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スマートハウスの基盤技術としてのOSGi

スマートハウスとは近年、CO2削減や環境産業創出のため、スマートグリッドが各国で推進されています。スマートグリッドとは、はっきりとした用語の定義はありませんが、電力網やガス網など社会インフラ上の機器から情報を集約して解析し、インフラ上の機器のエネルギ消費量を最適化する、という試みです。最近では特に、

中村 雄一, 椎名 真

2010年8月11日 20:00

スマートハウスとは

近年、CO2削減や環境産業創出のため、スマートグリッドが各国で推進されています。スマートグリッドとは、はっきりとした用語の定義はありませんが、電力網やガス網など社会インフラ上の機器から情報を集約して解析し、インフラ上の機器のエネルギ消費量を最適化する、という試みです。

最近では特に、スマートグリッドの1つの構成例として、宅内をネットワーク化した"スマートハウス"が注目されています。今回の記事では、スマートハウスを構成する通信規格と、通信規格を駆使したスマートホーム・アプリケーションの基盤となる規格のOSGiについて解説します。

スマートハウスは、図1のような構成になっています。

スマートハウスの中心となる機器は、ホーム・ゲートウエイ(HGW)と呼ばれるゲートウエイ装置です。通信キャリアやスマートハウス事業者によって配布されます。機器同士がHGWを介してつながって連携することで、省エネを始めとするさまざまなサービスが利用できます。

例えば、スマート・メーターから消費電力情報を集めてテレビやPCに表示する「消費電力見える化サービス」、インターネット上のコンテンツをテレビやデジタル・フォトフレームに表示する「コンテンツ配信サービス」、防犯カメラや防犯センサーの情報を使った「防犯サービス」など、さまざまなサービスがあります。

このようなスマートハウスは、日本では、国家プロジェクトやハウス・メーカーなどで実証実験が始まっています。アメリカでは、既に商用サービスも提供されています。

図1: スマートハウスの構成

 

スマートハウスの通信規格

スマートハウスを実現するためには、機器をつなぐための通信技術の標準化が必須です。このための、通信の主な規格には、UPnP(Universal Plug and Play)、DLNA(Digital Living Network Alliance)、ZigBee/Z-Waveがあります。

●IP上のデバイスの管理/制御を担うUPnP

UPnPは、UPnPフォーラムが策定を進めている規格で、LANやWiFi(無線LAN)のようなIPネットワークの上にある機器を制御するためのプロトコルです。監視カメラや照明機器などがUPnPに対応しており、実際に、LAN経由で監視カメラや照明を制御できます。UPnPでは、どのようなデバイスがつながっているのかを管理するための、デバイスによるアナウンスや、デバイスに命令を送って制御するためのRPC(Remote Procedure Call)などが定められています。

●見える化を担うDLNA

DLNAは、Digital Living Network Allianceが策定するガイドラインであり、テレビやPC、NAS(ネットワーク・ストレージ)といったデバイス間で、LANを介して動画や写真などのコンテンツを共有するためのプロトコルを定めています。デバイスの管理や命令を送るための通信として、UPnPを利用しています。DLNAに対応した機器同士でコンテンツを共有できます。DLNAを使うことで、サーバーに格納されたコンテンツをテレビで視聴することや、消費電力量をテレビに映し出して電力を見える化することが可能になります。

●省電力無線プロトコルZigBee/Z-Wave

UPnPやDLNAは、EthernetとTCP/IPを用いたLAN上のプロトコルです。しかし、LANはハードウエアの消費電力が多く、バッテリ駆動であるセンサーやリモコンのようなデバイスには適しません。これに対し、LANよりも少ない消費電力で無線通信できるよう、さまざまなプロトコルが検討されています。その中でも注目されているのは、ZigBeeとZ-Waveです。ZigBeeは、ZigBee Allianceにて標準化が進んでいるプロトコルです。近年は、スマート・メーターでの採用が進みつつあるため、注目を集めています。一方、Z-Waveは、Z-Wave Allianceで標準化されているプロトコルです。北米や欧州では、Z-Waveに対応したリモコンや空調制御機、防犯機器などが市販されており、普及が進んでいます。

スマートハウスのHGWによって、このような通信規格を駆使した各種のアプリケーションが、さまざまなサービス提供者から提供されるようになる、と想定されています。

こうした多様なアプリケーションをHGW上で実行するためのプラットフォームとして、前回触れたJava上のフレームワーク「OSGi」が注目されています。注目される理由としては、OSGiによる部品化があります。

次ページでは、どのように部品化を実現し、どのようにOSGiがHGWで使われるのかを、具体的に解説します。

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