【新・言語進化論】
土日に買って勉強したい「言語」本
第2回:Think ITライター陣を支えた書籍たち
編者:シンクイット編集部
公開日:2007/11/10(土)
先人に「役立った」と言わしめた書籍とは
インターネットで手軽に最新情報を手に入れられる現代。しかし、質が高く、かつ手元に置いていつでも参照できる書籍は、第一線で活躍する技術者にとって、非常に重要な役割を担っている。
そこで「土日に買って勉強したい『言語』本」の第2回では、弊誌Think ITで原稿を執筆してきた、または記事作成に協力してきた技術者の方々に、これまでの経験から「自分を助けてくれた」「自分を支えてくれた」書籍を紹介していただいた。
1人目は「初体験! TOMOYO Linux」や「TOMOYO Linuxメインラインへの挑戦」などを連載している、TOMOYO Linuxプロジェクトのマネージャ 原田 季栄氏だ。ここでは原田氏が推薦する4冊を紹介する。
原田 季栄
北海道室蘭市生まれ。1985年北海道大学工学部応用物理学科卒。同年NTT(横須賀研究センター)入社。現在の所属は、株式会社NTTデータ技術開発本部。2003年よりオープンソースの研究開発に取り組む。「使いこなせて安全」を目指すTOMOYO Linuxプロジェクトのマネージャ。
haradats@gmail.com
UNIXプログラミング環境
著者:Brian W.Kernighan、Rob Pike、石田 晴久(翻訳)
発行:アスキー
ISBN:978-4-87148-351-7
仕様:514ページ
価格:3,800円(当時)
発売日:1985年09月
「新入社員の頃、自分で(自費で)で購入した書籍です。もう20年以上前なのでなぜ購入したかは、はっきり覚えていませんが、職場の先輩達をみて『自分も早くUNIXを使いこなせるようになりたい』という気持ちだったと思います。
本書の前に、同じKernighan博士による『プログラミング言語C』を購入しており、Kernighan博士のファンになっていたことも影響しているかもしれません。ちなみに、この2冊は、ともに石田先生の監訳です。
私は大学では応用物理学科に籍を置いていました。卒論のテーマはガリウムヒ素のフォノンフォーカシング(フォノン収束効果)でしたが、実験をしていたわけではなく毎日ひたすらFORTRAN77で物性のシミュレーションプログラムを書き、その結果と実際のデータ(写真)を比較する、ということをしていました。良いモデルを定義すると、実際の現象にきわめて近い結果が得られるというわけです。
今思うと作成していたプログラムはそれほど複雑なものではないと思いますが、当時は計算というと大型計算機センターでバッチを流すという時代でした。計算機センターには、パンチ室があって、タイプライターのような機械を用いてステートメントを1行ずつカードにタイプします。1,000行のプログラムなら1,000枚タイプします。
昨今『見える化』といわれていますが、パンチカードの束はまさに『プログラムそのもの』です。見えるどころか触れます(笑)。カードの『削除』がプログラムの削除になります。TSSなので、パンチカードを読み込ませたらあとは実験室で処理状況を確認しながら結果を待つだけで、大げさにいえば運命の声を待つようなところがありました。パンチカードの束を抱えて、研究室と計算機センターの間を何度も往復しました。
就職したNTTの横須賀研究センターの研究室(複合通信研究部の分散処理プログラム研究室。略称『信プ室』)ではUNIXの研究開発を行っており、シャープの(あのシャープです)OA8100という装置がありました。これが私が最初に触ったUNIXサーバです。当時のUNIXは、GUIどころか日本語もEmacsもありません。「エディタ」は「vim」ではなく、Bill Joyが書いた本家本元の「vi」です。オリジナルの「vi」と現在の「vim」は、ゲゲゲの鬼太郎のオリジナル版と現代版くらい違います。その時は何とも思いませんでしたが、入社していきなりUNIXの環境というのは、なかなかきびしいものがありました。 次のページ