HA機能搭載のOpenStack、SUSE Cloudで商用SDNに対抗

2014年8月1日(金)
Think IT編集部

ノベル株式会社は7月15日、同社の注力製品であるSUSE Cloudの今後の取り組みについて、OpenStackの最新動向を交えながら説明会を実施した。

冒頭、日本仮想化技術株式会社の玉置 伸行氏がゲスト登壇し、今年5月に開催されたOpenStack Summit 2014 Atlantaの報告を行った。

図1:日本仮想化技術株式会社の玉置氏

OpenStack SummitはOpenStackの開発者が今後のロードマップを語ったり、ビジネスのトレンドをキャッチアップするための重要な会議。年に2回開催されており、2013年11月に香港、2014年5月にアトランタ、次回は11月にパリで開催が予定されている。

有料のイベントにもかかわらず参加者数は4,700名に増加。また、OpenStackの人気を裏付けるデータとして米国でのエンジニアの求人数が1年間で3倍に増加している点も紹介された。

OpenStackはいわゆるIaaSの部分を主に担当するソフトウェアだが「ベンダーの開発競争によって機能拡張が上下のレイヤーに及んでいる」と玉置氏は指摘する。上位レイヤーはLightPaaSと呼ばれる分野、特徴的なものではプロビジョニングツールを挙げた。OSSでよく使用されているChef, Puppet, Ansibleといったものをディストリビューション側で提供しはじめている、SUSEでいうCrowbarがそれにあたるという。

図2:OpenStackのカバー領域が青いIaaS分野から徐々に広がっている

下位レイヤーでは、同社も開発に携わっているベアメタルOpenStackを紹介。従来のOpenStackの仮想環境を、ベアメタル(物理マシン)でも使用可能にする取り組みで、国内の事業者、特にテレコム関係の顧客のニーズが高いのだという。

OpenStackへの取り組みを強化

続いて、今後のSUSEの狙いとOpenStack市場での取り組みをノベル株式会社代表取締役社長の河合 哲也氏とSUSE事業部 テクニカルセールスマネージャーの村川 了氏が解説した。

図3:ノベル株式会社の河合氏

Linuxは今では企業のミッションクリティカルな分野、高パフォーマンスが要求されるHPCの分野などでも活用が進んでいる。そういったハイエンドLinux市場で、SUSEは高いシェアを獲得している。例えば三菱東京UFJ銀行のSOAの基盤にも活用されている。

OpenStackへの取り組みとして、SUSEは8社しかいないプラチナムメンバーに名を連ねており、チェアマンを務めるAlan Clark氏はSUSEの社員でもある。商用のOpenStackディストリビューションである「SUSE Cloud」を提供している。

エンタープライズ分野での普及のためには、HA機能、オペレーションの容易化、複数ハイパーバイザのサポート、アップデートツールの提供が必要だと力を込めた。特に、OpenStackでネットワークノードを含めたHA機能を提供することで「商用SDN(Software-Defined Network)はいならいのではないか」と問題を提起した。

図4:SUSE事業部の村川氏

続く村川氏は、「(前バージョンの)SUSE Cloud 2のリリースで商用SDNベンダーと提携して製品化する予定だったが、Linuxディストリビューションとの組み合わせとしては高価だった」と、自社でHA機能を搭載した背景を語った。

SDNを使うことでネットワーク構成がシンプルになり、顧客向けのカスタマイズが容易になる。データセンター内での使用を想定した構成が可能。

これまでのOpenStackでは障害対策が十分に施されておらず、現実的な解決策は提供されていない。高可用性を担保するためにハードウェアを実装するなど策を講じてきた。

HA機能を実装したSUSE Cloud 3で高価なSDNに変わるものを提供したい、OpenStackの新バージョンであるIceHouseに対応したSUSE Cloud 4の提供も近日計画中と意気込みを語った。

図5:サーバー障害時に自動で切り替わる

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