グーグルがアマゾンとドローンを巡って再戦へ
昨年8月にグーグルが発表した「Project Wing」の配送ドローン計画は打ち切りとなった。UAV(無人機)を奨励するGoogle Xチームは、アマゾンがドローンを先制するのに対して正面から対抗するのではなく、計画を中止し、別案を進めることを決定した。
グーグルの「ムーンショット(月面探査のように壮大な挑戦)責任者」でGoogle Xの極秘ラボを率いるアストロ・テラーは17日、この決定の経緯をSXSWの聴衆に明かした。同プロジェクトはCEOのラリー・ペイジの厳命に端を発する。社外の人物に商品を配送できるドローンのプロトタイプを5か月以内に完成させるように命じたのだ。期間に間に合うような設計案は一つだけだった。テラーとそのチームは、それが理想形ではないと承知の上で、とにかくその案を進めていった。
失敗することが分かっているプロジェクトを進めるのはおかしな話かもしれないが、テラーはGoogle Xのプロセスには失敗が不可欠だと考えている。実際に彼は失敗が成功への極めて重要な要素だと述べてもいる。
離陸
ペイジの指令を受け、チームは失敗する定めのProject Wing配送ドローンの研究を5か月間続けた。期間が終わると、その研究の利点がより明確になった。チームは昨年に初公開されたバージョンを断念し、以前の実験から得られたあらゆる点を生かして、全く新しい設計の研究を始めた(この新しいドローンの詳細は今年の後半にGoogle Xによって明かされる予定だ)。
テラーが世界に向けて発表した失敗はProject Wingにとどまらない。最近大いに話題となった別の例は、「エクスプローラー」版を販売していたスマートアイウェアのGoogle Glassだ。同社はその製品が世間に浸透する前に、当初の計画をのちに中止してしまった。端末自体が完全になくなったわけではないが、もはやGoogle Xプロジェクトには属していない。Nestの共同設立者で、ここ最近グーグルに加わったトニー・ファデルの傘下で、第二幕が始まる予定だ。
「われわれの行ったことは、失敗に近いものでした」「このプログラムに注目を浴びせすぎたということです」。つまり、同社はその製品を最初のプロトタイプではなく、完成品として宣伝・売り込みを実践したということだ。このような手法が、ベータ版のテスト体験者に製品を提供するというエクスプローラー・プログラム全体の本質と反目することになった。
失敗の連続、そして気球浮遊の成功
Google Glassには大きなプレッシャーがあり、注目を集めてもいたが、Google Xの失敗はその多くが小さなものだ。そのようなケースでは、研究開発の途上で製品を改良するのに失敗はささやかな歩みであり、必要な存在だ。
例えばProject Loonだ。これは長時間滞空可能な気球で遠隔地にインターネットを供給することを目的としていた。グーグルはProject Loonの改善に努めた。同社は気が遠くなるほどのテストを幾度も繰り返して、長時間にわたって気球を滞空させる方法を発見し、数日間あるいはわずか数時間だった滞空時間を約半年にまで延ばすことに成功した。以前は不可能だと思われていた領域まで。
当初、高度の高い地点で気球から空気が漏れる原因は不明だった。そのためグーグルは極循環期にノース・ダコタ州へチームを送り、寒冷地ではどうなるかを調査した。気球には微調整が加えられ、旧設計のものと同時に打ち上げを行い、その相違を調べることになった。同社は気球を扱う技術者の靴下の厚さによって表面のダメージがいかに抑えられるかという実験までも行った。
「気球に飛び方を教えるのに必要なことでした」「手探りで実験を行うより他に方法はなかったのです」とテラーは語っている。
テラーはどのビジネスにも同じ戦略を採用できると考えている。彼はチームメンバーに対し、様々な問題を様々な角度から考えること、相違点から学ぶことなどを推奨した。また、織り込み済みのリスクから生まれる失敗は新たに何かを知ることができるゆえ、それを確保することについても同様に推奨したのだ。彼はチームの失敗を常に受け入れていると語っている。それは必ずしも成功を期待するということではない。そうではなく、早い段階で多くの失敗を経験することを推奨するということだ。最終的な段階で失敗するよりも、その方が企業にとっては結果的に低コストとなるのだ。
画像提供:
Project Loon画像:Google
その他画像:Owen Thomas
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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。
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