TOP
>
比較データ
> OSS固有の論理から生まれる、商用DBとは異なったソリューションへの視点
商用&OSSデータベースの現状と今後
第5回:ホントにつながる?商用とOSSの異種データベース接続を見てみよう
著者:
オフィスローグ 工藤 淳
2005/7/7
前のページ
1
2
3
4
OSS固有の論理から生まれる、商用DBとは異なったソリューションへの視点
しかし、あえて疑問を差しはさんでみたい。世の中はアウトソーシングへと動いている。ほとんどの企業や組織がTCO削減のスローガンのもとで、こうした技術者リソースの調達を外部へシフトさせていく中で、なぜあえて流れに逆行した自社内育成を選ぶ必要があるのだろうか?それについても石井氏は語る。
「OSSの場合、商用ソフトウェア製品とは異なる論理があります。それは"内部技術者を育成しなければならない"という、OSSならではの必然性でもあります」
OSSのメリットとは何だろうか?私たちはすぐにコスト的な面ばかりを連想するが、実はもっと大きなメリットがある。それは「ベンダーのバージョンアップのペースに追従していく必要がない」ということである。ITビジネスのさなかにいると、ついバージョンアップは行うものと無意識に考えがちだ。
たしかにエンタープライズ系のビジネスソリューションなどでは先端技術にキャッチアップしていくことが必須だが、一方そういう時間の流れとはまったく別の世界もある。たとえば定型作業を繰り返す製造系のラインなどは、一度セットアップしておけばあとは壊れるまでそのまま使っていればよい。むしろ順調に動いているものをヘタにバージョンアップして不具合が出るよりは、ずっとそのままでおくメリットの方が大きい場合すらあるのだ。
さらによいのは、ベンダーのバージョンサポートが切れた後も、わかる人間さえいれば自社でずっと面倒を見ていけることだ。商用パッケージ製品の場合ソースコードが見られないが、OSSならば自力でメンテナンスや改良が可能なのである。この意味で、OSSでは自社内に技術者を育てるメリットと必要性があるのである。
そうしたシステムのライフサイクルという長い眼で見ると、かえって総コストは安上がりだったりすることもあるし、事実最近はそうした超長期のスパンでコストとシステムのバランスを考える経営層も現れてきているという。
異種DB接続が目的なら迷わず商用DB! でも、OSS DBからは違う明日が見えてくる?
当初のテーマ〜異種データベース接続からはずいぶんと離れてきてしまった気もするが、商用データベースとOSSデータベースの2つをこうして並べて比較すると、両者のソフトウェアとしての根本的なスタンスの違いがより鮮明に見えてきたのではないだろうか。
単に「異種データベースと、つながる/つながらない」といった実装レベルの機能だけにこだわるのであれば、迷うことなく商用データベースを選択するのがよいだろう。なにしろどんなに混在/乱立した環境であっても「ビジネスとしてのデータ交換を成立させる」という至上命題のもとで、世界の大手ベンダーが総力を挙げて開発しているのだ。あなたがエンジニアとして、また組織のスタッフとして作業を成功裡に終わらせたければ、迷わず買えばよいのである。
一方で上に述べたような、組織の未来像までを含んだ「これからわが社はどうやっていくのか(いきたいのか)?」といった、大きなスタンスから考えてみたい場合には、OSSは立派な選択肢の一つとなるだろう。もしOSSデータベースでデータ交換だけがしたいなら、商用の専用ツールもある。しかしせっかくOSSでの異種データベース接続などという珍しい(?)テーマに出会ったのだ。ちょっと足を伸ばして、自社のシステムの未来ビジョンを考えてみるのもなかなか有意義ではないだろうか。
株式会社SRA 開発サービスカンパニーコンサルティング部
OSSビジネスプロジェクト長 石井達夫氏
マイクロソフト株式会社 サーバープラットフォームビジネス本部
アプリケーションインフラストラクチャ製品
グループシニアプロダクトマネージャ 斎藤泰行氏
(五十音順)
前のページ
1
2
3
4
著者プロフィール
オフィスローグ 工藤 淳
IT技術系出版社勤務を経て、オフィスローグとして独立。データベース関連誌編集に携わっていた流れで、現在もデータベース系の執筆が比較的多い。元々は楽器から建築、自動車まで何でも注文があれば書いてきたのが、気がついたらIT専門のような顔をして仕事をしているのに自分で少し驚愕、赤面。
INDEX
第5回:ホントにつながる?商用とOSSの異種データベース接続を見てみよう
「つながるかどうか?」よりも「どうつなげるか?」が現在の課題
どんなデータソースもシームレスに扱えることが、商用DBのデータ変換の条件
コスト削減、スピードアップ……商用DBの異種データ接続は厳しい課題の連続
OSS固有の論理から生まれる、商用DBとは異なったソリューションへの視点