データセンター管理を簡素化するPAN System
プロセッシング・エリア・ネットワークによるHWリソースの抽象化管理
現状のデータセンター運用管理の課題の1つとして、サーバー/ストレージ/ネットワーク統合や運用の簡素化が上げられます。ここ数年、Hypervisor型の仮想化製品を利用したIAサーバーの統合化が進んでいますが、一方でDBや基幹システムなど仮想化統合に向かないシステムも依然として存在します。
今回はデータセンターインフラの管理、運用を簡素化するDell PAN Systemのアーキテクチャを解説します。
従来のサーバーおよびストレージ統合については次の3つを組み合わせて、インフラの統合化や管理の集中化を行う考え方が主流でした。
・仮想サーバー(Hypervisor)によるサーバー(CPU/メモリリソース)の統合化
・SANストレージによるHDD(データ)の統合化
・物理サーバーをスケールアウトさせるGrid化
データを統合化するSANの世界では、サーバーに搭載されているNIC(MAC)やHBA(WWN)のアドレスを利用して、ネットワークやストレージの排他制御を実装しています。この方式では各物理サーバーやOSが、MACやWWNと密接にかかわりあっているため、例えばサーバーを入れ替えたり、物理サーバー上のOSを別のサーバーに移動させたりするような構成変更を行う場合、大幅なシステム停止やテストなどが発生していました。
Hypervisor利用時においても、物理サーバーの再配置や増強を行う場合は、再搭載やケーブル類の結線変更など物理的な変更が発生するためシステム停止が余儀なくされていました。
プロセッシング・エリア・ネットワークは、「PAN Manager」ソフトウエアを利用して、サーバー(CPU、メモリ)やネットワーク(NIC)、ディスクなどのHWコンポーネントを抽象化して管理するアーキテクチャです。つまり物理的なCPU、メモリ、NIC、ストレージIOなどのリソースと、MAC/WWMといった一意の情報を切り離して管理することにより、システム要件の変更に応じて柔軟にHWリソースを再定義化することができます。
PAN Systemのコンポーネント構成
PAN Systemは次の3つのコンポーネントで構成されます。これによりHWコンポーネントの抽象化、仮想化を実現します。
(1)「cNODE」:PANコントローラ
冗長化された2台のPowerEdge2950Ⅲサーバーで構成されます。このcNODE上でPAN専用OSが稼働し、PAN System全体をコントロールします。またcNODEには外部接続用のNICとHBAが搭載されており、外部ネットワークや外部SANストレージの接続はすべてcNODEを経由して行われます。
(2)「pNODE」:プロセッシングノード
1台のPowerEdge M1000eブレード筐体と最小4台、最大16台のPowerEdgeM610ブレードサーバーで構成されます。pNODEは内蔵ディスクを持たず、外部とのネットワーク/ストレージアクセスインターフェースも保持しません。すべてのIOはcNODEを介して行われます。各pNODEはMACやHBA(WWN)を持たない状態で管理され、OSは外部のSANストレージからcNODEを経由したSANBootとして起動します。
(3)「PAN Fabric」:ネットワークスイッチ
cNODEとpNODE間をつなぐ内部IO通信用のネットワークスイッチです。ブレード用IOモジュールである冗長化された2台のPowerConnect 6220で構成されます。