クラウド・サービス時代到来、運用が変わる

2009年12月3日(木)
加藤 清志

クラウド・サービス時代の到来

ここ2、3年で、「SaaS」や「PaaS」といったキーワードを耳にする機会が増えています。いずれも共通して言えることは、「ソフトウエアやサーバー機器などのITリソースを、“ネットワークを介したITリソースの雲”を通じてサービスとして利用する」ことにあり、これらは一般的に「クラウド・サービス」と呼ばれています。

「クラウド・サービス」を活用することで、自社にインフラがなくても、使いたい時に使いたい量のリソースを、約束されたサービス・レベルで、適切なコストとエネルギーで利用することが可能になります。このため、利用者は、自社システムの構築/維持運用コストを削減できるとともに、将来のビジネス変化に俊敏かつ柔軟に対応できるというメリットを享受できます。

このような背景から「クラウド・サービス」は注目を集めていますが、近年に入り成功事例も出てきていることから、クラウド活用が具体化してきています。今後、その有効性が認知されるにつれて企業活動の根幹を担う機会が増えていくことが予想されます。そして、企業活動での「クラウド・サービス」の重要度が高まるにつれ、安定したサービス提供を維持するための基盤となるデータセンターの役割が重要になってくることが考えられます。

今回から4回にわたり、企業がクラウド・サービス活用を進める上で、基盤となるデータセンターの運用管理に求められる要件とその実現手法を紹介します。特に、サービスの安定稼働を支える上でシステムのダウンタイムを最小化するために重要なポイントになる「障害分析手法」について、従来の技術では対応できない課題を解決する最新技術について紹介します。

まず、1回目は、クラウド・サービス活用の背景からデータセンター運用に対する要件、その実現手法として統合運用管理ソフトの活用例を紹介します。

企業システムへの活用を加速させる「プライベート・クラウド」

一般に、クラウド・サービスというと「Google」や「Amazon」といったエンドユーザー向けの「パブリック・クラウド」を最初に想像するのではないでしょうか。

「パブリック・クラウド」で提供されるスケーラビリティは非常に魅力的ですが、自社内の基幹システムを「パブリック・クラウド」へ移行することには、まだまだ不安を抱いている企業が多い状態です。

その要因として、クラウドに自社のデータを預けることに対するセキュリティ/コンプライアンス面での不安感が挙げられます。ミッション・クリティカルな業務に対するサービス・レベル保証(SLA)もまだ十分なレベルに達していないことも要因の1つです。

そこで今、これらの「パブリック・クラウド」での不安要素を取り除いた利用形態として、「プライベート・クラウド」が期待されています。

プライベート・クラウドとは、企業や企業グループ内に散在するITシステムをデータセンターに集約し、社内ネットワーク経由で必要な時に必要なだけのリソースをクラウド・サービスとして利用する形態を示します。

インフラを所有すること自体は従来と変わりませんが、それまで各部署や拠点で個別最適されていたITシステムを集約することによって、ITコストの全体最適を実現することが可能になるのです。また、インターネットを介さないことからセキュリティ面での不安も少なく、コントロールできるという安心感があります。

今後多くのITシステムは、パブリック・クラウドの活用と並行して、基幹業務に関してはプライベート・クラウドとして企業内の「クラウド指向データセンター」へと移行していくことが予想されます。

NECでは、このような時代の流れに先駆け、ITシステム改革の一環として、グループ会社の基幹システムをデータセンターに統合した大規模なクラウド活用を実践しており、集中運用による大幅なTCO削減を見込んでいます。

次ページからは、クラウドを指向したデータセンターに要求される運用管理要件をあぶりだすとともに、その実現方法を探ります。

NEC 第一システムソフトウエア事業部 マネージャー
1991年、日本電気株式会社に入社。研究所でのヒューマン・インタフェース技術、ユビキタス・コンピューティング技術、自律運用管理技術などの技術研究を経て、2007年から運用管理製品の開発に従事。性能分析エンジンなど新技術を取り入れ、クラウド指向データセンタに向けた運用管理製品の設計開発を進めている。

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