データベースの運用と管理の基本

2009年10月27日(火)
藤本 壱

分散データベース

大規模なデータベースでは、大量のデータを高速に処理する必要があります。しかし、1台のコンピューターですべてを処理しようとすると、処理速度が追いつきません。また、1台のコンピューターにすべてのデータを集めていると、そのコンピューターにトラブルが発生した場合データベースにアクセスできなくなります。

処理能力や安全性の問題を解決することを狙って、データベースを複数のコンピューターに分けて管理する手法も一般的になっています。このような仕組みのことを、「分散データベース」と呼びます。

分散データベースには、大きく分けて「垂直分散」と「水平分散」があります。垂直分散では、データベースを管理するコンピューター(サーバー)に主従の階層関係を作り、主と従の間でデータをやり取りしながら動作します。一方の水平分散では、サーバー間に主従の関係はなく、各サーバー同士がデータをやり取りしあって動作します(図3-1)。

垂直分散/水平分散のどちらにおいても、1つのテーブルのデータが複数のサーバーにまたがって配置されることがあります。その分け方には、「垂直分割」と「水平分割」があります。

垂直分割とは、テーブルを列で分割することを指します。テーブルの列を使用頻度などで分類し、似た性質がある列同士を個々のサーバーにまとめます。

一方の水平分割とは、テーブルを行で分割することを指します。性質が似通った行ごとにテーブルを分割します(例:各支社に関する行ごとにまとめてテーブルを分割する)。これにより、分割後の各テーブルへのアクセスをうまく分散することができます。

安全性を高めるためにデータベースを分散することもあります。あるデータベースの複製を複数のサーバーに分散しておき、そのうちの1台のサーバーにトラブルが発生した際に、残りのサーバーで運用を続ける手法です。この手法のことを「レプリケーション」(Replication)と呼びます。

Webアプリケーションとデータベース

データベースはさまざまな分野で使われていますが、現在では「Webアプリケーション」とデータベースを組み合わせるアーキテクチャーが多いです。

Webアプリケーションとは、WebサーバーとWebブラウザを使って利用するアプリケーションを指します。ブログやSNS、ショッピング・サイトなどをはじめとして、多くの種類のWebアプリケーションがあります。

ほとんどのWebアプリケーションでは、あらかじめデータを保存しておいて、そのデータを基にして各ページを出力する仕組みが採られています。例えば、ブログの場合、記事やカテゴリの情報をデータベースに保存しておき、そのデータを基にしてブログの各ページを出力しています。

Webアプリケーション自身が独自の方法でデータを管理することもありますが、多くの場合は、データ管理をRDBMSに任せます。Webアプリケーション側では、そのアプリケーションの動作に必要なロジックだけを持つ場合が多いです。

このようなWebアプリケーションでは、ユーザー・インターフェースはWebブラウザ(とWebサーバー)が担当します。Webブラウザとサーバーが通信し合って動作します。一方で、サーバー側の要素はデータベースとWebアプリケーションの2つの層に分かれます。

このため、Webアプリケーション全体が3つの層に分かれるかたちになります。このようなシステムのことを、「三層クライアント・サーバー・システム」(3層C/Sシステム)と呼びます(図3-2)。また、ユーザー・インターフェース部分のWebブラウザ(とWebサーバー)を「プレゼンテーション層」と呼び、データを格納するRDBMSは「データ層」、ロジックを担当するWebアプリケーション本体は「アプリケーション層」と呼びます。

今回で、4回にわたって続けてきた連載「データベース基礎中の基礎」は終わりです。リレーショナルデータベースとは何かから、SQLの使い方、データベースの運用管理まで解説してきましたが、ご理解いただけましたでしょうか。データベースはITシステムの要と言える技術要素なので、今回の連載をきっかけに慣れ親しんでいただけると幸いです。

【参考文献】
藤本 壱『これだけは知っておきたい データベースの常識』技術評論社(発行年:2009)

1969年生まれ。神戸大学工学部電子工学科卒。ソフトメーカー勤務後、フリーライターとして独立。現在では、パソコン関係およびマネー関係の書籍を中心に執筆活動を行っている。ブログ「The blog of H.Fujimoto」は、Movable TypeやWordPressの情報を中心に毎日更新している(http://www.h-fj.com/blog/)。

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています