フルOSSクラウド構築ソリューションに見るIaaSの外観

2010年12月6日(月)
武田 健太郎

1.2. NTTデータの取り組み

1.2.1. BizXaaSの全体像

筆者らが所属するNTTデータでは、BizXaaSと呼ぶ総合クラウド・ソリューション(解決策、製品サービス)群を提供しています。その全体像は大きく、

  1. BizXaaSクラウド構築・運用サービス
  2. BizXaaSクラウドプラットフォームサービス

という2つに大別できます。

図1: BizXaaSのサービス一覧

前者(BizXaaSクラウド構築・運用サービス)は、プライベート・クラウドを構築するソリューションです。後者(BizXaaSクラウドプラットフォームサービス)は、パブリック・クラウドを提供するソリューションです。ユーザーが求めるクラウドをワンストップで提供できる点が特徴です。

「ミッション・クリティカルな基幹業務をプライベート・クラウドで実現し、周辺業務はパブリック・クラウドに載せて低コストで運用する」といったハイブリッド・クラウドも実現可能です。BizXaaSの詳細は、BizXaaSのポータル・サイト*3で確認してください。

1.2.2. フルOSSクラウド構築ソリューション

本連載で中心的な役割をなす「フルOSSクラウド構築ソリューション」は、前述の「BizXaaSクラウド構築・運用サービス」のラインアップの1つに分類される、NTTデータ独自のプライベート・クラウド構築ソリューションです。クラウドを構成するソフトウエアに、独自拡張を施したEucalyptusを用い、監視やバックアップといった運用管理のソフトウエアまで、すべてOSSで固めています。

図2: 「フルOSSクラウド構築ソリューション」の利用イメージ例(クリックで拡大)

フルOSSクラウド構築ソリューションは、サービスの提供形態として「セルフサービス型」をうたっています。クラウドの利用者が、自ら仮想マシンを起動停止できます。このため、運用部門を介さず、スピーディにクラウド上の環境を払い出すことができます。

フルOSSクラウド構築ソリューションは、もともとのEucalyptusに対して、以下のような改造を加えています。

  • クラウドの利用者管理を簡単にするため、認証関連の機能をLDAPで外出しした
  • クラウド利用者の仮想マシン・テンプレートの管理を利用者に任せるため、仮想マシンのバージョン管理機能を追加した
  • 各利用者がどれだけ仮想マシンを利用しているかを運用者が簡単に把握するため、レポーティング機能を新規追加した

さらに、商用利用では欠かせない機能である「Windows仮想マシン」や「永続化インスタンスのサポート」も、Eucalyptusを拡張することによって実現しています。フルOSSクラウド構築ソリューションの詳細は、NTTデータのプレス・リリース*4を参照してください。

Column: プライベート・クラウドの2種類の利用形態
「セルフサービス型」と「サーバー統合型」

プライベート・クラウドには、「セルフサービス型」と「サーバー統合型」という2つの提供形態が考えられます。「セルフサービス型」のプライベート・クラウドは、クラウド利用者が自らクラウドに対して資源の払い出しをする利用形態です。これに対して「サーバー統合型」は、動作するアプリケーションごとの資源をクラウド運用者が事前に割り当てておく利用形態です。

セルフサービス型は、資源の提供が素早く、かつ柔軟です。一方、サーバー統合型は、既存のアプリケーションをクラウド上に容易に移行できます。このように、それぞれ異なったメリットがあります。両方の利用形態を組み合わせたプライベート・クラウドも考えられます。

株式会社NTTデータ 基盤システム事業本部

オープンソースソフトウェアを活用したITインフラ技術を専門とする。特にOS・クラウド・ストレージといった技術分野での経験が豊富。シリコンバレーエリアで技術の目利きとして活動したのち、近年はITインフラ技術の効果的な使い方をマーケットに広める活動を中心として実施している。

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