システム運用における、5つの大間違いとは(1)

2014年2月13日(木)
株式会社アールワークス

パターン2:緊急時の危機感が喪失する「現在の確認」

類型パターンの2つ目は、「現在の確認」である。これに該当する作業は、「特定のWebページの表示をブラウザで確認する」などである。これには、何らかの基準を元に定期的に「現在」の状態を確認するものが該当する。具体的には、表3に示す内容が該当する。

表3 「現在の確認」に該当する作業
内容
特定ページの表示可否を担当者がブラウザで確認
業務システムへのアクセス確認
システム動作チェックのためのダミー業務実施

このパターンにおいても、1つ目の「過去の確認」と同様の問題が、基本的に生じる。それに加えて「現在の確認」では、緊急を要する場合の出足の遅れも問題となりうる。この点では、「過去の確認」よりも問題点が増加すると考えられる。

「現在の確認」では、状態次第では対応に緊急性を求められるものが多く、煩雑なルールは障害検知や復旧対応を鈍化させ、例外への対応力を奪ってしまう。このパターンに該当する業務が多い現場では、このような会話をよく耳にする。

「疎通確認のためにpingを実行しても応答がないんですが、どうしましょうか」

「毎朝のシステムアクセス確認は、ページの表示が遅くていつも時間がかかるんですよね」

たったこれだけの会話の例を見るだけでも、まったくもって緊急時の危機感がないと感じる読者のみなさんも多いのではないだろうか。

パターン3:ひずみ現象が起こる「定型的な作業」

3つ目の類型パターンは、「定型的な作業」である。これに該当する作業は「、定期的なデータ更新」などである。これには、定期的に発生する、定型的な手順が定められた作業が該当する。具体的には、表4に示す内容が該当する。

表4「定型的な作業」に該当する作業
内 容
特定のメールを整形して集計、再送付
定期的なデータ更新
定期的な再起動
蓄積したログの整理

この運用を運用担当者で行い続けると、「既得権の発生」「権利の拡充・保持」という2つの問題が発生する。

既得権の発生とは、次のようなことである。

定型的な業務を特定の運用者に専任させると、「これだけをしていればよい」または「これはあらゆる他の業務に優先される」という拡大解釈がなされることがある。これが既得権の発生である。ここで言う既得権とは、その仕事のみを優先してこなしていれば他人から非難されない、という権利を意味する。

このような既得権の発生が起こると、次は「権利の拡充・保持」が起こる。人は、得てして手にした権利を拡充する傾向にあり、ここで言う拡充とは、作業時間の延長を意味する。したがって、本当に必要なのかと思われるような作業に時間をかける動きが見受けられることになる。

具体的には、次のような傾向だ。

  1. 資料の装飾に血道を上げる
  2. 統計後の細かな数字を微調整
  3. 共有されていない闇手順の追加

当初の目的としては、「見栄えのよい資料を作りたい」「資料の数字は桁を合わせたい」「こうしたほうが良くなるのでは?」であったはずが、手離れが悪く、時間がかかる作業を無意識で求める環境ができあがってしまうのである。

このように「定型的な作業」に該当する業務が多い現場では、次のような会話をよく耳にする。

「…さんは毎週月曜の午前中は…で手が空かないんです!」

「この作業は…さんしかわからないから…」

これらは、いかにも業務効率が悪そうな発言に感じるのではないだろうか。

少し極端な未来像を提示したが、根底に共通するものは、どれも機械でシステム化できる部分であるにもかかわらず、運用担当者である“人間”に、あまりにもそれらを求めているために起こる「ひずみ」なのである。

著者
株式会社アールワークス
1985年に株式会社アステックとして創業。2000年10月の株式会社アールワークス設立を経て、2005年6月より現在の1社体制に移行。同時に、社名を(株)アールワークス(Rworks, Inc.)に変更。
設立以来、IDC事業やITマネージドサービスを行い、そこで培ったネットワークインフラの運用ノウハウや、さまざまなソフトウェアを開発した技術力を結集し、現在、ITシステムのリモート運用サービスをはじめとして、インフラ構築、ハウジングやホスティングサービス、SaaS/ASP型のシステム監視基盤の提供を行う。単純なオペレーターではない技術提供をベースにした24時間365日の統合的なフルマネージドサービスを提供している。

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