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米国でAIを活用している産業【後編】

2018年5月11日(金)
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)

はじめに

米国でAIを活用している産業の紹介第3回目は、セールス&マーケティングにおける活用事例です。EC・小売業のB to Cと企業向けのB to Bの2分野において、AIを使った予測、分類、分析の取り組みが活発に行われています。その中からいくつか事例を見ていきましょう。

米国の各産業におけるAIの活用状況

EC・小売業(Retail/Commerce)

インターネットでモノを買う時代になり、リコメンデーションや接客ロボ、マーケティングオートメーションなどデジタル情報を活用するセールス&マーケティングが重視されています。これらの分野にも続々とAIが活用されてきています。

【EC・小売業の事例】
LiftIgniter:リコメンドAI
ECサイトなどでおなじみのレコメンド機能は、さまざまなレコメンデーション・エンジンがしのぎを削ってきましたが、ここでもAIを使ったレコメンデーション・エンジンが急速に台頭してきています。

リフトイグナイター社のレコメンデーション・エンジン「LiftIgniter」もその1つで、従来の技術であるルールベースではなく、購買情報をもとにAIが相関関係を分析し、個々のユーザーに案内すべきページをレコメンドします。

日本でもNTTドコモが「dショッピング」や「dfashon」に導入しているほか、リクルートの通販サイト「ポンパレモール」にも導入されています。

Nice Systems:コンタクトセンター支援
疑わしい取引を監視するActimize(アクティマイズ)のAMLソリューションやRPAで有名な会社です。一方で、エンタープライズ事業として音声分析や感情分析、通話録音でコールセンターを支援する「カスタマー・エンゲージメント・ソリューション」も展開しています。ここでは、後者のカスタマー・エンゲージメント・ソリューションを紹介します。

ナイスシステムズ社では、以前から下記のようなコンタクトセンターマネジメントソリューションを提供していましたが、最近はその仕組みにAIを取り入れています。ナイスシステムズの本社はイスラエルにありますが、日本法人ナイスジャパン株式会社も設立されています。

  • 最初の数秒の会話で顧客を自動認証する
  • 顧客の感情を分析し、対話内容からオペレータに必要な情報をタイムリーに提供する
  • 会話中に相手が詐欺師などの不正ユーザーかを判断して犯罪を防止する
  • オペレータの対応をリアルタイムチェックして、コンプライアンス違反を回避する
  • 音声、画像、動画、テキストなどをオールインワン型のレコーディングサーバーに記録する
  • 大量のログから自動化できそうなプロセスを見つけ出し、業務効率化につなげる

なお、日本でもコンタクトセンター(コールセンター)の顧客対応にAIを活用した事例は数多くあります。

AIRPR:PR分析
「広告にどれくらいの効果があるか」というPRの投資対効果は小売業にとって永遠のテーマです。エアPR社は、このようなPR分析ソリューションを提供している会社で、蓄積したビッグデータの分析や取るべき行動の選択などにAIが使われるようになってきました。

「AirPR Research Trends」というツールでは、ブランドイメージを高めるために消費者に伝えるメッセージを洗練させるため主要キーワードに関するトレンドやトピックスを調査し、メディアやインフルエンサーのリストを作成してブランドにふさわしい著者をピックアップします。

また、「AirPR Monitoring&Measurement」では、Webクローラにより自社のニュースがどのように取り上げられているかを監視したり、競合他社との比較データを把握したりします。また、キャンペーン効果を測定し、どのキーメッセージが共鳴しているかを分析します。

autopilot:カスタマージャーニー分析
顧客が商品やサービスを知り、最終的に購買するまでの行動をプロセス化すると、「気付く」→「興味を持つ」→「評価する」→「決断する」→「キープする」というような流れになります(図1)。こうした行動を旅行に例えて「カスタマージャーニー」と呼び、個々のプロセスに焦点を当てたマーケティングとその効果測定が行われています。

図1:カスタマージャーニー

カスタマージャーニーの基本は、顧客の分類(パーソナライズ化)です。オートパイロットのマーケティングジャーニーツールでは、顧客がどの段階にいて、どのようなマーケティングが効果的か、実際効果がどうだったのか、などをビジュアルに操作・表示できるようになっています。最近では、コンバージョン(最終的に購入してくれる)の最適化にAIを活用しようという取組みがなされているようです。

retentionscience:マーケティングオートメーション
「マーケティングオートメーション(MA)」とは、企業がOne to Oneマーケティングを行う際に発生するさまざまな作業を効率化するためのマーケティング自動化・効率化を表す言葉です。すでに非常に多くのMAツールが出回っており、当社でも「Hubspot」という製品を利用しています。

このマーケティングオートメーションにもAIが活用されつつあります。リテンションサイエンス社は、次のようなマーケティングオートメーションの処理にAIを活用しています。

  • これまでルールベースで発信していたメールをAIで顧客動向を予測して自動化
  • 顧客の行動や親和性などAIで顧客を分析して行動を予測
  • AIを使ってビジターや顧客のリードスコアリングを行い、広告・キャンペーンを最適化

insidesales:インサイドセールス
「インサイドセールス」とは内勤型営業のことで、外回り主体の外勤型営業(フィールドセールス)に対比する言葉です。「営業は足で稼げ」とよく言われて、社内に営業がいると嫌味を言われる時代は過去のこと。最近は、営業活動の効率化が重視され、データ重視のインサイドセールスが注目されています。

