OpenStack最新情報セミナーレポート
「OpenStackネットワーキング管理者入門」
講師はミドクラジャパンの高嶋 隆ー氏が務めました。OpenStackの3大構成要素(Compute、Storage、Network)の1つであるネットワークは、Neutronというコンポーネントと各種プラグインの組み合わせによって様々なネットワーク技術に対応しています。しかし、特に最近活発に開発が進められているSDNとの組み合わせについては、まだまだ事例や情報が少ないため、あまり理解が広まっていない実状があります。そこで、Neutronの基本的な内部構成についての解説が中心のセミナーとなりました。
現在、OpenStack Neutronで最もよく使用されているプラグインであるOpen vSwtichとの組み合わせで解説は進められました。一言でOpen vSwitchを利用といっても、さらにL2(イーサネット)のみを扱うのか、L2とL3(IP)の両方を扱うのか。加えてテナント毎のネットワークを隔離するためにVLANを使うのか、GREでトンネリングするのかなど、自分の環境に合わせた技術的な選択が必要となります。
ここでは組み合わせ的に最も多いL2+L3、GREトンネリングを中心に解説が進められました。内部的なプロセスの組み合わせなど、あまりまとめられていない技術情報をベースに解説されていたので、興味のある人は是非発表資料を見てみてください。
現状のOpen vSwitchの最大の課題は、標準的な設定では外部とのゲートウェイを司るネットワークノードが冗長化できないことです。いくつかのOpenStackソリューションでは、独自にネットワークノードの冗長化が図られていますが、今後のOpenStackのバージョンアップ(次のバージョンは「Juno」)で冗長化がサポートされる予定だという情報は、今回のセミナーでの大きな収穫でした。
ただし、コンピュートノードやインスタンスの数が増えていった場合の性能面でOpen vSwitchは不利になるケースがあるため、講師が所属しているミドクラジャパンが開発しているMidoNetなど、様々なSDNソリューションの活用も検討してもよいでしょう。
「 OpenStack検証環境構築・トラブルシューティング入門」
最後に日本仮想化技術の遠山 洋平氏が登壇し、日頃の検証作業などで得られたOpenStackを操作するためのノウハウについて解説されました。
まず、OpenStackを検証する環境を仮想マシン環境上で構築するため、仮想マシン上で仮想マシンを動かす「Netsted Virtualization」のポイントについて解説されまた。いくつかの仮想マシンソフトウェアでは、CPUの持つ「仮想化支援技術」をそのままゲストOSに提供できるので、この設定を有効にすることで「VM on VM」が実現できます。ただし、カーネルパラメータの変更など、正しく動作させるための作業が必要になる点が解説されました。
次に、OpenStack環境を構築するツールとしてレッドハット社が開発しているRDO Packstackの活用ポイントについて解説されました。Packstackでは1台の中にすべてのOpenStackコンポーネントをインストールするAll-in-one構成は可能ですが、複数台にまたがるマルチノード環境構築は難しくなります。
そこで、講師が作成したマルチノード構成を実現するスクリプトが紹介されました。Packstackを使ってOpenStack環境を構築したい人は是非使ってみてはどうでしょうか。
その後、OpenStackの様々なコンポーネントをコマンドラインから操作するコマンドの紹介がありました。これらのコマンドは必要に応じて使うものなので、まずは資料に一通り目を通して、実際に試してみるとよいでしょう。
それぞれ1時間弱のセミナーで、コンパクトに要点がまとまった解説が行われたので、これからOpenStackを触ろうとする人だけでなく、すでにOpenStackを使っている人も参考になる点があると思います。是非資料および配信動画をチェックしてみてください。
<編集部より>遠山氏の所属会社と図5の説明を修正しました(2014/8/21)