仮想化サーバー統合への道

2010年6月7日(月)
宮下 徹

仮想化は難しい?

仮想化という言葉がずいぶんと浸透してきました。書籍やWebでも仮想化に関するものが多く見られます。ところが、実際に仮想化を利用してサーバー統合を実施したいと考えた際に、「1台のサーバーにどのぐらい仮想サーバーを立てることができるのか」、「既存のサーバーは仮想化環境でも動作するのか」などと悩む管理者も多いのではないでしょうか。

対象となるサーバーを把握することが、仮想化によるサーバー統合計画を遂行するうえで重要です。この一方、全社規模でサーバー統合を実施する場合、各部門に導入されているサーバーの情報を収集するのは非常に大変です。

また、どういった情報を収集するべきかも、悩ましい問題です。実装されているデバイスやインストールされているアプリケーション、さらには各種パフォーマンス情報など、あらゆる情報を収集すれば間違いないかもしれませんが、これらの調査が完了するまでに膨大な時間を費やします。最悪の場合、途中で挫折してしまう可能性も考えられます。

一方、収集する情報をしぼりすぎてしまうと、本当は必要な情報が取得できない恐れがあります。再調査を余儀なくされ、2度3度と繰り返し調査することにもなりかねません。何度も調査を依頼することになれば、各部門のサーバー担当者の負担はその分増えますし、反発も大きくなります。結果、統合計画が頓挫してしまうことも考えられます。

さらに、サーバーの情報がせっかく集まったとしても、「1台の物理サーバーにいったいどのぐらいの仮想サーバーを作っていいのか」、「仮想サーバーの組み合わせは適切なのかどうか」など、考慮すべき点はたくさんあります。

このように、仮想化によってサーバー統合を実施したいと考えていても、どのように進めればいいか分からず迷っている人も多いのではないでしょうか。

そこで、第1回では、上記のような悩みを解決する方策であるキャパシティ・プランニングと、実際にサーバーを移行する際の方法について解説します。

キャパシティプランニングとは?

まず、上述したキャパシティ・プランニングについて、簡単に説明します。キャパシティ・プランニングとは、既存のサーバー環境の情報を把握し、統合先となるサーバーのスペックに合わせて統合率を決定していくプロセスです。特に、既存のサーバー環境の情報をきちんと把握することが、もっとも重要になります。

簡単な例を以下に示します。

例: 過剰投資の防止

以下のような4台のサーバーがあると仮定します。

  • サーバーA: 3000MHz
  • サーバーB: 1500MHz
  • サーバーC: 500MHz
  • サーバーD: 200MHz

これらをそのまま統合して、単純に足し算してしまうと、合計5200MHzのCPUスペックが必要という計算になります。

ところが、既存のパフォーマンス情報を取得し、CPUの使用率が判明したら、どうなるでしょうか。仮にCPU使用率が以下のような場合、合計で830MHzあれば足りるという計算になります。

サーバーA: 3000MHz     CPU使用率: 10%     必要MHz: 300MHz    
サーバーB: 1500MHz     CPU使用率: 20%     必要MHz: 300MHz    
サーバーC: 500MHz     CPU使用率: 30%     必要MHz: 150MHz    
サーバーD: 200MHz   CPU使用率: 40%   必要MHz: 80MHz  

このように、現状分析をしておけば、過剰な投資を防止することができ、サーバー統合をより有効に実施することが可能になります。

現状把握は難しい?

複数のサーバーを仮想化で統合しようとした場合、それぞれの仮想サーバーに対してリソースをどのように割り当てていくかを検討する必要があります。上述した通り、現状分析は非常に大切ですが、実際にはどのような情報を取得すればよいのでしょうか。

基本的には、CPUの種類、スペック、搭載数、そしてメモリー量やディスク容量などといったインベントリ情報に加えて、CPU使用率、メモリー使用量、ページング数、ディスクやネットワークのI/Oパフォーマンスといった、稼働しているサーバーの性能を採取していくことになります。

したがって、サーバーの状況を手動で把握しようとなると、いくつものウインドウを立ち上げて確認する必要があります。

図1: 複数のウインドウを立ち上げてサーバーの状況を把握する(クリックで拡大)

さらに、性能情報は、ある一定期間、できれば業務のピーク時に合わせて採取するのが理想です。最低でも2週間程度は取得し、平均とピークを見る必要があります。また、すべての性能情報を取得しようとすると情報量が莫大(ばくだい)になるため、サーバー統合に必要な部分を選出して採取する必要があります。

このような作業を、100台、あるいは1000台といった規模で実施するのは、非常に多くの工数がかかり、現実的ではありません。

そこで薦めたいのが、キャパシティ・プランニングに特化したツールです。市場には、さまざまなツールがあるので、要件に応じて選びましょう。有名なところでは、米VMwareの「Capacity Planner」、米Novellの「PlateSpin Recon」、米Microsoftの「Assessment and Planning Toolkit(MAP)」などがあります。

これらのツールは、基本的には既存サーバーに手を加えることなく情報を収集できます。エージェントのインストールや設定の変更、再起動といったプロセスは必要ありません。情報収集時に与える影響が最小限で済みます。また、キャパシティ・プランニングに特化して作られているため、サーバー統合に必要な情報を正確に収集することが可能です。

図2: キャパシティ・プランニングに必要な情報を自動で収集する。右図は、VMware Capacity Plannerを使用した場合の例(クリックで拡大)
ネットワンシステムズ株式会社 ビジネス推進グループ技術本部 プラットフォームシステム技術部 PFチーム

みやした とおる
入社以来、一貫して仮想化製品を担当。現在はVMware社、Citrix社の各仮想化ソフトウェアの評価・検証を実施する一方、エバンジェリストとして仮想化ソリューションの啓蒙活動にも従事。
 

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