コニカミノルタのワークプレイスハブの詳細が明らかに
2017年3月23日にベルリンで発表されたコニカミノルタの企業向けプラットフォームの詳細が明らかになった(こちらのイベントについては、コニカミノルタ、ベルリンで中小企業向けのプラットフォーム、Workplace Hubを発表を参照いただきたい)。イベント後、コニカミノルタ本社にてワークプレイスハブのプラットフォームの詳細、日本と欧米でのビジネス展開の違い、そして今後の展望などについてインタビューを行い、同社の情報機器事業 事業企画部ワークプレイスハブグループのグループリーダーである鈴木隆氏に話を伺った。
まずベルリンで発表されたワークプレイスハブのハードウェア、ソフトウェアについて教えてください。
ハードウェアは、HPEから調達したサーバーになります。またソフトウェアのプラットフォームは、CanonicalのUbuntuです。そこにフロントエンドのWebUIとバックエンドのサービス、データベースなどが載ったものになります。各サービスは、KVMベースの仮想化環境上にある仮想マシンでマイクロサービスとして実行されます。基本的には、Linuxのサーバーに3層構造のアプリケーションをマイクロサービスとして実装するというシンプルなアーキテクチャーです。
Ubuntuの上でNGINXやPostgreSQL、MongoDBなどの名前が出ていますが、ごく普通のLinuxサーバーという感じですね。
そうなります。今回、ベルリンで展示したMFP(複合機)に統合された製品も、単にMFPにLinuxサーバーを追加したということではありません。ラック型のものを見てもらえれば、サーバーは単に形であって実際には中のソフトウェアやサービスを含めて「ワークプレイスハブ」というソリューションになります。仮想マシンベースでコンテナではないのは特に意味はなく、今後、コンテナベースのアプリケーションも必要であれば対応していくという感じです。
今回の発表はあくまでもコンセプトとしての発表で、実際に製品が出てくる今年の秋にはもう少し詳しい詳細が明らかになるということですね。ビジネスとしての売り上げや出荷台数もその時に発表になると?
そうです。ただ製品ラインアップに関して言えば、一度に全部が出てくるわけではなく、段階的に製品を追加する形になります。パブリッククラウドとの連携も、AWSやAzureなど段階的に揃えていく予定です。
ベルリンで山名CEOが「IoTから出てくるビッグデータの分析はすべてをクラウドでやらずにエッジ側でもやるべきだ」という発言がありました。その際のエッジというのはワークプレイスハブになると思いますが、それはどういうソフトウェアで実行されるのですか?
それに関してはまだ詳細を詰めている段階です。なので、今の時点で「このソフトウェアを使います」というのは決まっていません。ただIoTからのデータを分析する機能は計画に入っていますので、実装することは確かです。製造業などでの使い方として、IoTのデータを処理するというのを想定していますので。
パートナーとしてHPEがハードウェア、CanonicalがOSというのはわかりましたが、マイクロソフトの役割は?
マイクロソフトのソリューションとの連携に関しては、Office 365やOutlookなどとの連携になります。Azureに関しては今後のユースケースをみて必要があれば、と言う感じです。ワークプレイスハブはエコシステムの構築を目指しているので、将来的にその部分はサードパーティのソリューションをマーケットプレイスからダウンロードして使っていただくというようになると思います。
エコシステムを構築するためにはプラットフォーム側がいろいろと準備をしなければいけないと思いますが、SDKやドキュメンテーションも含めて提供するという考えですか?