その名もズバリ、インサイドセールス社は、インサイドセールスを行うためのツールを提供している会社ですが、最近、これらのツールにおける優先順位付けなどにAIを組み込んで活用を始めています。

  • Playbook
    いろいろなCRMと同期して、リード(見込み客)とアカウント(顧客)の優先順位付けと管理を行う
  • Power Dialer
    見込み客と連絡を取り合うためのツール。優先順位付けされたリストをもとに必要な分析情報を表示しながら、ワンクリックでダイアルしたりメールを送信したりする
  • Pipeline
    過去の販売データをベースに予測分析を行い、リスクを特定して販売判断をサポートする

B to Bセールス&マーケティング(B2B Sales&Marketing)

B to Bにおいてもマーケティング支援や営業支援、案件管理、販売予測、契約分析などさまざまな分野でAIが活用されつつあります。現在および過去の膨大な案件データを管理し、聖徳太子ならぬ人工知能がその中からケアすべき案件を通知してくれたり、ホームページから資料をダウンロードした顧客に営業アシスタントならぬAIがまるで人間のようにフォローメールしたりするクラウドツールが続々と登場しています。

【B to Bの事例】
conversica:営業アシスタントAI
米国では、企業内にAIアシスタントを置き、会議のアレンジやスケジュール調整、チケット手配などの社内業務をサポートする事例が盛んです。コンバーシカ社は、その顧客対応版として、AIを活用したバーチャル営業アシスタントを提供しています。Webサイトからの問い合わせや資料をダウンロードした見込み客とのやり取りを通じて、AIが自社商品やサービスに対する興味度合いを判断し、適切に対応して後方の営業担当に引き継ぎます。

同社のAIはCRMの「Salesforce」「Velocify」やマーケティングオートメーションの「Marketo」「Hubspot」などのシステムと連携しています。なお、日本ではリクルートの投資会社が同社に出資しています。

aviso:販売プロセスの効率化支援
B to Bのセールス&マーケティング支援AIからもう1つ紹介しましょう。アビソ社は予測管理、パイプライン・レビュー、取引レビューを行う「Aviso Sales Vision」というプラットフォームを提供しているスタートアップ企業です。

  • 予測管理(Forecast Management)
    どの会社も個々の案件の成約見込みを管理し、月次や四半期の業績見込みを管理しています。多くの会社がこの案件見込みをExcelなどのスプレッドシートを使って管理していますが、アビソ社は“スプレッドシートを捨ててツールを使おう”という謳い文句でCRMと連携するAI駆動形予測ツールを提供しています。
  • パイプライン・レビュー(Pipeline Review)
    B to Cのカスタマージャーニーに相当するもので、「パイプライン管理」という言葉が使われます。これは、初回訪問>提案>見積もり>クロージング>成約といった営業プロセスをパイプラインにたとえて管理するB to Bのマーケティング手法です。個々の案件の状態を集計することで月次や四半期ごとの予測を管理するのが上記の予測管理ですが、パイプライン・レビューではパイプの目標と実績をCommit(ほぼ成約済)、Most Likely(予測)、Best case(ベストケース)、Won(新規獲得)、Lost(失注)などに分けて週単位でビジュアルに表示し、営業ミーティングで利用できます。
  • 取引レビュー(Deal Review)
    膨大な案件をAIが管理し、クロージング見込みの高いものを通知したり、取引履歴を管理したりします。

営業・マーケティング支援の分野においては、人工知能で全く新しいサービスが出るというよりも、従来からあるツールやプラットフォームにAI要素を一部加えて”AI駆動”を謳っているものが多いです。見込み客をカスタマージャーニーやパイプラインごとに分類する、購買嗜好を分類してリコメンドするなど教師なし学習のクラスタリング技術が光る分野でもあります。

著者
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)
株式会社システムインテグレータ

東芝、SCSKを経て1995年に株式会社システムインテグレータを設立し、現在、代表取締役社長。2006年東証マザーズ、2014年東証第一部上場。

前職で日本最初のERP「ProActive」を作った後に独立し、日本初のECパッケージ「SI Web Shopping」や開発支援ツール「SI Object Browser」を開発・リリース。日本初のWebベースのERP「GRANDIT」をコンソーシアム方式で開発し、統合型プロジェクト管理システム「SI Object Browser PM」、アプリケーション設計のCADツール「SI Object Browser Designer」など、独創的なアイデアの製品を次々とリリース。最近は、AIを利用したサービスに取り組んでいる。

主な著書に「Oracle8入門」シリーズや「SQL Server7.0徹底入門」、「実践SQL」などのRDBMS系、「グラス片手にデータベース設計入門」シリーズや「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識」などの業務知識系、「実践!プロジェクト管理入門」シリーズ、「統合型プロジェクト管理のススメ」などのプロジェクト管理系、最近ではThink ITの連載をまとめた「これからのSIerの話をしよう」を刊行。

「日本のITの近代化」と「日本のITを世界に」の2つのテーマをライフワークに掲げている。

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