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CRMの戦略性と定義をめぐる問題

2006年3月16日(木)
匠 英一

はじめに

本連載では「経営革新を担うCRMの動向」というテーマで、今後のCRM(Customer Relationship Management)のITシステム化のポイントを2回に分けて解説していく。

第1回の今回はCRMの「戦略性と定義をめぐる問題」について、第2回では「顧客の経験価値(Customer Experience)を軸にしたプロセス改革」と「サービスの深化と個人情報保護の課題」について解説する。

CRM業界の動きと失敗率の問題

CRMのITシステム化は、2002〜2003年にかけて減少したものの、2005年から景気回復とともに成長の勢いは続き、パッケージソフトの本年度売上げでは昨年比30%以上の成長率という数字が調査で出ている。

IT業界では、CRMをシステムとして分類する際に以下の3タイプに区分される。

  • データベースやBIを軸とした分析系CRM
  • コールセンターや商談支援SFA(Sales Force Automation)を含むオペレーショナル系CRM
  • 携帯やeメール利用のコミュニケーション系CRM
表1:CRMシステムの分類


その中で成長率が高いのは分析系CRMであり、その次がWebや携帯利用のコミュニケーション系だ。

オペレーショナル系CRMはコールセンターへの導入が一巡したという面があるため成長率は高くはないが、成果という面では最も成功した分野だ。

しかし営業・商談支援のオペレーショナル系CRMは失敗率が高い。ただし、この分野でも携帯を利用した営業支援での成功例(ソフトブレーン社など) が増えていることと、ASP利用型のCRM(セールスフォースドットコム社など)が中小企業の普及にはずみをつける可能性があることから、今後の飛躍が期 待される。

このように、CRM業界として全体の動きは上昇傾向にあることは確かだ。しかし、まだ失敗率の高いITシステムとしてCRMの普及が遅れていること、とくにその要因が日本の営業や経営スタイルに根深くある問題と絡んでいる点について考察していく。

CRMの戦略性の欠如、その歴史的問題とは?

筆者はこの5年間ほどで100社以上のCRM導入企業の現地調査をしてきた。その成果の一部は「CRMベストプラクティス白書」(CRM協議会)という出版物にもなっているが、興味深いことに失敗したCRM実践の企業を調査してみると、経営者を含めて現場担当者に「失敗の理由」の自覚がないのがほとんどだ。

では、なぜその自覚がないのだろうか。理由には次の2つがあげられる。

  • CRMの戦略目標とは「顧客満足度」と「売上げ」のことだという信念
  • CRMは一度構築すれば「成果」を生むものだという信念
表2:自覚がない理由


上記のいずれもが企業の価値にかかわる戦略指標であるが、要するに戦略はすでにあるとみなしていることに問題がある。だから、自社がなぜ顧客満足度をあげる必要があるかを深くは問題にしないし、その必要もないと考えていることになる。

このように、CRMが戦略性を考えないシステムに変わってしまったことの背景には、70年代からの「顧客満足経営」が成功できずに終わった日本の企業の根深い歴史的問題がある。

デジタルハリウッド大学 デジタルコミュニケーション学部 教授

90年に(株)認知科学研究所代表取締役に就任し、以後大手PCベンダーのコンサルティングや国家認定のIT 資格試験の受託開発、サテライトオフィス企画などに従事。95年に(株)ヒューコム入社後、インターネット事業を推進。公的な役職として、ネットワーク協 議会Eビジネス委員会座長、日本インターネット協会幹事等歴任。2003年に早稲田大学客員研究員に就任。2005年にデジタルハリウッド大学 教授に就任。現在CRM協議会の運営や大手ベンダーなどのCRMコンサルティング・研修業務をヒューコム社の主席コンサルタントとして従事。

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