気づいていますか?不調のサイン

2008年8月8日(金)
五十嵐 良雄

部下の変化に気づくための工夫

 管理監督者は日ごろから部下たちと接しているので、普段の部下の働く様子や、部下の性格をある程度知っています。それと同時に部下の業務内容や業務環境を調整できる立場にあるため、職場のメンタルヘルス対策のキーパーソンと位置付けられています。部下の変化に気づくためには、普段からのコミュニケーションが大事です。

 では、部下とのコミュニケーションを円滑に図るためには、どのような工夫が必要なのでしょうか。部下の話を聞くシチュエーションの選び方として、話を聞く時間や場所を選び間違えては逆効果です。どんなシチュエーションを選ぶとよいのか、注意したいポイントがいくつかあります。

 1つ目が「プライバシーを尊重して聴く」ということです。部下の話を聞くときは、病気や個人的な事柄など、さまざまなプライベートな話を聞く可能性があります。本人の了解なく話を他人に話したりすることは言うまでもなく厳禁ですが、プライバシーに配慮した場所を選ぶことも重要です。

 2つ目が「話は就業時間内にする」ということです。不調が疑われる部下は、就業時間内に業務をするだけで精一杯の状態かもしれません。そういった場合、就業時間外に話を聞く場を設けることは、症状を悪化させる原因になりかねません。IT業界の場合、客先で仕事をしている場合もあるでしょう。そういった部下に対しても定期的にスケジュールを調整し、話を聞く時間を設けるなどの工夫をするとよいでしょう。

 3つ目が「話を聞くときはノンアルコール」です。プライベートな内容に及ぶ場合、ついついお酒の席を選んでしまいがちですが、アルコールの力で無理やり話を聞き出すことにもなりかねません。また、管理監督者の愚痴や説教、ストレスの解消に終わってしまったり、最悪の場合聞いた話の内容を忘れてしまうこともあります。また、もし部下が何らかの心の病で通院治療を受けている場合、服薬の関係上飲酒を禁止されていることもあります。

職場におけるメンタルヘルス対策

 すでにご存じの方も多いと思いますが、職場におけるメンタルヘルス対策として、厚生労働省は2000年「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」の中で、図2に示す4つのケアを推進しており、これらの4つのケアで取り組んでいくことが問題解決につながると考えられています。

 管理監督者によるケアをラインケアといいますが、具体的には「1.職場環境などの問題点の把握と改善」「2.個々の労働者への配慮(労働の状況を日常的に把握、労働者の能力、適性および職務内容に合わせた配慮など」「3.労働者に対する相談対応(産業保健スタッフや事業外相談窓口への相談、受診を勧めるなど)」があります。ラインケアのポイントは後ほど説明します。

 最近はメンタルヘルス疾患で休職される方も多くなりました。2004年に厚生労働省から発表された「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、職場復帰支援の内容が示されています。こちらも産業保健スタッフなどと連携しながら取り組んでいくことが大切です。

 職場のメンタルヘルスの問題は、本人が1人で頑張ってもうまくいきません。管理監督者の理解や協力が必要です。しかし管理監督者が責任を感じ、1人で問題を抱えたり、本人と管理監督者の2人だけで相談したりして、問題解決していくものでもありません。

 例えば、本人の病気のことを人事には内証にして、勤怠に影響がでるほど悪化している状態の社員を管理監督者の責任の範囲で勤務管理をするなど、本人のために良かれと思って行動したことが結果的に悪いものになってしまうケースも少なくありません。産業保健スタッフや社外の資源と連携することでスムーズに対応できる場合が多いうえ、管理監督者自身の負荷を軽減することもできます。

 次に、管理監督者に求められる対応とは何なのか考えてみましょう。

株式会社メンタルヘルス・リサーチ&コンサルティング
株式会社メンタルヘルス・リサーチ&コンサルティング所長。精神科医、産業医。復職支援専門リハビリテーション施設を併設している医療機関「メディカルケア虎ノ門」の院長として、ビジネスパーソンのメンタルヘルスに精通している。うつ病リワーク研究会代表世話人。http://www.mhrc.co.jphttp://www.medcare-tora.com

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