IT資産を最適化するデルの新しいマネジメント環境

2009年8月20日(木)
松原 裕典

ITインフラのシンプル化と標準化

 企業全体のシステム資源の最適化、必要になった場合の迅速なシステム資源の手当て、データセンターの設置スペースや消費電力の削減……。Think ITの連載で、こうした仮想化のメリットについては何度か触れられています。仮想化ソフトを利用する企業も急速に増えています。

 しかし忘れてはならない“落とし穴”も存在します。キャパシティ計画を厳密にしなくても良いところから来る、無駄なシステム資源の保有がその最大のものでしょう。仮想化によって、一時的にサーバーやストレージの台数を減らせたとしても、管理が甘いとすぐにサーバーの台数は増え始めます。

 最悪の場合、仮想化でシステム資源を最適にしたはずなのに、サーバーやストレージの台数はかえって増えてしまったという事態になりかねません。仮想化は、システム資源を有効に使うためのツールの一つですが、それを導入しさえすれば、すべてが解決するわけではないのです。

 そこで必要なのが、システム資源の適切な管理です。米国に本社を置くデルはサーバーやPCのメーカーですが、自ら大量のシステム資源を使っているユーザー企業でもあります。その台数はクライアント機がデスクトップやノートを合わせて11万5000台、サーバー機は2万5000台、合計すると14万台に及びます。これだけのクライアントPCとサーバーにOSとアプリケーションをインストールし、その更新、追跡、レポーティングを実行するのは、デルのITインフラストラクチャチームにとって大きな負担でした。

ではデルでは、どのようにシステム資源を管理しているのでしょうか?今回は、その取り組みの実際を解説します。

 結論を先に言えば、デルではマイクロソフト社の「System Center Configuration Manager 2007(以降SCCM2007)」を導入しています。SCCM2007は、OSインストールの合理化と自動化、資産レポーティングのスピードアップ、アプリケーション使用状況のリアルタイム監視を通じてITチームの負荷を軽減し、コスト削減を実現します。

 デルでは顧客企業のITインフラストラクチャのシンプル化と標準化を推進するためにさまざまなソリューションを提供していますが、このことはデル自身にとっても、スムーズな運用を行う上で非常に重要な課題でした。

 世界各地で働く社員、14万台を上回るクライアントPC、サーバーを抱える状況において、ソフトウエアとハードウエアの構成を標準化して管理することは非常に重要です。

ハードウエアとソフトウエアの構成、そしてプロセスが標準化されていれば、IT管理者がメンテナンスとアップデートに費やす時間は確実に短縮できます。

 デルのある管理者の話では、以前は担当のシステム管理チームだけでも20時間/月に達していた資産レポートが、SCCM 2007のレポーティング機能が自動的に実行してくれるようになってからは8時間に短縮された、という報告もあります。

 目指しているのは、世界各地のデルの社員ができるかぎり同じOSの同じバージョンをインストールし、同じセキリュティパッチと同じアプリケーションを使うようにすることです。カスタマイズや特殊なケースに費やす時間が少なくなれば、その分だけユーザーのヘルプや新しいプロジェクトに時間を割くことができます。

 また、標準化は高レベルのセキリュティを確保するうえでも欠かせません。システムの導入後は、セキリュティの更新が72時間以内に世界中のシステムの97%に適用できるようになりました。このスピードがユーザーの安全を守り、同時に生産性を高める効果をもたらすのです。

IT管理者に負荷をかけないために

 デルのITチームでは長年、クライアントとサーバーの評価、導入、更新にSCCM2007の前の製品である「Systems Management Server 2003(以降SMS2003)」を使っていました。

 SMS 2003に用意されている設定機能やパッチ適用の機能でも特に問題はありませんでしたが、資産管理や資産レポートの作成、OS導入、監査項目の設定について、より効率的に実施できる環境が必要でした。

 ユーザーのコンピューターに実際に入っているファイルに基づいて、適切なアプリケーションとそのバージョンを判別するのは、手間と時間がかかります。例えばwinword.exeがハードディスクに入っているからといって、どのバージョンのMicrosoft Officeがインストールされるかは分からないからです。

 IT管理者はこれまで、個々の方針にしたがってどのソフトウエアがどれだけインストールされているかを確かめ、レポートを作成していましたが、これではレポートの作成に多くの時間を費やしてしまいます。

 また、新しいOSやそのアップデート、パッチの導入プロセスについても改善が望まれていました。標準化された1つのインストレーションイメージの管理に多くの時間を費やす一方で、現場の何万ものサブセットをサポートするために、さまざまなバリエーションも許可せざるをえない状況にあったためです。

 そういった課題を解決するのがSCCM2007です。SCCM 2007ではソフトウエアのインベントリからこうしたあいまいさを一掃した上で、どれだけの数のライセンスが必要かを正確に把握してソフトウエア契約の交渉にあたることができるのです。

 デルの標準的なシステムイメージの管理は大がかりなもので、その管理には多くのプロセスと時間が必要とされていました。標準的なシステムイメージは大半の社員に対応していましたが、一部では、ローカルの管理者がこのイメージを修正して非標準のイメージを作成しなければならないケースもあります。

 また、監査プロセスの改善も課題でした。各種の規制や業界基準を遵守したシステムを維持するために定期的に監査されているので、必要なソフトウエアがインストールされていることや、ネットワークインターフェースカードが適切に設定されていることなどを管理できるかどうかが重要になります。

 そのため、IT管理者に負荷をかけずにシステムのソフトウエアとハードウエアの構成を監視し、レポートを作成できる仕組みが求められていました。

デル株式会社
ラージ・エンタープライズ マーケティング ジャパン・マーケティング本部 ブランド マネージャー 1997年、デル入社。市場開発部マネージャー、PowerEdgeのプロダクトマネージャーやアライアンスマネージャーを歴任後、現職。

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