上手にストレスとつきあう秘訣

2008年7月11日(金)
三上 京子

IT業界はとってもストレスフル!

 IT業界で働くためには、言うまでもなく専門知識や経験が必要です。しかしどんな業界、どんな仕事でもそうですが、意欲的に取り組むため、創造的なアイデアを生み出すため、予期せぬトラブルに対処するために、何より大切なものは「心身の健康」なのです。しかしながら、IT業界を取り巻く現状は、ほかの業界に比べてもかなり厳しいものがあるようです。まず、その理由を考えてみましょう。

 まず、1つ目は「技術革新のスピードの速さ」です。技術は日進月歩で変化しているため、最新動向や技術についていくには、常に勉強が欠かせません。

 2つ目が「慢性的な人員不足」です。コスト重視のため、最少人数でプロジェクトが計画されていることが多いのが現状です。欠員が出ても補充がなければ、メンバーの負担はさらに増えていきます。

 3つ目が「タイトなスケジュール」です。企画自体が未決定のまま進行し、途中で内容が変更になったにもかかわらず、納期は変わらない、ということもしばしば発生する事例です。結果として納期が大変厳しくなります。

 4つ目が「恒常化した残業」です。3つ目にあげたことも関連しますが、当初から間に合うはずのないスケジュールのプロジェクトも多く、昼夜週末を問わず仕事に追われ、残業が恒常となっている会社も珍しくありません。

 5つ目が「客先からのクレーム」です。納期遅れにバグ発覚など、客先からのクレームがあれば深夜を問わず対応が必要になります。

 6つ目が「コミュニケーションの希薄さ」です。プロジェクトや開発フェーズごとにメンバーが入れ替わる、あるいは客先常駐などにより、同僚や上司と顔を合わせる機会がなく、気軽に相談ができない状況も多くあります。

 以上はどれも一般的なIT企業やエンジニアによく見受けられることばかりです。つまりIT業界で働くためには、多くの慢性的なストレスがあるということを自覚し、上手にストレスと付き合いながら対処していかなくてはなりません。

そもそもストレスって?

 もともと「ストレス」という言葉は、物理学の分野で使われていたもので、物体に力が加わった時に生じるひずみに対し、反発する状態を指して使われていた言葉でした。この「ストレス」という言葉が現在のように使われるようになったのは、1936年にカナダの生理学者ハンス・セリエ博士が「ストレス学説」を発表したことによって始まったのです。

 心理学においては、生体に何らかの反応を起こさせる刺激・要因を「ストレッサー」と言い、この「ストレッサー」が加わることによって、生体に生じる反応を「ストレス」と言います。現在私たちが日常的に使う「ストレス」という言葉は、心理学におけるストレスの概念のストレッサー(ストレスの原因)とストレス反応(ストレッサーが加わった結果)の双方を指しているのです。

 ところで、「ストレス」という言葉には、一般的にマイナスのイメージがあります。しかし、完全にストレスのない職場や生活環境はありえませんし、また望ましいことでもありません。実は「ストレス」にも「良いストレス」と「悪いストレス」があるのです(図1)。

 生産性の観点から見ても、全くストレスのない状況では生産性は伸びません。逆に、過度なストレス状況にあると生産性が落ちるのは容易に予測できます。

 「ストレスレベルが高すぎても低すぎても生産性は落ちる」(ヤーキズ・ドットソンの法則)と心理学の分野では言われています。「適度なストレスは人生のスパイス」と言われるように、人生には「適度な」ストレスが必要であり、適度なストレス状態は人生をより豊かにしてくれる、という点も忘れるべきではないでしょう。

株式会社メンタルヘルス・リサーチ&コンサルティング
保健師・産業カウンセラー。自動車メーカーを皮切りに、大型小売業、コンサルタント会社IT企業などで産業保健スタッフとして勤務。そこで多くのビジネスマンのメンタルヘルスの対応や健康管理業務に携わる。2007年より現職。経験を生かし、幅広い業務を担当する。http://www.mhrc.co.jp/

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