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Google Alphabet: 全ては新しいアイデアを軌道に乗せるために

2015年9月16日(水)
ReadWrite Japan

ゲスト執筆者のクリストファー・ロックヘッドはPlay Bigger Advisorsの設立パートナーである。彼はこの記事をパートナーであるアル・ラマダン、デイブ・ピーターソンと書いている。

「重力が私を押さえつけようとしている」
- ジョン・メイヤー

「グーグルはなぜAlphabetを作ったのか?」というのは正しい質問ではない。

ここで言う正しい質問とは次のようなものだ。なぜグーグルにはソーシャルネットワーキングが欠けているのか? リムジン会社のCareyがUberの設立者がやった様にスマートフォンを使った交通の取り組みを行わないのはどういう事か?Salesforce.comを作って12年後になるというのに、クラウドアプリにSAPが加わるのに2011年までかかったのか?そしてテクノロジーセキュリティーのイノベーションがSymnatecやMacAfee、Bluecoatによってではなくスタートアップ企業によって成し遂げられているのはなぜなのか?

既存の市場が持つ”重力”

これらの問いに対する答えはビジネスにおいて最も強力なある力の中にあると考える。既存の市場が持つ”重力”だ。この重力は企業の重役たちに、顧客の話を聞く、販売員からの要求にこたえる、競合他社の動きに反応する、今の製品の新しい機能を考えるといった、理性的な判断をするように促す。

既存カテゴリーの市場でシェアを争う事を命じられているマネージャーはこれらについてのプライオリティに疑問を持たない。しかし新しい製品やビジネスモデル、市場カテゴリーを発明する段になると、彼らは何も出来ない事が明らかになる。

コンサルティング企業 The Cambridge Groupの上級役員、エディー・ヨーンはHarvard Business Reviewに寄せた記事で以下の様に述べている。

新しいカテゴリーを作り出すということは大企業にとっては規則的なことではなく例外的なことだ。NielsenのBreakthrough Innovation Reportのデータによれば、2008-2010年の間にコンシューマ製品でイノベーションを起こせた著名企業は世界全体の13%にしかならないという。大企業にはリソースや体力、成長に対する高い意思はあるのだが、ほとんどのマーケットリーダーたちは新参企業がイノベーティブな製品やビジネスモデルを作り出すのを横で見ているだけだ。

管理 vs. 創造

グーグル検索ビジネスはいつでも同カテゴリーにおいて最高のものの一つだった。検索ビジネスチームはグーグルがあげる収益660億ドルのほぼ全てを担っている。ComScoreはグーグルは市場シェアの67%を握っており、市場自体も年間26%の拡大を見せているという。グーグルのような大企業の場合、たいていは既存のビジネスを管理し成長させることに注力する。多くの意味において、彼らは事を混乱させないために給料をもらっているということだ。グーグルにとってこの金の卵を産み続ける鶏を延々飼い続けることが賢明なのは明らかだ。

だが問題があるとすれば、(それは昔から高尚な問題だが)グーグルが取り組もうとしている新しいイノベーションはどうするのかということだ。検索ビジネスにおいてグーグルにかかっている”重力”というものは巨大に違いない。

グーグルがAlphabetに変わるというアナウンスをしたブログ投稿で、CEO ラリー・ペイジは「(共同設立者の)セルゲイ・ブリンと私は新しいことを始めるためのビジネスに本気で取り組んでいる」と書いている。

この言葉をそのまま受け取るならば、彼とブリンはマネジメントにおいて、”これから”のビジネスを作り出すために”これまで”のビジネスを分離しているというわけだ。おそらくはグーグル内の起業家精神に富んだ役員達は、検索ビジネスのこれまでの流れというものに囚われてきたということなのだろう。”重力”に捕まった役員たちは週80時間をビジネスレビューや、顧客の要望に答え、販売訪問のために何エーカーも飛び回り、投資家と面談を行うといった事に費やしている。これはオペレーションを回すために必要なことなのだ。

だがこの弊害は、新しい事に敏感な新しいスタッフは、役員たちのこういった仕事にイライラしているかもしてない点だ。アップルやマイクソソフトに遅れをとっているGoogle Now等はこれのいい例だ。次の大きなビジネスを作り上げるために配備されたチームには、時間もなく、目を掛けてくれる人がいるわけでもなく、そして十分な資金の投入もない。こういった重力の力学は新しい製品やビジネスモデル、カテゴリーをデザインしようとする人たちにとって難しい状況を作り出すことがある。特に新しいカテゴリーに全力投球してくるスタートアップと張り合おうというのであればなおさらだ。

グーグル内部でこれらの事が起こっていたのだとしたら、分割戦略をとる事でイノベーションを育むと同時に中核となるビジネスを守ることは懸命だ。

次に来る変革を謳歌する

かつてスタジアムで演奏し、今では田舎のライブのヘッドライナーを務める80年代のロックバンド(Loverboyのファンはまだいるのだろうか?)の様に、テクノロジー業界ではある分野のNo.1であっても、
製品やカテゴリーなどで改革を起こすことを止め、時代にそぐわない様になってしまえば忘れ去られてしまう。ペイジとブリンがこの運命を避けようとしているのは明らかだ。

この観点において、Alphabetの設立は比較的新しい部門を検索ビジネスの重力から解き放ち、彼らが独自に成功する確率を上げるための手段と考えられる。起業家精神に満ちたCEO、トニー・ファデル率いるNestなどはその明らかな例だ。

これが上手くいけば、グーグルは中核ビジネスを成長させつつ、同時に様々な分野での新たなキングメーカーとしての顔を持つことにもなる。これが現実になれば、グーグルはあと数十年、人々の話題に上り続けることだろう。もしそうならなかったとしたら…. まぁどんな企業にとっても注目を集められる”田舎のライブ”はどこかにあるものだ。

画像提供:Philip Cohen

Christopher Lochhead
[原文]

※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。

※本ニュース記事はReadWrite Japanから提供を受けて配信しています。

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