NTT ComとSOINN、クラウド上のAIでIoT関連ビッグデータを迅速に精製・分析する基盤を開発

2015年4月4日(土)

NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)とSOINN(以下、SOINN社)は3月31日、自律的に学習できる汎用型のAI「SOINN」を用いて、IoT(Internet of Things)の機器が収集する膨大なデータの中から、自律的にノイズ(不要な情報や異常値など)を取り除いたうえで、法則性や因果関係を発見する「CLARA with SOINN」(CLoud based AI for Recognition and Analysis)を開発しNTT Comクラウド上で活用する基盤を確立したと発表した。

本基盤を用いて、これまで正確な測位が困難だった、屋内における高精度な位置測位技術を実現した。屋内で利用中のスマートフォンからクラウド上のAI「SOINN」に送信される、接続中のWi-FiとBLE(Bluetooth Low Energy)の電波強度データを分析し、誤差を約1メートルの範囲に収める正確な現在地の測定に成功した。

ネットワークに接続された多数の機器(センサー)が収集した膨大なデータから、特定の兆候を読み取り、機器に対してその兆候に対応した調整を行うことで、高度に自動化されたサービスや事業を目指すIoTは、様々な業種で具体的な導入が進んでいる。例えば、工場における製作機械の詳細な稼働状況ログから、故障の兆候を読み取り事前に必要なメンテナンスを行うことで生産性や製品品質の向上につなげる、といった活用が考えられる。

ビッグデータを活用したIoT実現のためには、収集データのノイズの除去、兆候の検知をいかに高精度に、かつ高効率で(人手を省いて)実行できるかがポイントとなる。

AI「SOINN」は、データのノイズを自ら判別できるほか、専門家が事前に兆候が起きるルールを設定しなくても、自律的に兆候を発見し、かつその定義をアップデートする高度な自律学習が可能。NTT ComとSOINN社は、この特長を、機器から収集したIoTのビッグデータに適用できるクラウド基盤を開発した。

屋外での位置測定技術としては、GPSや準天頂衛星などによる技術が確立されているが、それらの電波が届かない屋内の場合、精度の高い測位ができないという課題がある。このような課題を、Wi-FiやBLEのデータと「CLARA with SOINN」(仮称)によって解決するのが「高精度屋内測位技術」だ。

また、分析を行うAIはクラウド上にあるため、利用者は特別なインフラや装置を必要とせず、スマートフォンのみで手軽に利用することができる。このため本技術は、店舗内にいる利用者の位置情報を活用するO2Oビジネスや、2020年に向けて増加が予想される観光者をナビゲーションするサービスなどへも応用することが可能。

屋内における測位は、Wi-Fi親機やBLE送信機から送信される電波強度に基づいて位置を割り出す。しかし、電波干渉や周囲の環境などにより電波は不安定になるため、通常数メートルから数十メートルの誤差が発生する。

本技術では、膨大かつノイズが混じった電波強度(電波の反射などで電波強度が一定ではなくゆらぎがある状態)の情報をクラウドに収集し、ノイズを自動的に除去すると同時に、電波強度と位置の関係性を自動的に学習して発見する。

屋内にいる利用者のスマートフォンは、現在地のWi-FiとBLEの電波強度をクラウド上にある「SOINN」に送信するだけで、学習モデルを基に予測した測位結果を受信することができる。この仕組みを開発したことで、測位の誤差を平均で1メートル程度と、従来の1/5に抑えることに成功した。

また一般に、スマートフォンのOSや搭載されているWi-Fi/BLEのチップなどの違い、さらに周囲の状況変化も精度を低くする要因となるが、「SOINN」はこれらの要因に対しても、自動で適応し、新たな学習モデルを生成することで精度の高さを維持することが可能。

今後は、多様なIoT端末から収集されたセンサーデータ、映像/画像データ、端末ログ等に対象範囲を広げて、AIを活用した技術開発を進め、IoTとクラウドの融合を図っていく。


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