Drupal Expo 2017 in Japan開催 Googleから経済産業省まで多彩なゲストがDrupalの応用を語る

2017年7月7日(金)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
オープンソースのCMSとして世界で利用が進むDrupalのカンファレンスが都内で開催。経済産業省の事例やオーストラリアの企業によるDrupalアドオンなど、多彩なトピックが紹介された。

2017年6月8日に都内にてオープンソースのCMSであるDrupalに関するイベント、「Drupal Expo 2017 in Japan」が開催された。Drupalを使ったサイト構築などを手がけるANNAI株式会社が主催したもので、カナダやオーストラリアのDrupalを得意とするコンサルティング会社や、Drupalを活用した開発者向けポータルを構築したGoogleのエンジニア、経済産業省の担当者などがそれぞれのDrupal応用事例を紹介した。

CMSではなくデータ管理システム

最初に登壇したのは主催者であるANNAI株式会社の代表取締役、紀野惠氏だ。紀野氏はDrupalを「単なるCMSとは思わないで欲しい」と語り、コンテンツ管理よりも「データ管理システムだ」と強調して、WordPressなどのCMSとの違いを訴えた。またDrupalを使う際のシステム構成についても様々な形態があると語り、フロントエンドとバックエンドを分離させる構成やExcelをフロントのアプリケーションとして使い、Excelにデータを入れるだけでWebのページが更新される構成を紹介した。Excelについては、「未だにExcelがメインのアプリケーションとなっている官公庁においては大きなニーズがある」とのことだ。

プレゼンテーションを行う紀野氏

プレゼンテーションを行う紀野氏

次に登壇したのは、カナダに本社を置きグローバルに展開するソリューション開発会社であるAppnovationのCEO、Arnold Leung氏だ。Leung氏は、Drupalを活用した事例として、ファイザー製薬の禁煙のためのスマートフォンアプリケーションやサムスン、シスコシステムズの事例を紹介し、Drupalに関して多くの経験を持っていることを紹介。

AppnovationのCEO、Arnold Leung氏

AppnovationのCEO、Arnold Leung氏

それらの事例で得た知見は「Drupal Playbook」という形でまとめられており、それを活用して顧客の問題を解決しているという。

Appnovationの知見の塊、Drupal Playbook

Appnovationの知見の塊、Drupal Playbook

ファイザー製薬の事例によれば、禁煙を行っている人の位置情報を元に行動を分析し、喫煙を再開する傾向などを機械学習によって導き出しているそうだ。

ファイザー製薬の事例

ファイザー製薬の事例

次に登壇したのは経済産業省 経済産業政策局 新規産業室の石井芳明氏だ。石井氏はベンチャー支援などを推進する業務に携わっており、ベンチャーが補助金などを申請する際の手続きを電子化するプロジェクトについて解説した。

経済産業省の石井氏

経済産業省の石井氏

ここでは「デジタルガバメント」の推進の一環として電子化を推進しているという。ここで言う「電子化」は単に紙の資料をデータにすることではなく、手続きを見直してデータの重複や二重入力を避けるような設計を行っているという。またDrupalを使ったサイトを構築するに際しては「ベンチャーを支援するサイトなのだから、ベンチャーの人に作ってもらいたかった」とサイトを構築したANNAI株式会社を評価するコメントも飛び出して、会場を賑わせた。

経済産業省が推進するベンチャー支援のプラットフォーム概要

経済産業省が推進するベンチャー支援のプラットフォーム概要

ただし石井氏によれば、このようなIT資産に対する予算の獲得にも細かな費用削減に対する試算が行われているそうで、官公庁の苦労の一面が垣間見られたプレゼンテーションであった。

次に登壇したのはGoogleが2016年に買収したAPI管理のソリューション、Apigeeの担当である関谷和愛氏だ。

プレゼンテーションを行うGoogleの関谷氏

プレゼンテーションを行うGoogleの関谷氏

関谷氏は以前にもCloud Foundryのイベントでのセッションを記事にしたことがあるが、今回は時間も少なくデモもなかったため、いまひとつAPI管理そしてAPIゲートウェイについての訴求が弱かったのが残念である。ただし開発者にAPI管理の普及を行うためには開発者ポータルが重要であり、そのコンテンツ管理システムの部分にDrupalを利用しているということだ。

関谷氏のデモを紹介した記事:富士通が語る「Cloud Foundryを選んだ決め手はエコシステムの拡がり」

Apigeeの開発者ポータルの概要

Apigeeの開発者ポータルの概要

次に登壇したのはNTTコミュニケーションズの田中寿一氏だ。田中氏はNTTコミュニケーションズが提供する「API First」を実現する開発モデルと、Apigeeを利用したAPIゲートウェイサービスを紹介。Googleが提供するサービスにカスタマイズを行って機能を拡張しているという。

NTTコミュニケーションズが提供するAPIゲートウェイサービス

NTTコミュニケーションズが提供するAPIゲートウェイサービス

今回の田中氏の発表の目玉は、APIを解説するWeb上のドキュメントをAPIの仕様から自動生成する部分を、DrupalとSwagger Specを使ってシステム化したと言う部分だ。これはAPIの仕様の変更に従って、マニュアルなどの公開されるWebコンテンツをSwagger SpecからDrupalに読み込み、自動的にWebページを生成するというものだ。

Drupal+Swagger Specの概要

Drupal+Swagger Specの概要

これによって、APIを新規に開発及び変更した場合にそれを解説するWebページを自動生成することで、コストと時間を圧倒的に短縮できるという。

API仕様からWebページを自動生成

API仕様からWebページを自動生成

そして最後に登壇したのは、Drupalを活用したソリューション開発会社であるオーストラリアのMorphtのCo-Founder、Murray Woodman氏とDigital ProducerのColin Watson氏だ。Morphtは、Drupalのコンポーネントをプログラミングなしでカスタマイズできるソリューションを紹介。これを使うことで、様々なテーマに従ってDrupalを管理画面からの操作だけでカスタマイズできるという。エンジンに当たる部分はオープンソースソフトウェアとしてGPLで公開し、テーマなどのデザインを販売すると説明した。

MorphtのWoodman氏(左)とWatson氏(右)

MorphtのWoodman氏(左)とWatson氏(右)

今回は、Drupalに関する事例やカスタマイズを行うアドオン、さらにDrupalを使ったAPI管理と幅広いトピックに渡ってセッションが行われた。日本語の情報が少ないと言われるDrupalだが、このようなイベントを通して理解が進むことを期待しよう。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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