標準となっているMyISAMの拡張版。トランザクションのサポートや行レベルでのロックなど大幅に機能追加され、かつ性能も向上する予定。
ScaleDB ScaleDB Inc. 複雑なJOINを含むSQL文を高速に処理可能なエンジン。現在は開発中とのことで、企業情報を含め一切の情報が非公開。
BrightHouse Infobright Inc. 数TB級のデータウェアハウス向けのエンジン。データを圧縮することで効率的に検索を可能としているとのことだが、技術的な詳細は未発表。

表2:MySQLの新しいストレージエンジン

前のページ  1  2  3  次のページ

MySQL Conference & Expo Officeial Site
http://www.mysqlconf.com/

写真提供:James Duncan Davidson
http://duncandavidson.com/
株式会社野村総合研究所 梶山 隆輔
著者プロフィール
株式会社野村総合研究所  梶山 隆輔
野村総合研究所 情報技術本部 オープンソリューションセンター 副主任テクニカルエンジニア
OSSC(オープンソースソリューションセンター)のメンバーとして、JBossやMySQLを中心としたオープンソース・ソフトウェアを用いたシステム基盤の構築や講演などを通じたオープンソース関連の情報の発信を行っています。

OpenStandia
http://openstandia.jp/


INDEX
次期バージョンの姿が見え、より飛躍するMySQLを追う
  「MySQL Conference & Expo」の概要
次バージョン以降のリリーススケジュール
  高可用性のための機能やソリューション