KubeCon China 2024から車載システムの開発をクラウドで行うNIOのセッションを紹介
The Linux Foundationが主催するKubeCon+CloudNativeCon+Open Source Summit+AI_dev China 2024から、自動運転システムの開発にKubernetesとKubeEdge、仮想車輛をクラウド上に実装することでテストを加速させるNIOのセッションを紹介する。
コネクテッドカーを手掛ける新興メーカーNIO
NIOは2014年11月創業の電気自動車に特化した自動車メーカーだ。公式サイトをみれば単に電気自動車だけを製造しているのではなく、スマートホームやスマートフォンなども製造する新興メーカーであることがわかる。
●公式サイト:https://www.nio.com/
特徴として充電式のバッテリーではなく交換式のバッテリーをサブスクリプション形式で提供する企業であることから、早くからクラウドとの連携を視野にいれて開発を進めてきたことが伺える。
まず車載システムの過去からの進化のようすを解説した。ここで「E/E Architecture」と称されているのはElectrical/Electronicの略で、車輛に実装されるコントローラーとそれを繋ぐ配線を総合的に設計するための設計思想というべきものだ。詳細は下記のボッシュが公開しているWebページを参照されたい。
●参考:複雑化する自動車の機能を司る「E/Eアーキテクチャ」とは
ここで個別に設計実装されていたコントローラーが分散していた状態から、領域ごとにまとめられ中央のコントローラーが制御する方式へ、さらに最終的にはクラウドと接続されることで常に接続されて機能が実装され制御される状態に進化していくことを説明。上記のボッシュの解説では自動車がスマートフォンと同様にクラウドに接続されることは近い未来の姿であるという部分から、車輛内で収まっていたコンピュータシステムがNIOにおいてはクラウドに接続されることが必須であるという発想であることに注目したい。これは後半に出てくるクラウド上に仮想の車輛を実装するという発想に繋がるものだ。
そしてそれを実現するためにはソフトウェアの力が必須であるとして、Software Defined Vehicle(SDV)を解説。
ここでは機能別にハードウェアや配線からOS、アプリケーションまでカバーして解説を行っているが、セキュリティと開発から実装を担うツールチェインも視野に入っていることがわかる。
このスライドではSDVを実装するためにはアジャイル開発とデリバリーの実現、コストの低減、そして複数の開発チームの協力体制が挙げられている。
SDVの開発はクラウドネイティブが前提
プレゼンターがHuaweiのWang氏に交代してアジャイルなソフトウェア開発とデリバリーにはクラウドネイティブなツールが必要であるとしてCNCFのランドスケープを紹介。
再度、Jiang氏が登壇し、クラウドネイティブなシステムを車載システムに実装する際の要点を説明。ここではコンピューティング資源が限られていること、エッジノードの運用管理、ネットワークにおいてコストやレイテンシー、そして常時接続が難しいことなどを挙げて、サーバーとクライアントが安定して接続されるクラウドコンピューティングとは違うことを強調した。
そのエッジ側の実装としてKubeEdgeを挙げて解説。ここではNIOがクラウド側をKubernetes、車載システム側の実装はKubeEdgeを想定していることがわかる。
このシステム構成図で特徴的なのは、クラウド側に機能テストのための仮想的な車輛を実装してそこで集中的にテストを実施しているという部分だろう。
ここではクラウド側はKubernetesで実装されていることが解説された。
そしていかにも電気で駆動される車輛ならではの機能、バッテリーのヘルスチェックに関するデータ解析の説明を行った。このアプリケーションもクラウドとエッジで実装され、常に最適なアルゴリズムがシステムに更新されていくという。
さまざまなアプリケーションが実装した機能に対するテストについては、ラボのテスト車輛だけではなくクラウド側に実装された仮想車輛でテストがフルに行われると説明。クラウドとエッジの両方がKubernetesとKubeEdgeで実装されており、車載システムをクラウド側に寄せていることがわかる。
このシステムによって得られた利点を解説したのが次のスライドだ。
ここでは開発効率、品質、コストが挙げられている。品質の部分で強力な並列処理と自動化された機能テストが挙げられているが、それの具体例が仮想車輛での機能テストということだろう。
最後にまとめとしてKubernetesとKubeEdgeによる実装、アジャイル開発と頻繁なデリバリー、自動化された機能テストなどを再度振り返り、セッションを終えた。
創業10年という自動車メーカーらしく、レガシーを持たない強さが存分に発揮された内容のセッションとなった。機能テストに仮想車輛を使うという部分はモーターとタイヤが付いて人が乗り込む車輛とは言え、コンピュータのレベルでは大量のセンサーから上がってくるデータが実体であるという発想から、それを仮想のデバイスとして実装して機能テストを行うことが現実的であることを示していると言える。
セキュリティ面での工夫やネットワークコネクションが失われた際のリカバリーをどうやっているのか、などについて詳しく話を聞きたいと思わせる内容だった。NIOとその開発を支えていると思われるHuaweiが今後どのようにクラウドネイティブな車輛を実現してくれるのか期待したい。
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