仮想化統合の問題を解決するプライベートクラウド

2011年2月3日(木)
須賀 仁志

仮想化統合の課題と解決

昨今、仮想化統合の導入が一巡していく中で、さまざまな問題を耳にする機会が増えてきました。ここでは、実際に発生した問題を紹介します。

問題例1「仮想化統合したもののリソースが有効活用されていない」
仮想化統合したにも関わらず、コンピューターリソースの利用率が低いままでムダが減らない、という問題です。複数のアプリケーションを仮想化統合環境へ移行したものの、仮想マシンのリソース利用率は低いままであり、結果としてハードウエアのリソースを十分に使いきれない状況です。
この企業では、リソースの割当量を見直し、再配置する事での問題解決を試みましたが、アプリケーション担当者からは強く拒否されてしまいました。リソース割当量が現状から減らされる事によって性能劣化のリスクが生じるためです。その結果、リソースの過剰割当という問題は解消されないままになっています。
この問題を解決するには、アプリケーション担当者が進んでリソース配置の最適化に協力するような仕掛けが必要です。例えばリソース再配置のルールを事前に定義し、アプリケーション担当者と合意しておけば、このような状態にならなかったかもしれません。また、アプリケーション担当者に対して課金をする事で、利用していないリソースを返却するインセンティブを働かせる、といった予防策もあります。
問題例2「アプリケーション担当者への支援が増大し、運用が回らない」
アプリケーション担当者からの問合せや支援業務が想像以上に大きな負担となり、本来の運用業務が回らなくなってしまったという問題です。この問題は、仮想化統合環境を構築したものの、アプリケーション担当者に対するドキュメントやその説明が不十分なまま運用に突入した事に起因します。その結果、利用者からさまざまな質問や要望が多発し、その対応に忙殺されて運用が回らなくなってしまいました。問題解決のための措置を取ろうとしても、運用すら回っていない状態では、その工数を捻出(ねんしゅつ)する事もできませんでした。
アプリケーション開発者向けのドキュメントをサービスインまでに整備しておけば、質問や要望がここまで増える事はなかったでしょう。
問題例3「複数システムで複数の異なるアーキテクチャが乱立」
仮想化統合環境で稼働するシステムが無統制な状態になり、複数のアーキテクチャが乱立してしまったという問題です。このような問題は、アプリケーションからの要求をそのまま全て受け入れてしまった結果として頻繁に目にします。
複数のアプリケーション担当者は仮想化統合環境の担当者に対して、バラバラな監視、バックアップ、冗長化の構成を要求してきました。それらの要求全てを仮想化統合環境の担当者はそのまま受け入れてしまい、運用担当者は混沌とした仮想化統合環境を維持運用せざるを得なくなりました。
アプリケーション担当者からのさまざまな要求を全て受け入れてしまった背景には、構成の標準化と統制が不十分であった事が原因としてあります。アプリケーション担当者からの要求が標準化され、統制されていればこのような問題は発生しなかったかもしれません。

図2:仮想化統合の課題(クリックで拡大)

これらの問題の根本原因にはアプリケーション担当者の行動をプライベートクラウドの担当者が統制できなかった事があります。特に、複数部門のシステムや、新規に開発するシステムを仮想化統合環境する場合には、アプリケーション担当者からの要求や質問はさらに多様化し、統制はより困難になります。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

ITビジネス企画推進室 インフラソリューション企画推進部 ソリューション企画推進第1課。2001年に伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)入社。
開発SEとしてERPの導入を担当後、アプリケーションとミドルウェアの標準化・共通化の企画、設計、開発、運用に従事。現在は、サーバーやストレージ、仮想化等のインフラ領域に軸足を移し、プライベートクラウドの構想策定業務を中心に活動している。

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