OpenStackディストリビューションの比較検証と最新技術トレンド
OpenStack Summit 2014 Parisでの関心事項
最後に筆者が注目している技術トレンドについてお話して第一部のまとめとします。
OpenStack Summitは年に2回開催されているOpenStackの展示会です。次回はフランス・パリにて11月3日から11月7日までの5日間開催されます。開発者向けに今後の開発ロードマップや機能実装について語るDesign Summitや、200を超える事例やテクニカルセッションが予定されています。
次回のOpenStack Summitで筆者が注目しているのは「インフラの上と下で勃発したバトル」です。
OpenStackは一部の機能(ネットワーク仮想化のNeutronなど)を除きソフトウェアとして成熟度を高めています。もちろん今後もクラウド・インフラストラクチャーの機能拡張が行われるのですが、OpenStackディストリビューションを提供する会社の皆さんの注力する領域がインフラの上と下に移ってきたと筆者は感じています。
PaaSの領域は、Light PaaSと呼ばれるPaaSの共通機能についての開発が急ピッチで行われています。具体的には、データベースサービスのTrove、オーケストレーションサービスのHeat、メッセージングサービスのZaqar、データ処理サービスのSaharaなどです。クラウドネイティブなアプリケーションを開発する際に、Amazon Web Servicesでのアプリケーション開発に慣れた開発者の皆さんがLight PaaSを好んで使用する状況があります。データベースサービスやオーケストレーションサービス/プロビジョニングサービスなどはAmazon Web Servicesで提供されている機能ですので、「追いつけ、追い越せ」と開発が進んでいくことが予想されます。
アンダークラウドの領域は、クラウド・インフラストラクチャーを構成するコンピュートやネットワークやストレージをいかに「仮想化」「自動化」「標準化」にのっとって管理するのかが問われています。筆者はこの領域を「ベアメタルIaaS」と呼んでいます。米国では、1人のインフラ管理者がクラウド・インフラストラクチャーを1,000台管理していると聞きますし、将来的には1人のインフラ管理者で10,000台を管理したいともお聞きします。「自動化」や「標準化」を根本から見直さないと実現できない話ではありますが、クラウド・インフラストラクチャーを検討する際は(実施するかどうかはさておき)避けては通れない話題だと思っています。
ベアメタルIaaSを実現するための重要な機能としてベアメタル・プロビジョニングがあります。OpenStackではIronicというプロジェクト名で開発が進められています。筆者としても開発の進捗状況がとても気になっているプロジェクトの一つです。
以上で、第一部たまおきによるOpenStack解説は終了です、引き続き第二部をお楽しみください。
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