クライアント型SOAによるBtoCビジネス向けシステム

2006年1月31日(火)
吉政 忠志

社外サーバと接続したい

まず「社外サーバと接続したい」ですが、技術的には社外のサーバとの接続はサーバ型もクライアント型も実現は可能です。

しかし現実問題として、他社のサーバとサーバtoサーバで直結することは担当者にとって勇気がいることであり、リスクヘッジの観点から進めるのがなかなか大変です。

その点、クライアント型は接続先ですでにクライアントからのセキュアな接続環境が整っているケースが多いため、クライアント側で接続する抵抗が少なく、実現が意外に容易です。よって、サーバ型には△を、クライアント型には◎をつけています。

 

データをクライアントに置きたくない

続いて「データをクライアントに置きたくない」ですが、クライアント型でもシンクライアントのシステムを構築することはできます。

しかしコストの観点から既存のシステムをあまり生かさずに大改造が必要なシンクライアントによるSOA構築よりも、「サーバ+Webブラウザ」のようなポータル的なシステムに軍配が上がるとの判断で、サーバ型には◎を、クライアント型には○をつけています。

サーバシステムを改変したくない

次に「サーバシステムを改変したくない」ですが、サーバを改変するサーバ型は当然×で、クライアント型には○をつけています。

 

処理プロセスを再構築したい

最後に「処理プロセスを再構築したい」ですが、これは両方とも実現可能です。しかしサーバ型のソリーション陣営のほうが、処理プロセスの再構築を支援できるソリューションが揃っていることから、サーバ型に◎を、クライアント型に○をつけています。

 

適用範囲

この4つの観点からそれぞれの適用範囲を考えてみると、表2のようになります。
 

サーバ型 1社内部でのSOA導入(業務プロセス改定が必要)
クライアント型 1社内部でのSOA導入(業務プロセス改定少ない)
BtoCシステムでのSOA導入(特に社外サーバとの接続がある場合)

表2:適用範囲

それではBtoCのシステムにおいて、何故クライアント型SOAが適切であるかについて説明していきます。

 

BtoCシステムにおけるクライアント型SOA

「クライアント型SOA」という言葉は読者の皆様にとってまだ耳慣れない言葉だと思います。しかし業界の動向を見ていると、2006年は大手もこの分野に名乗りをあげることが予測され、2006年半ばには一般的な言葉になると思います。

クライアント型SOAのシステム的な採用メリットはこれまでの連載で触れましたので、ここでは深く触れません。

再確認するとすれば、「様々なメジャーサイトを見てください」です。メジャーサイトでは、連鎖的ビジネスを展開して他業種との相乗効果を狙ったビジネス展開をしています。

この傾向が存在していること自体、BtoCのシステムにおいてSOAのニーズがあることの確固たる証明になります。

また、現時点においてインターネット人口全体の中で本格的に使用している人がまだ少ないため、システム上の理由でWebポータル的なシステムが利用されつつあります。

しかしながら利用者の頻度が向上し、より利便性を求めるようになった場合はやはりクライアント型SOAが最適な解になると考えています(詳しくは「第4回:クライアント型SOAによる官公庁電子申請システム」を参照ください)。

それでは、実際のBtoCシステムにおけるクライアント型SOAの事例と今後の展開について解説していきます。

吉政創成株式会社 代表取締役

IT業界のマーケティング分野で20年近い経験を持つマーケッター。株式会社トゥービーソフトジャパンをはじめとするベンチャー企業から大手企業まで幅広くマーケティング支援を行う。現在はマーケティングアウトソーシング会社である吉政創成株式会社の代表取締役を務めつつ、PHP技術者認定機構 理事長、Rails技術者認定試験運営委員会 委員長、ビジネスOSSコンソーシアム・ジャパン 理事長も兼任。

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