クラウド時代のデータセンター
IIJの取り組み: 実証実験
空調機の選択
データセンターがエネルギの効率化をアピールする時代がやってきました。今では、データセンターのエネルギ効率を示すPUEが、あたりまえのように使用されています。
エネルギ効率を良くすることは、データセンターの消費電力削減(電気料金の削減)につながります。また、環境問題に対する姿勢や取り組みが評価された場合、データセンターの収益や事業価値の向上につながります。
Ashrae(米国暖房冷凍空調学会)技術委員会TC9.9は2008年、データセンターの消費電力低減のため、データセンター内の温湿度条件を緩和した基準を発表しています。これにより、データセンターの空調動力を削減するための政策が立てやすくなりました。
IIJも、エネルギ効率を良くするためには空調動力の削減が欠かせないと判断しています。まずは、水で熱交換を行う水冷方式において、電力を多く消費する冷水の作成時に、自然エネルギを利用して空調動力を削減する方式を検討しました。
冬季にチラーを使用せず冷却塔で冷水を生成するフリー・クーリングは、実績のある技術ですが、チラー・冷却塔・ポンプなど共通設備の初期構築が必要となります。井水利用、地中熱利用、雪利用は、さらに大型の設備が必要で、広大な敷地も必要になります。さらに、冷水を運搬するためのポンプの電力は1年中必要です。
どの方式も、大きな設備投資が必要となりました。また、これらの方式は既存のデータセンターの空調設備よりも格段にエネルギ効率は良いものの、IIJが目指すPUE 1.2(通年)以下にはなりません。
もっとシンプルな設備構成で、さらにエネルギ効率が良い方式が必要と判断し、外気空調の検討に至りました。外気空調は、そこにある冷たい空気を利用してIT機器を冷却するという、非常にシンプルな構成です。
実証実験
空調モジュール(外気空調機)は、ITモジュール(コンテナ)のコールド・エリア温湿度環境がAshrae2008の基準(乾球温度18度~27度、相対湿度60%以下、露点温度5.5度~15度)になるように制御を行います。
図4: 「エコ・データセンター」の実証実験 |
空調モジュールには、外気条件によって3つの運転モードがあります。
図5: 空調モジュールの3つの運転モード(クリックで拡大) |
- (1)外気運転モード
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外気がAshrae2008の基準を満たす場合は、外気のすべてをコールド・エリアに給気し、IT機器の排気のすべてを外に捨てる。
- (2)混合運転モード
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外気が低温乾燥の場合は、外気とIT機器の排気の一部を混合し、さらに加湿を行いコールド・エリアに給気する。
これら2つの運転モードは、外気を取り入れることでコールド・エリアの温湿度を制御しています。冷たい空気を作るために電力を使用していないため、エネルギ効率は非常に高いです。実証実験では、PPUE 1.07(注1)という非常に良い結果となっています。
注1: PPUEとは、UPSや配電盤などの消費電力を含まない、部分的PUE。コンテナ利用などによる効率化を表す指標として、The Green Gridにて検討中。
- (3)循環運転モード
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外気が高温多湿の場合は、外気を取り入れずに、室外機を運転させてIT機器の排気を冷却します。
室外機を運転させて冷たい空気を作るため、循環運転モードの時間を極力短くすることが重要となります。循環運転モードの実証実験は7月~9月ですが、この期間、IIJは複数のITベンダーと共同で、夏の外気をコールド・エリアに給気した場合にIT機器が正常に動作するかどうかの確認を行います。IT機器は、おのおのの仕様によりますが、おおむね乾球温度35℃、相対湿度80%程度での動作を保証しており、夏季でも外気空調可能と考えています。
実証実験では、空調モジュールとITモジュールをパッケージ化させた動作確認も行っています。実証実験で得られた結果・経験は、ITモジュールの商用利用にフィードバックさせることになります。
今後の展開
実証実験は1年間を予定しています。今後は、空調モジュール制御の微修正や、さらなるエネルギ効率向上へのチューニングが中心となっていきます。空調動力以外では、データセンターの電気設備(UPS、配電方法)の効率化も検討していく予定です。
IIJは、クラウド・サービス「IIJ GIO」の基盤となる次世代のモジュール型データセンター「エコ・データセンター」を2010年度内に建設することを、2010年5月14日に発表しました。
このITモジュール・空調モジュールは、日本全国に設置可能となるよう、震度7相当の地震や積雪・風速にも耐えることができる構造としています。クラウド時代に合ったファシリティの提供方法を見極め、明確化することが大切です。近い将来、この「エコ・データセンター」を、日本全国に建設することを目指しています。
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