要求仕様書の標準化プロセス

2005年11月9日(水)
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)

IEEE830標準 ソフトウェア要求仕様


   要求仕様書の書き方は国際標準でも定義されています。図3はIEEE830で定義されているソフトウェア要求仕様(SRS:Software Requirements Specification)の構成です。標準規約のままだと網羅的で使いにくいので、DUNGEONはこれを参考にしながら実践的な内容のみを取り出し、表1のようなアウトプットを持つ「要求分析書」を標準ドキュメントとして定義しています。
ソフトウェア要求仕様の構成(IEEE Std. 830-1998, IEEE Recommended Practice for Software Requirements Specification)
図3:ソフトウェア要求仕様の構成
(IEEE Std. 830-1998, IEEE Recommended Practice
for Software Requirements Specification)
(画像をクリックするとExcelファイルをダウンロードできます。23.5/KB)

  • 要求概要
  • システムの目的
  • 現状の課題と改善案
  • 基本要件と優先順位
  • 到達目標
  • システムの実現手段
  • システム化の範囲
  • 概略費用
  • 効果(定性/定量)
  • 体制図
  • 概略スケジュール

表1:DUNGEONの「要求分析書」の構成

   要求分析プロセスにおいて大変なのはアウトプットを導き出すまでの作業です。漠然とした要求を具体化して整理するために、ヒアリングやブレーンストーミング、問題要因関連図やフィッシュボーンダイアグラム(魚骨図)の作成など様々な手法を使います。ただし、DUNGEONはまずアウトプットを定義するという考え方を優先していますので、現バージョンではそれら過程の作業について触れていません。要求分析の結果は定型フォーム化しにくいので自由記述が主体となりますが、作成上のポイントを以下に説明します。


要求概要


   第三者がドキュメントを読む際に、いきなり詳細から記述されていると内容を理解しにくいものです。そのためDUNGEONのドキュメントは、最初に全体を俯瞰(ふかん)できるような概要を書くことを基本としています。要求概要ページでは必要に応じて経営からの要求を記し、それを実現するためのシステム要件、機能要件などの概要を記載します。


システムの目的


   はじめにシステムの目的を明確にしておかないと、システム化すべきか否かの判断があいまいになります。要求分析で大切なのは、取り上げることよりも捨てることです。つまり、トップや現場からあげられる様々な要求のうち、目的にかなっていて効果が大きく、現実的なものだけを取捨選択しなければなりません。

   要求を吸い上げる段階では、夢物語も含めてできるだけ自由に発言してもらいます。その中から"システムの目的"というフィルターをもとに、ばっさばっさと切り捨ててシステム化の範囲を優先順位づけします。

著者
梅田 弘之(うめだ ひろゆき)
株式会社システムインテグレータ

東芝、SCSKを経て1995年に株式会社システムインテグレータを設立し、現在、代表取締役会長。2006年東証マザーズ、2014年東証第一部、2019年東証スタンダード上場。

前職で日本最初のERP「ProActive」を作った後に独立し、日本初のECパッケージ「SI Web Shopping」や開発支援ツール「SI Object Browser」を開発。日本初のWebベースのERP「GRANDIT」をコンソーシアム方式で開発し、統合型プロジェクト管理システム「SI Object Browser PM」など、独創的なアイデアの製品を次々とリリース。

主な著書に「Oracle8入門」シリーズや「SQL Server7.0徹底入門」、「実践SQL」などのRDBMS系、「グラス片手にデータベース設計入門」シリーズや「パッケージから学ぶ4大分野の業務知識」などの業務知識系、「実践!プロジェクト管理入門」シリーズ、「統合型プロジェクト管理のススメ」などのプロジェクト管理系、最近ではThink ITの連載をまとめた「これからのSIerの話をしよう」「エンジニアなら知っておきたいAIのキホン」「エンジニアなら知っておきたい システム設計とドキュメント」「徹底攻略 JSTQB」を刊行。

「日本のITの近代化」と「日本のITを世界に」の2つのテーマをライフワークに掲げている。

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