コラボレーションのアトラシアン、モットーは「Don’t #@!% the customer(お客様は神様です)」
JIRAやConfluenceなどのソフトウェアデベロッパー向けのコラボレーションソフトウェアを開発販売する、オーストラリアはシドニーに本社を構えるアトラシアン(Atlassian)が2016年1月26日に都内で記者説明会を開いた。
昨年12月にアメリカで株式公開を果たし日本でも本格的に活動を行うことに関する発表を想定して参加してみたものの、今回は新製品の発表はなく企業としての理念や製品の概略、日本法人であるアトラシアン株式会社の新オフィスの紹介などが主な内容であった。
来日したプレジデントのジェイ・サイモンズ(Jay Simons)氏と、アトラシアン株式会社の代表取締役社長スチュワート・ハリントン(Stuart Harrington)氏に記者発表会後、個別インタビューを行った。
アトラシアンの一番の競争相手はExcel
−アトラシアンのソフトウェアはJIRA、ConfluenceさらにHipChat、BitBucketなどがありますが、一番の競合となるのは何ですか?
サイモンズ:実は我々のソフトウェアの最大の競合はExcelです。Excelはご存知のように殆どの業種で考えられる限り様々な使い方がされているソフトウェアですが、それが良い面も悪い面もあります。情報を共有するという意味ではメールも競合となります。例えばコラボレーションを行う際にメールにExcelファイルを添付して~というのはよく見かける状況ですが、それがベストのソリューションではないのはわかりますよね?
ハリントン:他にはRedmineも競合になりますね。SlackもHipChatの競合ですし、GitHubもBitBucketの競合です。
サイモンズ:でも我々は複数の人間がコラボレーションを行う時に必要となるソフトウェアを数多く持っています。個々の製品ではそれぞれ競合となる製品がありますが、それらが全て連携して動くことができるのがアトラシアンの強みだと思います。
−先ほどの記者発表の際に日本の法人にはセールス担当が居ないという話がありました。それはどうしてなんですか?
サイモンズ:実は日本だけではなく世界中全てのオフィスでアトラシアンにはセールスマンが居ないのです。販売はWebからの直販とパートナーからの販売になります。我々のソフトウェアは価格が公表されていますし、そこからのディスカウントもありません。他のエンタ−プライズ向けのソリューションとは桁が2つぐらい違うほど安く価格を設定しています。ですのでアトラシアンのソフトウェアが売れるきっかけも企業の中のエンジニアが自主的に使い始めて口コミで拡がっていくボトムアップ的な形がほとんどなのです。プレゼンテーションで紹介した電気自動車のTeslaや、イギリスの新聞社Daily Telegraphでの事例についてもボトムアップ的に少しづつ拡がっていって大きなユーザー数になったということです。
ハリントン:ですので、我々には企業のお客様に対してギンザでの接待もありませんし、お付き合いのゴルフもありません(笑)。企業の購買部に行って打ち合わせをすると必ず「どれだけディスカウントしてくれるのですか?」という話になります。でも私たちは一切値引きはしないんです。なので最初は驚かれます。
−購買部の仕事のひとつは如何に値切るか?ですものね(笑)
ハリントン:そうなんです(笑)。でも何度も何度も「ディスカウントはありません」と繰り返えせば最後にはわかってくれます。つまりアトラシアンのソフトウェアには最初からディスカウントが組み込まれていると言っていいぐらいに安いということなんです。
−先ほどのデモではJIRAとConfluenceは日本語化が終わっているように見受けました。ところがHipChatは英語のUIのままです。日本語化はどうなっているんですか?
ハリントン:実際には英語から日本語化に関しては日本のオフィスのサポートエンジニアがレビューを行っているのです。実際の翻訳は外部のベンダーにお願いしたりしていますが。サポートエンジニアにとってみるとアクセスの多いページや機能、サポートの問い合わせの多い部分を優先的に日本語化しておけば自分の仕事がよりラクになるので、一石二鳥なのです。
−マイクロソフトを始め最近の欧米のソフトウェア企業は本社のエンジニアリング部門で一括してローカライズを行うことが多いのにちょっと変わってますね?Lean StartupというかLean Translationとでも言うか(笑)。
ハリントン:我々は如何にコストを掛けずに仕事を進めるかを常に意識していますからね(笑)。なので売上が3倍になっても社員が3倍になることはありません。なるべくコストを掛けずに生産性を上げることを目指しています。
−ところで頂いたプレゼンテーション資料の中にカルチャーというページがありました。そこには「Open Company, no bullshit」や「Build with heart & balance」などのモットーが書かれていますが、「Don't #@!% with customer」というのがありました。これはなんですか?
サイモンズ:あぁ、それは「Don't fuck with customer」の動詞の部分を伏字にしたんです(笑)。実は以前はその文は本社のエントランスに大きく書かれていたんです。つまりお客様を大切にしよう、お客様にヒドイことはしてはいけないということを表しています。でもある日、社員がその単語の意味を理解できるぐらいに大きな子供をオフィスに連れて来まして。それで「あぁ、これは良くない」ということでその部分だけを伏字にしました(笑)。その伏字にはそういう経緯が有ったんです。
ハリントン:日本語で言うとすれば「お客様は神様です」になりますね(笑)。
−あぁ、なるほど。よくわかりました。お客様を大切にしようとする気持ちは伝わってきます。本日はありがとうございました。
日本での展開について同じくチームのコラボレーションを支援するサイボウズに関してはサイモンズ氏は全く知らなかったことを考えるとやはりソフトウェア開発での利用が現時点では多いのだろう。だがExcelの例えの際に「JIRAもConfluenceもExcel同じぐらいに様々な使い方ができる。例えばセールス部門では競合分析のための情報共有に使っているケースもある」とサイモンズ氏は語り、使い方次第では様々な用途が考えられることを解説した。価格のやすさも相まって日本でもアトラシアンのソリューションが拡がっていくことに期待しよう。
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どうして営業マンが一人もいないんでしょうか?
イチオシのソフトウェアはなんでしょうか?
アトラシアンのソリューションを使ってお客様をどう変えていきたいのでしょうか?
一番気に入っているアトラシアンの製品はなんでしょうか?
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