サーバー仮想化でI/Oの問題が顕在化

2010年7月5日(月)
尾方 一成

I/O仮想化の誕生

最先端の技術で構築された今日のデータ・センターでは、仮想化技術によって、ストレージ、サーバー、ネットワークの利用効率が格段に向上しています。また、こうしたリソースは、必要に応じて性能や容量を容易に拡張できるようになっています。

この一方で、サーバーのI/Oは、10年前の水準と比べてあまり変わっていません。IT管理者は、依然として、迷路のようなケーブルや、増え続けるカード、スイッチ、ルーター、そしてこれらに伴う複雑な管理と格闘し続けています。こうした従来型のI/Oがシステムのボトルネックとなり、変化するビジネス要求にリアルタイムに対応できなくなってきています。

こうしたI/Oの問題を解決するために登場した技術が、I/Oの仮想化です。

I/Oの仮想化では、物理的なI/Oアダプタ・カードを仮想I/Oリソースで置き換えます。これにより、データ・センターの機動性を改善できます。以前は数週間かかっていた作業が、たったの数分で完了するようになります。

I/Oの仮想化では、サーバーのI/OをI/O仮想化装置へと統合するため、インフラが劇的に簡素化します。何百本ものケーブルが数十本になり、I/Oアダプタ・カードはほぼ不要になります。I/Oまわりのコストを、全体で最大50%削減できます。

図5: I/O仮想化で変わる次世代データ・センター(クリックで拡大)

I/O仮想化の技術の詳細は、次回(第2回)で解説します。以下では、I/Oの仮想化を導入して効果を上げたユーザー事例を紹介します。

I/O仮想化導入事例: オンライン飛行機チケット予約システムのサービス事業者

ユーザーのビジネス概要
米国に本社を置くこの会社は、世界6拠点にデータ・センターを構え、毎日数十万人のユーザーと情報のやり取りをしています。個々のデータ・センターごとに、1000台以上のPCサーバーを使って年間1兆円を超えるオンライン・トランザクションを処理しています。
ユーザーの課題
個々のサーバーは、ネットワーク接続とストレージ接続を合わせて10系統以上のI/Oを抱えていたため、サーバー自体のコストと同じくらいインフラのコストがかかっていました。また、新規にサーバーを追加するたびに、複雑なI/O構成を複製しなくてはなりませんでした。サーバーの追加プロセスに多くの時間を使ってしまうため、新規顧客を獲得するためのビジネス展開が慢性的に遅れていました。

図6: オンラインチケット予約システムのI/O仮想化導入事例(クリックで拡大)
I/O仮想化の主な効果
オンサイト作業が無くなった
サーバーに対するNIC/HBAの増設や設定変更が必要ないため、サーバーI/Oに関するオンサイト作業が無くなりました。
ノードあたりのI/Oコストが下がった
サーバー・ノードあたりのI/Oコストは、従来のNIC/HBAコストの数分の1になりました。また、スイッチ側のポート単価は、10GbEよりもはるかに低く、ノンブロッキング型の1GbEポートをわずかに上回る程度で済みました。
可用性が高まった
VMwareのデュアル・スイッチ構成で運用していますが、サービス開始後、1度もサービスが停止していません。これにより、ペナルティ(サービス稼働保証)付きの積極的なSLA(サービス・レベル契約)を導入することができ、競合他社との差別化を図ることができました。
スケジュール計画の遅れがなくなった
新規サービスの開始にあたっては、顧客満足度の向上や事業計画の進ちょく報告のため、販売部門やプロジェクト管理部門から、計画達成度の高さを求められます。I/Oの仮想化では、すべてのサーバーを1カ所から統合監視できるようになるなど、システム運用管理が容易になるため、システム面でのスケジュールの遅れがなくなりました。
シーゴシステムズ・ジャパン株式会社 代表取締役

国内システムインテグレータでの基幹システム開発エンジニアの経験を経て、その後米国通信機器ベンダーで営業・マーケティングを担当。2007年にシーゴシステムズ・ジャパンに入社し、現在に至る。Mr. I/O(Issei Ogata)として、「I/O仮想化」の普及に奔走する毎日。www.xsigo.co.jp/

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