日本マイクロソフト、Microsoft Tech SummitでHoloLensやAzure Stackなどを紹介

2016年11月8日(火)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
日本マイクロソフトがIT技術者向けのカンファレンス、Microsoft Tech Summitを開催。日本でのHoloLensの投入やAzure Stackの紹介などを行った。

2016年11月1日、日本マイクロソフトは、お台場にてMicrosoft Tech Summitを開催した。IT技術者向けのカンファレンスとして1100名を超える登録者を集め、2日間に渡り企業向けソリューションの解説、トレーニング、展示などを行った。今回のカンファレンスは、USで行われたカンファレンスの日本語での解説という位置付けだが、ニューストピックとしてはMicrosoftが開発するMixed RealityのヘッドマウントデバイスであるHoloLensの、日本国内での展開が発表されたことが挙げられる。ちなみにマイクロソフトは、HoloLensを「Windows 10を搭載した自己完結型ホログラフィックコンピューター」と称している。

Digital Transformationを支える3本の柱

カンファレンスの最初に始まったキーノートスピーチでは、デベロッパーエバンジェリズム統括本部長の伊藤かつら氏が登壇し、このカンファレンスの位置付けを説明するところから始まった。次にマイクロソフトテクノロジーセンターの責任者、澤円氏による企業向けITを使ったビジネスの変革、俗に言うDigital Transformationに必要な要素に話を進め、「セキュリティ」、「システム管理」、「最新のイノベーション」の3つの柱をデモを交えて解説した。

最初の柱の「セキュリティ」のデモでは、本社のチーフセキュリティアドバイザーであるJonathan Trull氏が登壇し、Windows 7とWindows 10とのマルウェアに対する耐性の違いを示すデモを行った。ここで「古いバージョンのWindowsは危険である」ということを、マイクロソフト自身が再度明確に宣言したということだろう。またOSからユーザーIDやパスワードなどを抜き取るマルウェアを使ったデモでは、Windows 7なら抜かれてしまう情報が、Windows 10では抜き取り不可能であることを見せ、ここでも最新OS、つまりWindows 10への移行を促したと言えよう。

澤円氏とデモを行ったTrull氏

澤円氏とデモを行ったTrull氏

次の柱である「システム管理」のデモでは、マイクロソフトが開発するプライベートクラウドのプラットフォームである「Azure Stack」が登場した。テクニカルプレビューが始まって久しいAzure Stackを、マイクロソフトのパブリッククラウドであるAzureと並べて管理コンソールがAzureとほぼ同じであるというデモを行い、Azureの管理画面とAzure Stackの管理画面が同じようなUI、同じような機能を備えている点を見せつけた。以前、マイクロソフトのエバンジェリストにインタビューした際にも、Azureのオンプレミス版としてのAzure Stackに相当な自信を持っていたことを勘案すると、かなり開発が進んでいることが感じられた。ただしデモそのものは、ストレージの生成とそのデプロイという至って基本的な部分に終始していたことは明記しておきたい。

オンプレミス版クラウドはWindws Server 2016とAzure Stack

オンプレミス版クラウドはWindws Server 2016とAzure Stack

続いての柱「イノベーション」では、DevOpsの例としてVisual Studio Team Servicesが紹介された。ここでは実際にそれを使って開発するパイプラインを紹介した。しかし開発言語はC#、コマンドラインはPowerShell、デプロイ先はWindows Serverと、あくまでマイクロソフトプラットフォームで固めたITインフラでのDevOps実装とも呼べるもので、もう少し、Linuxやオープンソース系インフラとの連携を見てみたかったというのが、正直な感想だ。またモバイルアプリとして、Androidを対象として開発できる部分も簡単に紹介された。

Visual Studio Team Servicesのデモ

Visual Studio Team Servicesのデモ

澤氏のパートの最後のデモは、ペンとSurfaceを使ってのWebやドキュメントの赤入れ作業がいかに効率的にできるか? を紹介するものだ。その後、澤氏自身が別室からSkypeのテレビ会議で登場し、Windows MobileのContinuum機能を使ってSurface Hubでプレゼンテーションを共有するなど、デモの見栄えを気にするマイクロソフトならではの完成度の高さで澤氏のキーノートスピーチが締めくくられた。

Surface HubとWindows Mobileでドキュメントを共有

Surface HubとWindows Mobileでドキュメントを共有

その後に登壇した執行役員最高技術責任者(CTO)の榊原彰氏は、「AIの民主化」をテーマにマイクロソフトが推進するインテリジェントなエージェントであるCortana、機械学習ライブラリ、FPGAなどを使ってマイクロソフトが持つ世界最大規模のAIプラットフォームを紹介した。デモでは、高知銀行が導入した店頭での案内を行うボットが紹介された。その言語解析にマイクロソフトのライブラリーが使われている部分を紹介した後に、実際に簡単なチャットボットを作るデモを含めて紹介した。

高知銀行のチャットボットのデモ

高知銀行のチャットボットのデモ

そして最後に登壇した社長の平野拓也氏はHoloLensを紹介し、初めて日本での販売について言及した。本体の価格や提供時期、開発キットの詳細などは明確にはされなかったが、日本市場、特に企業向けのソリューションの一つとして、JALに提供したようなシステムが増えていくことが予想される。

HoloLensを紹介する平野氏

HoloLensを紹介する平野氏

技術者向けということで、セキュリティからシステム管理、アプリ開発まで一通りのデモが取り込んだキーノートスピーチだった。要所要所でのデモとJALなどの導入事例や顧客からのコメントも多く紹介され、今のマイクロソフトがバランス良く回っていることを感じられるオープニングセッションであった。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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