プライベート環境に最適なクラウドストレージとは?EMC ECSアプライアンス(後)
記事の前半では、最近のビジネストレンドからのニーズに向けた、EMC ECSの特徴について概要を述べましたが、後半では、ECSの企業における実際の用途について、解説していきます。
ECSの使いどころ~既存インフラストラクチャのモダナイズへのチャレンジ
ECSを純粋なオブジェクトストレージとしてとらえれば、Webアプリケーション開発者から見て最適なコンテンツ置き場としての利用はすぐに思い付くでしょう。しかし、そのためにはRESTfulなAPIを活用したアプリケーション開発やそのためのスキルも必要ですし、何より一般企業の既存インフラストラクチャをECSに適応させるために、これまでの業務アプリケーションに改変の手間をかけるのも本末転倒な話です。
では、一般企業におけるECSの使いどころとしてはどういったものがあるでしょうか? 実はECSにプラスアルファの製品を組み合わせることで、既存インフラストラクチャに容易に適応させたり、テクノロジーリフレッシュのタイミングでこれまで課題を抱えていたインフラストラクチャのモダナイズ(近代化)が可能です。ここでは、2つの例を紹介しましょう。
ファイルサーバー/ブランチオフィスのモダナイズ(EMC CloudArray+ECS)
ブランチオフィスごとのファイルサーバー管理はよくあるケースですが、たとえば、このようなファイルサーバーはいったい誰が管理しているのでしょう? 実は各ブランチオフィスの従業員が片手間に管理していることはないでしょうか? スキルにバラツキがある担当者に依存し、バックアップも不統一な管理状態でブランチオフィスが被災したとしたら、企業としてデータ保全と復旧に一貫性を保つことができるでしょうか?
かといって、ファイルサーバーを1個所に集中管理させ、各ブランチオフィスから帯域の細いリモート回線でアクセスする構成ではどうでしょう? データの集中管理は実現するかもしれませんが、日常業務に使用するデータアクセスにとてつもない時間がかかり、業務生産性とともに利用者の満足度も大きく低下するでしょう。実は、このようなファイルサーバー環境のモダナイズにクラウドゲートウェイとECSの組み合わせは有効なのです。
クラウドゲートウェイは、一種のプロトコル変換の仕組みを提供するもので、EMCにはCloudArrayという製品があります。CloudArrayはデータの格納先としてECSや主要パブリッククラウドサービスと連携可能です。一方でユーザーに対しては、NFS/CIFSおよびiSCSIなど従来のプロトコルを提供するので、ユーザーはこれまでのストレージとまったく変わらない使い方で、安価なクラウドストレージにデータを格納できます。また、CloudArray自身にローカルキャッシュも設定できるため、CloudArrayとクラウドストレージ間の回線が細くても、一定のパフォーマンスを確保できます。
もちろん、CloudArray経由でECSに格納されたデータは一元管理され、また、ECSを複数サイトに配置すれば、ジオアーキテクチャにより、データは自動的に遠隔地にレプリケーションされます。ブランチオフィスにおけるデータの分散管理と回線帯域問題の課題、そしてブランチオフィス被災に伴う業務継続性の課題が一気に解決できるのです(図1)。
さらに、昨今のBYOD普及により、各種モバイル端末からの情報共有の要求も高まっています。この要求にもECSは簡単に応えることができます。たとえば、ファイル共有のソリューションであるEMC syncplicityを組み合わせれば、Android、iOS、WindowsのさまざまなOSのデバイスとのファイル共有がインターネット越しに実現できます。このような芸当は、なかなかNFSやCIFSといったNASだけで実現が大変なのは容易に理解できるかと思います。
最終バックアップ先としてのクラウドの利用(EMC CloudBoost+ECS)
ここ最近のバックアップを考えると、テープではなくディスクにバックアップを取ることはもはや珍しいことではなくなりました。ディスクそのものの価格も下がっていますが、重複排除や圧縮の処理能力が飛躍的に向上し、テープ並みの容量を実現しながらも高速で確実なリストアが可能になっているからです。
とはいえ、災害対策の観点からは、バックアップデータを別の場所に移すことのできるテープの可搬性にもまだまだ捨てがたいものがあります。ただ、最終バックアップ先としてテープを考えたときに、バックアップのたびに生じるテープ掛け替え作業などの人件費、テープのオフサイトロケーションへの輸送費や外部保管費などのランニングコストは無視できないものがありますし、もう1つ不安な点は、テープそのものが持つ「戻らないかもしれない」という不確実性です。
たとえば、この最終バックアップ先をECSに置き換えるというアイデアはどうでしょう? D2D2TならぬD2D2C(Disk to Disk to Cloud)による課題解決です。実はこれもEMC CloudBoostという製品とECSを組み合わせれば実現できるのです。
CloudBoostは、AvamarやNetworkerといったEMCの主要バックアップソリューションと連携可能なコネクタを提供しており、これらのバックアップデータを効果的に圧縮、容易にクラウドストレージ上に移動させることが可能です。もちろん、遠隔サイトにもう1台ECSを設置すれば、ジオアーキテクチャによりデータは自動的にレプリケーションされ、これまでのテープの掛け替えやオフサイトへのデータ移送の手間も完全に自動化されます。
ここまで紹介してきたように、クラウドストレージの導入は無縁と思われていたインフラ管理者、インフラ企画担当者にとっても、実はECSの「頭」に何かを据えることで既存インフラストラクチャとのスムーズな連携や統合を実現するソリューションがあり、より経済的で社内競争力の高いITサービスができることを多少はご理解いただけたのではないでしょうか?
また、欧米ではさまざまなISVベンダーから認証済みのECSとの統合ソリューションが発表されています。AWSがクラウドインテグレーターとのパートナーエコシステムで成功しているように、ECSもこのようなパートナーモデルが一般企業へ利用の裾野を拡げるうえで有効と考えています。
このパートナーモデルの育成は、日本市場ではこれから注力していく部分ではありますが、もし、この記事をお読みになり、興味を持たれたパートナー様、ISVベンダー様がいらっしゃれば、ぜひご相談いただければと思います。