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『江南スタイル』のヒットから、グリーやDeNAが世界展開で越えるべき「壁」を考える

2012年11月14日(水)
『エンジニアtype』編集部
中島聡の「端境期を生きる技術屋たちへ」

UIEvolution Founder
中島 聡

Windows95/98、Internet Explorer 3.0/4.0のチーフアーキテクトを務めたエンジニア。NTTに就職した後、マイクロソフト日本法人(現・日本マイクロソフト)に移り、1989年、米マイクロソフトへ。2000年に退社後、UIEを設立。経営者兼開発者として『CloudReaders』や『neu.Notes+』、教育アプリ『neu.Tutor』といったiOSアプリを開発する。シアトル在住。個人ブログはコチラ

9月にわたしのブログエントリ「Gangnam Style と韓国のコンテンツ戦略」で取り上げたPSYの『江南(カンナム)スタイル』が、日本でもかなり話題になったようですね。

アメリカでは、もう本当にセンセーショナルな流行り方をしました。スティーブ・ジョブズの命日だった10月5日には、シアトルのAppleストアに集まったジョブズ・ファンが、なぜかあの“乗馬ダンス”をみんなで踊るという珍現象が起きたくらいです。

韓国の一アーティストが世界各国で売れた理由を、日本では「人を雇ってYouTubeの視聴回数を増やしたから」とする言説があると聞きましたが、本当の理由はそこではありません。

PSYの世界展開はジャスティン・ビーバーのマネジャーが仕掛けていて、アメリカでは9月のある一週間、全米の主要メディアにPSYが出ずっぱりだったんですね。それで一気にアメリカ中で知れ渡り、世界にも広まったというカラクリです。

さて、なぜ今回『江南スタイル』の話から書き始めたかというと、PSYがヒットした理由を分析したいからではありません。『江南スタイル』のように世界中でヒットさせるコンテンツ戦略が、どうして日本から出てこないのかを考えたかったからです。

日本には、アニメやゲームのように世界中で愛されているコンテンツがたくさんあります。例えば『DRAGON BALL』なんかは、ものすごい知名度です。でも、企業として、戦略的に世界一の地位を築いたコンテンツメーカーは皆無ですよね。

最近はグリーやDeNAのようなソーシャルゲーム会社が北米に進出し、こちらのメディアで話題になることも増えています。とはいえ、ここから実際にシェアを伸ばして世界トップの企業になるには、「第一世代」が乗り越えられなかった壁を越えなければなりません。

インデックスやサイバードが企業買収による北米進出に失敗した理由

ここで言う「第一世代」とは、インデックスやサイバードのような、iモードビジネスの勝者たちです。彼らは1990年代に携帯向けコンテンツで成功し、2000年代前半に世界展開を始めました。

その時に多く採られた戦略が、アメリカやヨーロッパの同業他社を買収しながら、マーケット拡大を狙うというもの。グリーはOpenFeintFunzioを、DeNAもngmocoを買収しながら北米拠点を強化してきたので、ここまでは似たような道をたどっていると言えます。

しかし、第一世代の会社たちは世界一になれず、今は日本国内でも地味な存在になってしまいました。

なぜか。最大の理由は、世界展開における「企業買収のその後」をよく理解していなかったからだと思います。

アメリカに限定して言うなら、こちらの起業家たちが目指しているのは、ほとんどがバイアウトか株式上場なんですね。夢や大志を抱いて事業を続ける起業家もいますが、大多数はこれがゴール。だから、馬車馬のように働いてバイアウトかIPOができたら、そこで終わりなんです。

そんな状態の人たちに、日本から来たカントリーマネジャーが「一緒に天下を取ろう」と語りかけたところで、うまくいかないのは当然でしょう。これが、企業買収による世界展開の最初の壁です。

「じゃあ高い給料やインセンティブでつなぎ止めれば良いだろう」と思う人もいるでしょうが、買収後にはもう一つ、別の壁が待っています。

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