OpenStackの最新安定版Junoでデータプロセッシングが正式コンポーネントに採用
10月27日に開催された日本OpenStackユーザ会 第19回勉強会でNECの吉山氏が登壇し、OpenStackの最新安定版であるJunoのアップデートの内容について解説した(写真はオープンソースカンファレンス2014 Tokyo/Fallでの講演時のもの)。
「Juno」はOpenStackプロジェクトの10番目の安定版となる。当初3ヶ月に1回のリリースだったが今は半年に1回に変更されている。リリース名はアルファベット順になっており、OpenStack最大のイベントであるOpenStack Summitの開催地の近くの地名になることが多いそうだ。
Junoアップデートでは、340個以上の修正が実施された(30個の育成プロジェクト含む)。最大の変更点は、データプロセッシング機能を提供する「Sahara」が正式コンポーネントとして迎えられた点にある。これで正式コンポーネントは10個から11個に増えている。次の図はJunoリリースにおける開発貢献度(ここではレビュー数)をグラフ化したものだ。HP、Red Hat、Mirantisの順となっているが、正式コンポーネントや育成コンポーネント別に見ていくと順位に変動があり、各社の色が出ていて面白い。
今回新たに追加されたSaharaは、ビッグデータ処理などHadoop as a Serviceとも言える機能を担うことになる(厳密にはHadoopだけではなくApache Sparkなど別の処理系も含む)。
なお、現在育成プロジェクトであるベアメタル機能のIronicだが、次回のKiloリリースで正式コンポーネントに追加されることが発表された。また、新たに3つの育成コンポーネントも進められている。
ここからは正式コンポーネントの開発ポイントについて掻い摘んで紹介する。各コンポーネントの相関関係は以下の図が参考になるだろう。
Dashboard機能「Horizon」:Saharaのサポートが追加され、メニューに「データ処理」というタブが増えている。またNeutronでは分散仮想ルーター機能が追加された。
Object Storage機能「Swift」:すでに安定している。今後はErasure Codingに対応していく予定。標準ではミラーリングをしている(オリジナル1ヶ所、レプリケーション2ヶ所)ため、総容量の3分の1しか使えない。RAIDのデータ冗長化のように、保存できるデータ量を大きくするための実装が進められている。
Compute機能「Nova」: 育成プロジェクトのIronic(ベアメタル)のためのドライバが追加された(もともとNova内に物理サーバーを扱う機能があったが、それがIronicとして分離された経緯がある)。また、Conductorの機能が増加しVMの作成などがSchedulerからConductorが扱うように変更されている。対応ハイパーバイザーでは、VMware ESXが廃止されvCenterに変更されている。
Image Service機能「Glance」: VMイメージに付与できるメタデータのカタログが定義された。柔軟性を確保しつつ独自ルールも定義できるようになった。
Networking機能「Neutron」: Open vSwitchで分散仮想ルーターが実装された、従来のゲートウェイ経由だったものをVMホスト間の通信を直通できることに。L3エージェントの冗長化構成が追加された。
Block Storage機能「Cinder」: 基本機能は大きく追加されることはなさそうだが、複数ボリュームの同時スナップショット、バックアップなどに対応。ストレージバックエンドのレプリケーションに対応したことなどが注目点である。
Identity機能「Keystone」:Keystone間での連携ができるようになった。
Telemetry機能「Celiometer」:複数の計測値に基づいた新しいしきい値の計測が可能に、負荷が高い機能毎に別のデータベースを選択しボトルネックを排除できるように。
Orchestration機能「Heat」: AWSのCancelUpdateStackと同等の機能が追加された。デプロイ失敗した状態からリトライできるようになる。
Database Service機能「Trove」: Neutronに対応、MongoDBのクラスタリングやMySQLのDBレプリケーションに対応。PostgressSQLのドライバが新たに対応されたのは日本ユーザーには朗報かもしれない。
Data Processing機能「Sahara」: 旧名サバンナからサハラへ。HadoopだけではなくApache Sparkなどに対応しプラットフォームが拡張されている。Apache Hadoop, Apache Spark, Cloudera Distribution, Hortonworks Platformなど。Intel Hadoopはプロジェクト終了とに伴い廃止されている。
吉山氏のスライドは以下URLで公開されている。
http://www.slideshare.net/yosshy/openstack-juno
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- Icehouseで追加されたコンポーネント群とは
- RHEL-OSP6でのDVR環境構築手順
- Nova最新動向:スケジューラ、セル、ライブマイグレーションの改善は継続、他のプロジェクトとの連携が課題に
- OpenStackの自動構築ツール、Packstackのインストール
- OpenStack Junoのネットワークコンポーネントの課題と分散仮想ルータ
- OpenStack、Docker、Hadoop、SDN、.NET…、2014年のOSS動向をまとめて振り返る
- Ironic最新動向:待望のマルチテナント対応が視野に。ストレージや運用自動化も進展
- SUSE、プライベートクラウドソリューション「SUSE OpenStack Cloud 5」を発表
- 「OpenStack Summit May 2015 Vancouver」レポート #4(デザインサミットセッション)
- OpenStackの品質を保つ仕組みとは?:QA/Infraプロジェクトの最新動向