Part5 ストレージ・データ保護機能の活用
データ保護の重要性と課題
企業のデータは増加傾向にあり、ストレージの追加を余儀なくされている。一方で、IT予算を削減しなければならない。この状況の下、IT部門の管理者を最も悩ませる問題が、データのバックアップである。IDCによる2005年以降の調査結果を見ると、ストレージ管理の課題として常に上位に挙げられているのが「バックアップの効率化」である。この情報からも、バックアップが長期に渡って問題となっていることが良く分かる(図5-1)。
図5-2●国内企業が抱えるストレージ管理課題の上位5項目(2005年~2010年) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
問:あなたの会社のストレージ管理における課題は何ですか?
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Source:IDC Japan, 2011年2月「国内ディスクベースデータ保護市場2010年の推定と2011年~2014 年の予測」(J11440102) |
従来、サーバが分散した環境では、サーバごとに独立して個別にバックアップを取っていたため、管理も煩雑化していた。 しかし、現在はビジネスを取り巻く環境の変化に合わせ、企業経営にスピードが求められている。事業継続を意識した効率的なデータの保護と、迅速なリストアを可能にする仕組みが要求されている。 それには、データ保護の目的や用途によって、ストレージの機能やバックアップ・システムを適切に使い分けなければならない。
確実にリストアできることが大切
バックアップの目的は、データの保護である。しかし、単にデータを保管しておくことが目的なのではない。過去のデータが必要となった際に、データが読み込めなければ意味がない。大切なデータを損失してしまった時に確実にリストアできるために、バックアップを取得しているのだ。 バックアップ先のストレージは、これまではテープ・メディアが主流だったが、リストアする時間を考えると、テープ・メディアよりもディスク・ベースのバックアップ(バックアップ専用ストレージ装置)の方が、昨今のビジネス・ニーズに適している。
統合でバックアップを効率化
分散しているサーバを統合し、ストレージを集約すれば、バックアップも一元的に行えるようになる。また、データの統合によって、これまで分散していたバックアップの仕組みも統合化できる。 例えば、VNXeでファイル・サーバを統合した場合、ファイル・サーバを効率的にバックアップする標準技術であるNDMP(Network Data Management Protocol)を利用できる(図5-2)。
図5-2●NDMPバックアップの仕組み |
VNXeは、NDMPプロトコルをサポートしており、Windows(CIFS)やLinux(NFS)の環境において、プロトコルに依存しないネットワークベースのバックアップが可能。 |
CIFSやNFSといったプロトコルに依存しないバックアップが実現できる。 また、バックアップを複数世代、かつ長期間保持しようとすると、膨大な容量のバックアップ・ストレージが必要になってしまう。かつてのテープ・メディアを利用したバックアップの仕組みでは、増加傾向にあるデータに対して限界がある。こうした背景からも、最近ではEMCの「Avamar」など、重複除外機能を搭載したバックアップ・ストレージが主流となりつつある。 重複除外機能を搭載したバックアップ・ストレージを利用すると、データ量が膨大で長期間保管しなければならないケースでも、最大で数百分の1程度にまでバックアップ・データ量を削減できる効果が期待できる。バックアップにも最新のストレージ機能を利用するなど、万全な体制を整えておきたい。
スナップショットの活用
用途に応じて、ストレージのスナップショット機能も活用したい。スナップショットは、テープ・メディアへのバックアップと異なり、過去のある時点の状態へ、いつでも迅速にアクセスできる。このため、ファイル共有ボリュームにスナップショットを適用するケースが多い。エンドユーザーにスナップショットを開放しておき、ユーザー自身で自由にデータを復元できる環境を用意する企業も多い。尚、VNXeのスナップショット管理は、非常に簡単であり柔軟性も高い(図5-3)。
図5-3●VNXeのスナップショット設定画面 |
スナップショットは任意のスケジュールで作成できる。また、作成サイクルを定めた推奨ルールセットがあらかじめ用意されている。 |
スナップショットのもう1つの用途は、「バックアップ向けの静止点確保」である。データベースなど、アプリケーションによっては、データをバックアップする際に、データの一貫性を保つことが望ましい。ここで、スナップショットが活用されている。 バックアップ・ソフト側のオンライン・バックアップ機能によってストレージのI/Oを一時的に停止させた状態で、ストレージ側でもボリュームの静止点を確保すると、一貫性を維持したバックアップが取得できる。 EMCでは、このようなアプリケーションのバックアップ処理を自動化するレプリケーション・ソフト「Replication Manager」を提供している。Replication ManagerがアプリケーションとVNXeのスナップショット機能と連携することで、バックアップ運用の効率化を実現する。
レプリケーションの活用
バックアップとは異なり、レプリケーションの目的は業務継続にある。ストレージ・データの複製を連続的に実施することで、機器の故障や被災などによってファシリティ(設備)が利用できなくなった場合でも、データを継続して利用できるようにする。特徴は、RPO(目標復元時点)とRTO(目標復旧時間)が比較的短い点である。 VNXeは、装置内および装置間のボリューム・コピーが可能で、運用も非常に簡素化できる(図5-4)。
図5-4●VNXeのリモート・レプリケーション構成 |
2台のVNXe同士の間で、データをレプリケーションすることができる。遠隔地同士に配置することで、WANを介したリモート・レプリケーションが可能になる。 |
昨今、事業の継続性が強く求められるようになり、ストレージのレプリケーションを導入する企業が増えている。現在もテープ・バックアップの手法だけに頼って、課題を抱えている企業には、ストレージ・ベースのバックアップ手法や、レプリケーションを活用した事業継続性の高い環境への移行を推奨したい。