vForum2016レポート:vSphere、NSXにVSAN、コアな製品を揃えてSDDCを訴求
仮想化基盤のリーダーであるヴイエムウェア株式会社は、2016年11月8日にプライベートカンファレンスであるvForum 2016を開催した。2日目のジェネラルセッションでは代表取締役会長の三木泰雄氏が登壇し、ヴイエムウェアのソリューションの中核となるハイパーバイザー(vSphere)、分散ストレージ(VSAN)、ネットワーク(NSX)などについて解説とデモを行った。
ポストPC時代のヴイエムウェアの戦略
三木氏から引き継いで登壇したのは、エンドユーザーコンピューティング部門デスクトップ製品担当の上級副社長、スミット・ダーワン氏だ。ここではモダンなコンピューティング環境では、デスクトップPCだけを対象とすることはもはや不十分であり、タブレット、スマートフォン、それも個人が所有するデバイスをいかにセキュアに管理するのか? が要点であると訴求した。
その際に必要なのは、iPhoneなどを愛用するコンシューマでも使えるレベルのシンプルさや簡単さと、エンタープライズが要求するセキュリティやアクセスコントロールなどの充実した管理機能の両立だ。これらの相反する要求を満たすソリューションとして紹介されたのが、Workspace ONEという製品だ。これは2016年の初頭に発表されたモバイル管理のためのプラットフォームだ。
ここでダーワン氏は、エンタープライズで使われる最もポピュラーなスマートフォンアプリとして電子メールを紹介した。ここでは10月にVMwareが買収を発表したばかりの「Boxer」というスマートフォンアプリを使って、メールからカレンダーへの予定の登録がすぐに行えることをデモし、電子メールがスマートフォンのアプリとしてネイティブに稼働することで使い勝手を意識しながら、エンタープライズが望む機能を実現している例として説明した。Boxerは、実際にVMwareの社内では使われているという。またSalesforce.comとの連携もできているということで、顧客のメールからすぐにSalesforceのプロファイルを確認できる部分は、実際に社内で使われているようすが目に浮かぶようだ。ここで特徴的だったのは、スマートフォンアプリを使っているにも関わらず、シングルサインオンが可能になっていることだろう。コンシューマが望む使い勝手をエンタープライズでも利用可能にしているという良いサンプルと言えよう。
またSkypeの開発元であるマイクロソフトとも協業しているようで、ビジネス用に特化したテレビ会議ソリューションを来年には公開するという。この辺りもヴイエムウェアが、エンタープライズで求められるデスクトップソリューションとしてのポイントをきちんとおさえていることが見て取れる。
エンタープライズが必要とするセキュリティという部分には、Taniumというベンチャーの担当者を登壇させ、エンドポイントをセキュアに守るデモを行った。
標準機能になりつつあるハイパーコンバージド
次に登壇したのは、ストレージアベイラビリティ部門上級副社長兼ジェネラルマネージャーのヤンビン・リー氏だ。ここでは、前日にパット・ゲルシンガーCEOからも言及のあったVSANに関するプレゼンテーションとデモが行われた。VSANを使うことで、ハイパーコンバージドインフラストラクチャーをコストをかけずに実現できることがキーメッセージとして解説された。特に導入企業の多さをセールスポイントとしているようで、すでに5000社以上が使っており、ハイパーコンバージドインフラストラクチャーとしてはリーダーであると強調した。VSANはvSphereの基本機能として取り込まれているために、管理ツールからのストレージの管理も容易であるという部分が効いているのだろう。また最新情報として、次期バージョンではデータの暗号化、ストレッチクラスターでのデータ保護などが予定されていることも発表された。
Windows Server 2016にも分散ストレージ機能が標準で装備されており、ホワイトボックスサーバーをハイパーコンバージドインフラストラクチャーにすることは標準機能となりつつあることを示している。Nutanixはすでに自社製品を「ハイパーコンバージド」とは言わなくなっているが、ハイパーコンバージドインフラストラクチャーを提供するハードウェアベンダーは、差別化に苦労することだろう。
次に登壇したのは、VMwareが2012年に買収したNiciraのネットワークスタック、NSXに関するプレゼンテーションとデモだ。担当したのは、ネットワーク&セキュリティ部門プロダクトマネージメントシニアマネージャーのブライアン・ラズィア氏だ。冒頭でラズィア氏は、2013年出荷開始されたNSXは最近18ヶ月間の導入実績の増加率が400%に達していることを紹介し、NSXの導入が進んでいることを訴えた。
ラズィア氏が主張するNSXの訴求ポイントはネットワークにおけるセキュリティで、その部分にはマイクロセグメンテーションの機能を紹介した。またプロビジョニングが容易に行えることによって、構成変更などのダウンタイムが激減したという。そしてNSXの導入事例として味の素におけるAutomation、アプリの継続性に関しては中国電力の事例をビデオで紹介した。
デモとしては次世代ファイアウォールのPaloAlto Networksの機器をNSX構成に組み込むところを実行し、パケットのフローがどのように流れているのかを可視化できる部分を見せた。
最後に登壇したのは、マーケティング本部の高橋洋介氏だ。高橋氏は、ハイパーバイザーであるvSphere 6.5の新機能について説明を行った。ポイントは簡素化、セキュリティ、新しいアプリケーションのサポートだ。ここでHTML 5で新しく書き直されたWebクライアントを紹介。とにかく速くなったことを強調した。
またvCenter Server Applianceが進化し、High Availability(HA)機能が強化されたことなどが紹介された。またGUIではなくREST APIによってInfrastructure as Codeを実現できることを、JSONによってVMを立ち上げるデモで見せ、HTML 5クライアントで瞬時に状態が変遷することによって格段に速くなったクライアントの進歩を解説した。
vSphere 6.5そのものは、5.5よりも約6倍の性能を引き出していることを訴え、またオンプレミスからクラウドにvMotionする際にも通信の暗号化が行えることも示された。最後に、サーバーの仮想化の次はコンテナに焦点が移っていることを理解しているとして、vSphere Integrated Containerを紹介して締めくくった。
初日のジェネラルセッションでは、大まかな戦略としてプライベートクラウドをVMware製品で固めつつ、パブリッククラウドとの連携、親和性を解説した後に顧客事例でVMwareの拡がりを見せた。そして2日目に、コアとなるvSphere、NSX、VSAN、そしてモバイル戦略としてのWorkspace ONEを、それぞれデモを交えて紹介することで、既存ユーザーの来場者の興味には応えられたセッションであったように思える。
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