大規模化していくデータ・ウエアハウス
はじめに~大規模化するDWH
今回から4回にわたり、「大規模化するDWHに挑む」と題して、年約20%の勢いで成長しているデータ・ウエアハウス(以下、DWH)分野の「光と影」を執筆します。少しでも読者の皆さまの役に立てれば幸いです。
4回分のアジェンダは、以下の通りです。
- 第1回 - 大規模化していくDWH
- 第2回 - DWHの大規模化における解決策
- 第3回 - 大規模化するDWHのチューニング
- 第4回 - DWHのクラウド化サービスと事例
第1回では、大規模化していくDWHの背景と、各企業が抱える課題について考察します。
第2回では、各企業が抱える課題に対して、各種の解決策(ソリューション)をセグメントし、それぞれの特長を考察します。
第3回では、DWH向けの個々の解決策について、SEの視点に立ったチューニング・ポイントを解説します。
第4回では、パブリック・クラウド事業者がネットワーク・サービスとして提供するDWHサービスを、事例を含めて紹介します。
DWHが大規模化する背景
それではまず、DWHが大規模化していく背景を考察します。
DWHの規模は、3つの軸で決まり、扱うデータ量は、これらの積として表現できます(図1)。図では、3つの軸のうち、どれかが2倍になると、体積も2倍になります。3つの軸のうちの2つの軸が同時に2倍になれば、体積は4倍に、3つとも2倍になれば8倍になります。DWHのデータ量は、施策によってすぐに数倍に増えてしまうものであることが理解できます。
さまざまな統計がありますが、現在、世界全体で年率約65%、日本でも約20%(ともにCAGR=年平均成長率)の勢いで年々データが増え続けています。世界全体のデータ量は、2007年時点で約281EB(エクサ・バイト)であり、2011年には約1.8ZB(ゼタ・バイト)という途方もない数字になると言われています。
DWHで扱うデータ量が増大している背景には、現在のビジネス環境が大きく変化していることがベースにあります。
リーマン・ショック(Lehman Shock)以降、ビジネス環境はますます厳しくなり、さまざまなビジネス市場でシュリンク(縮小)と寡占化が進んでいます。各企業は、今まで以上に有効なビジネス戦略を立案して実践しなくては生き残れなくなったのです。
現在の企業が実践すべき戦略は、以下の4つにセグメンテーションできます。
- 経営の高度化
- グローバル化
- 企業統合、提携の増加
- 法規制などによる対応
次ページ以降では、ビジネス環境の変化を受けた、これらの戦略について解説します。