はい。そうなります。特にこれは日本だけのソリューションではなくてグローバルに展開するものですので、各国語に対応する予定です。
顧客が持っている既存のIT資産との連携は? 例えば、社内のネットワークへのシングルサインオンなども必要になってくると思いますが。
シングルサインオンに関して言えばLDAPのモジュールを搭載する予定ですので、それが例えばActive Directoryと連携すると言う形になると思います。他にも、パブリッククラウドとの連携やコニカミノルタのデータセンターとの連携というものが想定されています。コニカミノルタのデータセンターとの連携は、マネージドITサービスとしてこれを使っていただく際に必要になります。
中小規模の企業に対して調査したところ、規模が小さいオフィス、人数で言えば20名から50名程度の規模では現場にITの専任者がいないということがあり得るんですね。そういうオフィスにワークプレイスハブを設置する場合は、もう運用管理も任せたいというニーズがあるので、そういう場合にはコニカミノルタのデータセンターでデータをお預かりする機能やヘルプディスクの機能を載せる方向で検討しています。お客様が現在持っているIT資産に関して言えば、それを無理やりリプレースするのではなく上手に連携する方向で考えています。運用管理については、マネージドITサービスとしてコニカミノルタが行うという場合と管理者が組織に存在する場合、これはより規模の大きい企業を想定していますが、Adminコンソールという形でお客様の側でも運用管理するという場合の2つのパターンを想定しています。
オフィスにはすでにプリンターやMFPが入っていると思いますが、それらの周辺機器もワークプレイスハブに統合できるのですか?
そうなることを目指しています。我々はすでに200万社という既存のお客様がいますので、まずはそこを足がかりにして導入を進めていく、というやりかたですね。いきなりお客様の持っている資産を置き換えるということではなく、徐々に置き換えていければと考えています。
セキュリティに関してはSOPHOSのソリューションによって実現するという形ですか?
そうなります。もちろん、お客様がすでにセキュリティの製品を持っている場合は、そちらを使うということになります。その辺はケースバイケースで、柔軟に対応できる予定です。
Braintribeの果たす機能は?
これはドイツの会社のソリューションなんですが、ERPや他のアプリケーションとAPIで連携するためのプラットフォームとして採用したもので、これを入れることでAPIを介してさまざまなアプリケーションを利用できるようになります。API管理の機能もあるので、その機能を利用することで運用管理できるようになります。
ワークプレイスハブはハードウェアとソフトウェアそれにサービスを合わせて提供となりますが、価格の考え方は?
基本的な部分の価格に、選択していただくオプションを追加してサブスクリプションモデルでの提供となる予定です。販売形態は欧米では直販での提供になると思いますが、日本ではパートナーベースの販売になる可能性もあります。欧米ではコニカミノルタがITサービスの会社をいくつか買収していますので、そのリソースを用いることになります。特にチェコではIT関連のリソースが豊富ですので、そういうところではコニカミノルタが直接お客様にサービスを提供する形になります。またアメリカでもマネージドITサービスをコニカミノルタが提供していますので、同じように提供することになります。ただ正直なところ、日本のコニカミノルタではIT関連のリソースがそれほど厚くないので、その部分はパートナーと連携するという可能性もあります。
コニカミノルタにおけるワークプレイスハブのチームの規模は?
日本に30名程度のグループがありまして、他にはロンドンのチームが10人ほどでアーキテクチャーを作っています。ロンドンと日本がお互いのカウンターパートとして機能しています。あとソフトウェアの開発は、チェコに50名くらいエンジニアがいますね。他にはドイツにビジネス開発のチームがいて、総勢で200名程度の組織になります。そういう意味で非常にグローバルなチームですね。
元々の発想は山名CEOとロンドンのデニス・カリーさんが話し合った上でできあがったコンセプトと言うことですが、それは正しいですか?
はい、正しいです。それに加えて、ビジネスサイドのコンセプトが関わってきます。具体的に言えば、企業のIT予算におけるMFP関連の割合は数パーセントでしかないんですね。その小さなパイを取り合うのではなくて、もっと大きな予算がつくオフィスのIT投資にターゲットを移して、より大きなビジネスを狙いにいこう! というのが狙いです。ですから、ワークプレイスハブは単なるMFPよりも大きな価値をお客様に提供することが必要だと考えています。
実際の機能や価格の情報は、第一弾の製品となるワークプレイスハブが出荷される2017年秋に明らかになるということだ。国内ではMFPメーカーとして認識されているコニカミノルタが、OSSやコモディティサーバーを活用したITベンダーとして認知されるかどうかは、このワークプレイスハブの成功にかかっているように思われる。グローバルで開発が進み、実証実験もすでに欧米、日本国内でも進んでいるという。秋の製品発表に期待したい。
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