7年ぶりの新型レゴ マインドストームEV3を手にとって体験しよう
マインドストーム3代目となるEV3の性能とは
Think ITでもたびたび取り上げている教育版レゴ マインドストーム。エンジニアの研修や学生向けの教材として幅広く使用されているが、7年ぶりに発売される新製品の発売を前に、品川インターシティ内にあるコワーキングスペース「CO☆PIT」で記者向けの体験会が開催された。
本記事では、新しくなった教育版レゴ マインドストームEV3を実際に使った体験会の様子をお届けする。記事の最後には一般参加者対象の体験会のお知らせも掲載したのでそちらもお楽しみに。
体験会では、はじめにマインドストームの販売・教育研修を行っているアフレルの羽根田氏より、1世代目であるRCXの登場から3世代目のEV3に至るまでの歴史が説明された。
教育版レゴ マインドストームは、デンマークのレゴ社と米マサチューセッツ工科大学が共同で開発した製品で、ロボットを作るために必要なユニットやレゴブロックがセットされている。15年前に初代となるRCXを発売開始して以来、2006年のNXTを経て、EV3で3代目となる。その誕生の経緯もあって、ロボットを使った学習活用ができる点で支持されてきた。
ロボットを学習に使うことの特徴は、以下のようなものがあげられる。
- ソフトウェアを作る、ロボットで動かすことで、目で見て理解ができる
- 作って動かす。動かなければ試行錯誤してみることで、論理的思考が養える
- ロボット作りを通した体験から得られる深い理解
GUIによる視覚的なソフトを使って思い通りのプログラムを作り、誰もが知っているレゴブロックで組み立てた手足や車輪などのパーツが動くと、そこで得られる達成感は大きい。
ハード、ソフト共にオープンな環境のため、教育のみならず、開発者が個人的にプログラムを作って動かすことができる。この15年の間に、マインドストームは世界60カ国で200万台以上が発売された。
簡単な走行プログラムを作る
ひと通り説明の後、いよいよEV3を使ったロボット作りとプログラミング。机に置かれたEV3を手にとり、Think ITでもたびたび執筆しているアフレルの軽部氏によって、EV3を使った体験プログラムがはじまった。
まずはEV3の本体と各種センサーなどのパーツを紹介。EV3の本体は、CPUはARM9、OSはLinuxを搭載。iPhoneなどスマートデバイスへの接続が可能で、標準セットにはタッチセンサー2つとカラーセンサー、超音波センサーが含まれる。さらに、EV3では新たにジャイロセンサーが追加された。
今回Linuxが搭載されたことは大きな特徴の一つで、将来的にはC言語による開発や、SDKが配布されることも期待できる。本体画面もリッチになり操作性が向上した。
その他、インターフェースの変更点や出力ポートについても説明された。さらに拡張セットを加えることで、基本セットについていないギアやホイールを使うことができる。
プログラムの流れとしては、PC用のプログラミングソフトでプログラムを作り、USBケーブルを使ってEV3本体にプログラムを転送する。本体に接続された各種センサーの情報を処理した上で、接続されたアクチュエータ(モーター)を制御する。
プログラム作成に使われるのは、EV3に合わせてUIが一新された新しい教育版EV3ソフトウェア。この日使用したものはベータ版だったため英語中心のメニューだったが、国内で発売される際は日本語ローカライズが施された状態で提供される。
体験プログラムでは、まずモーターを動かす簡単なプログラムで教育版EV3ソフトウェアに慣れた後、床に敷かれたカーペットの1コマ分を移動するプログラムを組むことになった。
たったこれだけの動作プログラムでも、方法はいろいろある。指定した時間分モーターを回すのか、あるいはモーターの回転数を決めるのか…など、ベストな方法を考えるのは楽しい。参加者たちも思い思いの方法で、ロボットがどれだけうまく走るかにチャレンジしていた。
黒い線の上をロボットが進むライントレースのプログラム
簡単な走行プログラムの次は、黒いライン上をなぞるように進むライントレースのプログラムを作った。ライントレースはマインドストーム入門の定番プログラムだ。
曲がりくねったラインをトレースする方法はいろいろあるが、簡単な考え方の例として、ライン上にいる場合は右に、ラインを外れたら左に曲がるというものがある(逆でも可)。すると、ロボットはライン上をジグザグに動きながらライン上を進むことができる。あまりスマートではないが、比較的確実に進むことが可能だ。
上記では一定の条件によって処理を分けるプログラムだが、GUIによって分かりやすく作れるので、うまく行かなければすぐ次のアイデアを試すことができるため、学習意欲を削がれないメリットがある。
どこまでがラインなのかを判断するためには光センサーを使う。光の反射量から黒いライン部分とラインのない白い部分を測定し、プログラム上で設定することでロボットがライン上にいるかそうでないかを判断させることができる。
このライントレースのプログラム作りは、出来上がった後にレースを行う内容だったため、全員がさらにのめり込んでプログラムを作り、コース上を何度も試走して精度を高めていった。
Think IT編集部は以前もライントレースを体験していたためか、このレースで一位のタイムを出すことができた。単純なライントレースでも、直線コースではあえてトレースせずにコーナー位置まで直進させタイムロスを減らすなど、工夫できるポイントは多い。
ロボット同士がぶつからないように自動追従する走行プログラム
次に作ったのはトラックが自動的に車間距離を測定して自動で追従するシステム。実現性の高いシステムの試験開発にも、マインドストームを使えばシミュレーションを行うことが可能だ。
ここでは別のコースを用意。ライントレースしながら前のロボットにぶつからないよう走行するプログラムを作った。最後に全員のロボットを並べて追従プログラムをオンにすると、それぞれが前を走る“車両”にぶつかることなく、見事に縦列走行させることができた。
追従システムが完成した所で3時間に及ぶ体験会は終了。セミナールームの表に飾られた歴代マインドストームが15年の歴史を物語っていた。
マインドストームの導入先には、宇宙航空研究開発機構(JAXA)やブラザー工業、キヤノンソフトウェアなどがあり、エンジニア向け研修でも、約230社が導入するなど評価を得ている、また、高専や大学院など教育機関にも数多く導入されている。
アフレルでは現在、EV3とともに全国100個所を回るキャラバンを実施している。新しくなったマインドストームを触ってみたい方は、参加してみてはいかがだろうか。
おわりに EV3キャラバン100@Think ITのお知らせ
Think ITでは、株式会社アフレルの主催するEV3キャラバン100に参加、7月3日(水)に、インプレスのある市ヶ谷にて実施します。発売前の教育版レゴ マインドストームEV3に触れるチャンスですので、ご希望の方は下記リンク先をご覧の上、お申し込みください。
【関連リンク】
(リンク先最終アクセス:2013.05)