コミュニケーションスキルを磨こう
ITエンジニアに求められるコンピタンシーとは?
今回はITエンジニア、特にプロマネなど上流の仕事をしている人に求められるスキル、いわばコンピタンシーとは何なのかについて考えていきたいと思います。
まずコンピタンシーという言葉、すでにご存じの方も多いと思いますが、「高業績者に共通してみられる行動特性」のことです。ハーバード大学のD.C.マクレランド教授らが、アメリカ国務省から「学歴や知能が同等レベルの外交官の業績格差について」という調査依頼を受け、「業績の高さと学歴や知能はさほど比例することなく、高業績者にはいくつか共通の行動特性がある」と回答したのが始まりとされています。
高業績者つまりハイパフォーマーと呼ばれる外交官に共通の行動特性とは、以下の3つです。
・異文化に対する感受性が優れ、環境対応力が高い
・どんな相手にも人間性を尊重する
・自ら人的ネットワークを構築することが上手である
上記の3点を見て、皆さんはどのように感じましたか?「環境適応力」とはいろいろな状況や環境に適応する能力が高いということですから、自分の慣れ親しんだ環境から新しいメンバーや新しいプロジェクトに変わっても、今までの状況ややり方に固執することなく、上手に適応できる能力と言えるでしょう。
また「人間性の尊重」というと難しく感じられるかもしれませんが、要するに自分の周囲の人を人として認め、その人の意見に耳を傾けようとする姿勢と言えます。
最後の「人的ネットワークの構築」は、「自ら」というところがポイントです。いつも同じメンバーに囲まれ、同じ行動範囲から出ようとしない人がいますが、そういう状況からは同業者が思いつかないようなとびぬけた発想や企画は生まれにくいものです。
もうおわかりの方も多いと思いますが、上記の3点は外交官だから必要だったわけではなく、どんな仕事にも必要とされるスキルと言えるのではないでしょうか?
図1はプロマネなど上流の仕事をする人材に求められる、テクニカルスキル以外のビジネススキルともいうべきものです。
なぜコミュニケーションスキルなのか?
上流の仕事をしていく上では技術や経験は言うまでもなく、プロジェクトのメンバーに共有すべき目標や課題を適切に設定し、メンバーのモチベーションを高め、顧客のニーズを把握しつつ問題点を見いだし適切に対処する能力が求められます。
それらを行っていくためにもっとも基本となるのがコミュニケーションスキルです。なぜならどんなに技術や能力があっても適切に「誰に、何を、どういうタイミングで、どのような方法で」を判断して伝えることができなければ、結果は生まれないからです。
平成16年1月に厚生労働省職業能力開発局から発表された「若年者の就職能力に関する実態調査」によれば、企業が採用に当たり重視する能力に関して「コミュニケーションスキル」が1位となり、次いで協調性や自己表現力、意思疎通などのスキルが重視されているそうです。
「仕事や職業生活に関する不安・悩み・ストレス」に関する厚生労働省の調査結果でも、職場の人間関係にストレスを感じるという意見が1位になっています。このことから、現代社会で働いていくには、人間関係を良好に保つコミュニケーションスキルを身につけることが何より重要と言えるでしょう。