オープンソース化だけじゃない、開発者のスタイルもマルチプラットフォームになる次世代の.NETとVisual Studio

2015年1月13日(火)
高橋 正和

日本マイクロソフト株式会社は12月18日、ソリューションパートナーやアプリケーション開発者などを対象に「Visual Studio/.NET製品戦略説明会」を開催した。11月に米国で開催された「Connect();」で発表された内容を中心に、一新される次世代開発プラットフォームを紹介する場だ。

.NET Coreのオープンソース化や、オープンソースの新コンパイラ「Roslyn」を採用した次期開発プラットフォーム「Visual Studio 2015」などについて、その概要や位置づけが解説された。また、実際にデモも披露された。

説明を聞いて改めて感じたのが、Microsoftのビジネスモデルのシフトだ。すでにOfficeやWindowsで、製品からサブスクリプションへのシフトが見られる。同様に開発プラットフォームにおいても、オープンソース化や無償化、マルチプラットフォーム化を進めて.NETプラットフォームのエコシステムの拡大を狙う。そして、それを束ねるMicrosoft Azureや、Visual Studio上位バージョン、MSDNライセンスなどにビジネスの重点をシフトしていくように受け取れた。

同時に、Visual Studioという機能が充実している反面、自己完結的な開発プラットフォームだけでなく、新しい.NET CoreやRoslyn、ASP.NET 5といった、クロスプラットフォームによる開かれた開発スタイルへの拡大が感じられた。

以下、製品戦略説明会の模様をレポートする。

多様なデバイスやサービスをAzureとVisual Studioで束ねる

「すべてを束ねる製品を提供する唯一の会社であるという自負を持っている」。開会の挨拶を兼ねて、Microsoftの一連の施策についてその背景を、日本マイクロソフト株式会社 デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部 マーケティング部 部長の米野宏明氏が説明した。

背景として語られたのが、これまでPCだけだったプラットフォームの、スマートフォンやタブレット、IoT(Internet of Things)にまつわる各種機器への拡大だ。

米野氏は「特定のプラットフォームに依存するのはリスクが高い。そこで、クライアントですべて処理するのではなく、さまざまなデバイスやサービスをクラウドで束ねることになる」と説明。そして、そのクラウドのプラットフォームとしてAzureを、さまざまなクライアントからクラウドまで統合的に開発する環境としてVisual Studioを、それぞれ位置づけた。

これが、サティア・ナディラCEOが掲げる「モバイルファースト、クラウドファースト」だ。小型デバイスでWindowsを無償化してデバイス増加を狙うとともに、ユーザーを増やすために積極的にほかのプラットフォームにも対応している。「CEO交代でMicrosoftが大きく変わったと感じるのが、こうした、ビジネスの収益性をどこに求め、開発者にどこに来てもらうかの変化だ」と米野氏は語った。

日本マイクロソフト株式会社 デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部 マーケティング部 部長 米野宏明氏

図1:日本マイクロソフト株式会社 デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部 マーケティング部 部長 米野宏明氏

Visual Studioでクロスプラットフォームなモバイル開発

「PCとWindowsだけという世界は捨てる。すべてのアプリケーション、すべての開発者を対象にする」。次世代の.NETとVisual Studioによる開発プラットフォームについて、日本マイクロソフト株式会社 デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部 エバンジェリスト 井上章氏がデモをまじえて解説した。

井上氏はまず、次期Visual Studioである「Visual Studio 2015」プレビュー版(Visual Studio 2015 Preview)を紹介した。すでにMicrosoft AzureにはVisual Studio 2015 Previewの入った仮想マシンイメージが用意され、MSDNサブスクリプションライセンスで利用できるという。氏は実際にAzureにアクセスして、「Visual Studio 2015 Ultimate Offline preview」版を起動してみせた。

氏が最初に強調したのが、初回起動時に追加ソフトをインストールする「Secondary Installer」だ。ここでは、Android SDKやAndroidエミュレーター、JDK、Node.js、git、はてはGoogle Chromeまでインストールされる。井上氏は「これらのソフトを見ても、Windowsのアプリケーション開発だけではないことがわかる」と述べた。

Visual Studio 2015で大きく変わったところとして井上氏が挙げたのが、クロスプラットフォームなモバイルアプリケーション開発だ。共有ライブラリから、XamarinによるAndroidとiOSのアプリ開発、Apache Cordova(PhoneGapのオープンソース版)によるHTML技術を使ったアプリ開発まで対応する。

井上氏は実際に、Visual Studioのプロジェクト作成からAndroid用のテンプレートを見せ、さらにWebアプリからCordovaに移植されたゲーム「宇宙侵略者」を実行してみせた。このデモには、Google ChromeベースのAndroidエミュレーター「Ripple」が使われた。

日本マイクロソフト株式会社 デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部 エバンジェリスト 井上章氏

図2:日本マイクロソフト株式会社 デベロッパーエクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部 エバンジェリスト 井上章氏

Microsoft AzureでVisual Studio 2015プレビュー版入りイメージを試せる

図3:Microsoft AzureでVisual Studio 2015プレビュー版入りイメージを試せる

新しいプロジェクトの作成で、テンプレートを「android」で検索したところ。CordovaアプリからWearアプリまである

図4:新しいプロジェクトの作成で、テンプレートを「android」で検索したところ。CordovaアプリからWearアプリまである

Cordovaアプリ。HTMLやCSSで作られ、一見Webアプリに見える

図5:Cordovaアプリ。HTMLやCSSで作られ、一見Webアプリに見える

Cordovaで作られた「宇宙侵略者」を、Google Chrome上のエミュレーターRippleで実行

図6:Cordovaで作られた「宇宙侵略者」を、Google Chrome上のエミュレーターRippleで実行

フリーランスのライター&編集者。IT系の書籍編集、雑誌編集、Web媒体記者などを経てフリーに。現在、「クラウドWatch」などのWeb媒体や雑誌などに幅広く執筆している。なお、同姓同名の方も多いのでご注意。

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