これってうつ病?それともなまけ?
うつ病って本当はどんな病気?
うつ病とは気分が落ち込んだ状態のことを指すのでしょうか?
気分が落ち込んでいる状態を抑うつ状態と表現しますが、実は一般的にいわれる「抑うつ状態」と「うつ病」は必ずしも同じことを指していません。「抑うつ状態」はその時の心や体の状態を指しているのに対して「うつ病」とは病名を指しているのです。
抑うつ状態とは、以下のような状態を指します。
・憂うつな気分。もの悲しい気分。将来への希望が持てない。
・意欲が低下し、何をするにもおっくうになる。人づき合いも面倒になる。
・思考力が低下し集中力がなくなる。判断力の低下。
・不安、焦燥感が増す。イライラしやすい。感情が不安定になる。
抑うつ状態があるからといって必ずしも「うつ病」ではありませんが、これらの症状が2週間以上毎日続く場合は医師に相談しましょう。
ではここでうつ病を簡単に説明しましょう。
人間の脳は約千億個の神経細胞からできています。そして脳内での情報伝達(命令や指令)は、神経伝達物質の仲介により、細胞から細胞にスムーズに伝えられています。うつ病になると、この神経伝達物質のうちセロトニンやノルアドレナリンという物質のバランスが崩れ、足りなくなってしまい、情報が伝わらなくなります。そのため、気分が落ち込んだり意欲が低下したりする、うつ病の症状が現れると考えられています。うつ病は「気のゆるみ」でもなければ、「気合が足りない」「なまけ」の状態でもないのです。
図2はうつ病の早期にみられる症状です。
今どきのうつの特徴とは:若い世代に多い現代型
うつ病はどんなタイプの人がなりやすいのでしょうか
実はうつ病の人には特徴的な考え方があります。それは、物事を悲観的にとらえやすいということです。1つの失敗から「何をやってもダメだ」と結論づけてしまいがちです。またコミュニケーションが苦手で自分の意見を伝えることができなかったり、他人の評価を気にしすぎて悩むなど、対人関係においてストレスを抱えやすいタイプは、うつ病になりやすいと思われます。
また最近のうつ病の傾向として、中高年世代の従来型と若い世代の現代型の2つのタイプに分けることができる、ということがあります。
従来、うつ病になりやすい人は、仕事熱心、秩序を愛し配慮的できちょうめんな人と考えられていました。従来型のうつ病は、まじめで会社に忠実な中高年が発症し、罪悪感が強いのが特徴的です。
しかし、最近増加している若い世代のうつ病は、自己愛的で、社会のルールをストレスと感じ、仕事熱心ではない傾向を持つタイプで、現代型うつ病やディスチミア親和型うつ病などといわれています。もともとやる気に乏しく、熱心に何かに取り組んで認められた経験のない人が多いのも特徴です。友人とはうまくいくが、仕事のノルマや上司との関係など厳しい社会生活で簡単に壁にぶつかり、うつ状態に陥ってしまいます。
主な訴えは「やる気が出ない」で、会社や上司、社会が悪いから自分が病気になったと周囲を非難する他罰的な傾向があります。またうつ病の診断にも協力的で、自ら診断書を要求し、仕事を休むことへのちゅうちょもあまりありません。
しかし、薬物療法が効果的な従来型のうつ病と比較して、現代型のうつ病は抗うつ剤が効きにくく慢性化しやすいといわれます。現代型のうつ病は、どこまでが生き方でどこからが症状なのか分かりにくいのです。
九州大の神庭 重信教授(精神医学)は現代型うつ病の治療について「その人の性格や対人関係能力などを把握し、役割意識を持つことへの嫌悪感を取り除くことが必要。物事がうまくいかないのはうつ病のせいではなく、生き方に問題があるのだと気づくことが必要」と指摘しています。
次はうつの予防についてお話ししましょう。