気づいていますか?不調のサイン
管理職、管理監督者は「ミニ専門家」になる必要はない!
ラインケアにおいて、特に管理監督者に求められることは、部下の変化に気づき早期に対応することなのですが、それはどういうことでしょうか?
まず部下の普段の様子を理解し「変化」に気づくことが大切です。「変化」とは、例えば図3に示すような、出勤状況や事故、仕事のミス、パフォーマンスの低下など、普段の行動とのズレです。これを「事例性」といい、職場のメンタルヘルスの問題ではこの「事例性」を重視します。
筆者の所属するメンタルヘルス・リサーチ&コンサルティングが主催する管理監督者セミナーを受けられた方の中には、「メンタルヘルスの対応は難しそうだ」「病気の知識もないのに、早期発見などと言われても困る」「管理職にばかり負荷がかかる」と言う方がいます。
逆に、メンタルヘルスについての知識を得て、元気のない部下について「アイツはうつ病に違いない」「○○症状があるからパニック障害かもしれない」と、医師でもないのに診断してしまう方もいますが、これはラインケアではありません。また、過去にメンタルヘルス不全の部下のフォローを経験し、自信満々の方も時々見かけますが、これも非常に危険です。
職場のメンタルヘルスにおいて管理監督者に必要なのは「事例性」の把握です。「事例性」は勤怠に影響がでるなど仕事のパフォーマンスに影響するできごとですので、管理監督者として把握をし、対処しなければならない当然の問題です。
「病気の発見をしなければ」と力んだり、メンタルへルスの「ミニ専門家」を目指したりすることではありません。病気かどうかの判断は産業医や主治医などの専門家が行います。「事例性」の把握をしたら、専門家や相談機関との連携が大切です。決して管理監督者が1人で問題を抱えることのないようにしましょう。
健康的な職場づくりのひと工夫
メンタルヘルス疾患の原因はいろいろあります。長時間労働や仕事上の大きなストレス、プライベートの問題など、個人差があるのですべての原因を職場側が排除することは難しいと言えます。
しかし、何か変化があったときにすぐ相談できる窓口の設置や相談しやすい雰囲気の職場を作るということは職場や管理監督者の努力によって可能なのではないでしょうか。
「メンタルへルスの問題は個人の問題なので自分には関係ない」「職場の雰囲気作りについて考える必要はない」、または「わかっているけど、忙しくてそれどころじゃない」と思っている管理監督者の方もいるかもしれません。また、管理監督者自身に余裕がないことも少なくありません。立場上、弱音を吐くことができないので無理をしてギリギリの状態で1日1日過ごしている方もいるかもしれません。自分のペースを守り、自分で不調に気づいたら早めに専門家に相談するようにし、1人で頑張らないようにしましょう。
健康的な職場は、管理監督者の負担も減る職場ではないかと思います。一度、「健康的な職場づくり」について、ゆっくり考えてみることをお勧めします。部下の皆さんの意見も聞いて検討してみると新しい発見があるかもしれません。
では、健康的な職場とはどんな職場でしょうか。いろいろな考え方があると思いますが、ここではコミュニケーションが活発な職場、相談しやすい雰囲気があり、また個々の変化に皆が気づいたときは声かけが自然にできる職場と考えます。息苦しさのない風通しのよい職場と言えるでしょう。
何より基本になるのは「あいさつ」です。毎日のあいさつを積極的に行うことや、ミーティングや話し合いの場を設け、率直な意見交換ができるようにすることが大切です。それから協働的であるかということもポイントになります。後輩や部下に業務の指導を行っているか、個々が孤立して孤独感を味わうような状態になっていないか、そのあたりもぜひ見直してみましょう。
なお、今回の記事の執筆にあたっての参考文献を以下にまとめました。
・「活き活きとした職場をつくるメンタルヘルスマネジメント」(著者:高橋修、松本佳樹 発行:産業能率大学出版部)
・「部下の職場復帰を成功させるために」(監修:山本晴義 発行:アスパクリエイト)