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ETロボコン2014チャンピオンシップ大会レポート(後編)

2015年1月14日(水)
鈴木 尚志

前回では、デベロッパー部門の2つの競技について、その熱闘の様子をお伝えしてきた。今回は3つ目の競技となるアーキテクト部門を取り上げながら、ETロボコンの持つもうひとつの面を紹介していこう。

夢は実現できた?:アーキテクト部門

このアーキテクト部門は、近年、「組込みソフトウェア技術者」の守備範囲がデバイスの設計、実装の枠を超えてきているという事実を見据え、5年後、15年後に活躍できる技術者、すなわち製品・サービスの企画もできる人材の育成を目的としたものである。いわば自由課題の部門であり、自由な発想と実現力を武器にした「企画力」が問われる。

アーキテクト部門の様子

図1:アーキテクト部門の様子

出場の全10チームそれぞれが「何を作りたいのか?」「どうしてそれを作りたかったのか?」「そしてそれをどのように作ったのか?」を主張し、それぞれの良さを競い合う。この競技の評価は事前の審査評価が50%、残りは当日会場の特別・一般審査委員によるパフォーマンスの評価であるため、当日の競技で「うけること=訴求すること」も重要な要素だ。

今回も「人とロボットとの共生」や「ロボットによる観光案内」といった、ロボットを中心とした市場や問題意識からテーマを設定したチームがいるかと思えば、「今まで見た事のないパフォーマンス」や「新しさ」といった「すごいと思わせる」ことをテーマとして設定したチームもいて、自由課題らしく内容もバリエーションに富んでいた。また、会場の観客や特別審査委員からも、多くの笑い声や感嘆の声があがり、デベロッパー部門とはまた異なる可能性を感じさせてくれた。

大会を見守る特別審査委員

図2:大会を見守る特別審査委員

今回は、ショッピングモールでお買い物の手伝いをしてくれる「荷物お届けロボットShelpa」を企画した、南関東地区、富士ゼロックス(株)所属の「mirai craft」が、二位を僅差で抑え優勝した。分かりやすい企画の説得力「理想」と、ロボットと、カードリーダーやPOSレジとのセキュリティを考慮した連携などの適切な技術の選択「現実」という両面から会場をうならせた事が勝因だ。

mirai craftのパフォーマンス

図3:mirai craftのパフォーマンス

今回から表彰が観点別に:表彰式

全競技終了後の表彰式では、上記のチームに加え、事前に審査されたアドバンストクラスのモデルに対する観点別の優秀チームが表彰された。総合的な観点でベストに値するモデル「ベスト・オブ・アドバンストクラス賞」には、走行戦略や要素技術に優れた東海地区、(株)アドヴィックス所属の「HELIOS」と、ソフトウェアの部品化、再利用設計に優れた南関東地区、富士ゼロックス(株)所属の「ぶっこみライダーズ」という甲乙つけがたい2チームが選ばれた。

会場の様子(1日目)

図4:会場の様子(1日目)

また、今年の難所の目玉である「仕様未確定エリア」に対する優れた攻略方法と、それを実現するための設計内容を提示したモデル「ベスト・オブ・ソリューション賞」を東京地区、(株)日立産業制御ソリューションズ所属の「追跡線隊HiICSレッド」が、新規開発対象に対応するためのアプローチに優れていたモデル「ベスト・オブ・アプローチ賞」を北関東地区、個人参加の「あんたま」がそれぞれ受賞した。

その他、高信頼性ソフトウェアの設計を賞するIPA賞は、北海道地区、リコーITソリューションズ(株)ES事業部所属の「Champagne Fight」に、実装を強く意識したモデルに与えられるToppers賞は北海道地区個人参加の「もっと、とってきなさい」に、そして、優秀な学生チームに与えられる情報処理学会・若手奨励賞が沖縄地区、国際電子ビジネス専門学校 組込みシステム科所属の「壷川モーターズ」の各チームに贈られた。

表彰式の後は懇親会も開催された。生々しい競技の興奮から醒めやらぬ競技者たちは、コップを片手に、それぞれに大声でうれしさや悔しさを語り合う。これも組み込み技術者の若い苗木が成長するために必要な栄養なのだ。もちろん未成年のためにソフトドリンクもたっぷり準備してあったのはいうまでもない。

株式会社コギトマキナ代表取締役社長 / システムズアーキテクト

1991年に日本アイビーエム大和研究所入社、社内外の多種多様な組み込みシステムの製品開発に従事後、組込みシステム開発のエバンジェリストとして活動。「ストーリーのあるモノづくり」を旗頭に2012年に独立。他、ETロボコン本部審査委員、IPA/SECソフトウェア高信頼化推進委員会、鶴岡高専特命教授など兼任し、組込み開発業界のスキマ家具屋さんとなっている最近。海が好き。

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