連載 :
  インタビュー

ハイパーコンバージドインフラのNutanix、CEOがプライベートクラウドの未来を語る

2017年2月1日(水)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
ハイパーコンバージドインフラストラクチャーで知られるNutanixが発表会を開催し、CEOと日本法人社長がプレゼンテーションを行った。

Nutanix(ニュータニックス)はオープンソースソフトウェアと安価なホワイトボックスサーバーでスケールアウトするクラスターを提供するベンチャーで、昨年(2016年)IPO(株式公開)を行ったばかりだ。CEOのディラージ・パンディ氏は元OracleでExadataのエンジニアリンググループの統括を行っていたと略歴にあるように、ストレージやサーバーに関しては経験豊富なプロフェッショナルだ。また日本法人の社長である町田氏は、インテルやデルを経て2016年11月にNutanixに参加したという。デルではエンタープライズ向けのビジネスを統括していた経験から、日本のSIベンダーなどには名前が知られている業界人だ。

Nutanixの創業者&CEO、ディラージ・パンディ氏

Nutanixの創業者&CEO、ディラージ・パンディ氏

プラットフォームを志向するNutanix

CEOであるバンディ氏のプレゼンテーションは主に起業家として自身を既存勢力に抵抗する反乱軍に見立てて、エンタープライズ向けのクラウドプラットフォームを提供する挑戦者としての思いを語るものだった。その中で興味深かったのは、電話、カメラ、音楽プレイヤーを融合した結果としてiPhoneが登場したことを例に「カメラなどのコンポーネントが組み合わさっただけでは『プロダクト』にしかならない。それとiCloudやAppStoreなどのサービスが組み合わされて初めて『プラットフォーム』になる」という部分だ。次に挙げた例は、電気自動車のテスラ。こちらも自動車とモーターとバッテリー、それにタッチパネル式のコンピュータを融合させたものがプロダクトとしてのテスラだが、それにネットワークやサービスを加えて初めてプラットフォームになると強調。自社の製品に置き換えてみると「ストレージ、CPU、仮想マシンを融合させたものが『ハイパーコンバージドインフラストラクチャー』。しかし我々はその先にコンテナやファイルサービス、さらにAPIによる連携を加えることによって『エンタープライズクラウドプラットフォーム』を提供する」と解説した。Nutanixが作り上げたハイパーコンバージドインフラストラクチャーというコンセプトにとどまることなく、さらにその先にあるパブリッククラウドと同等のユーザーエクスペリエンスを提供するのが、Nutanixの使命であると強調した。

次に登壇した町田氏が最初に強調したポイントは「Nutanixは100%ソフトウェアカンパニー」であると言う部分だ。これはクライアント・サーバーのシステムがソフトウェアによって革新されている状況に対して、Nutanixはアプライアンスを売るだけのベンダーではないということを強調した格好になった。

ニュータニックス・ジャパン合同会社の社長、町田氏

ニュータニックス・ジャパン合同会社の社長、町田氏

Nutanixが狙っているエンタープライズのデータセンターに設置されているサーバーのリプレースには、「シンプルな管理機能とストレージノードとコンピュートノードが融合された、スケールアウトできるアプライアンスであるNutanixが最適である」というスライドが配付資料として配られた。またプレゼンテーションでのみ使用されたスライドの中には、管理ツールであるPrismの下に「App Mobility Fabric」と「Distributed Storage Fabric」が配置され、最下層に位置するハードウェアはもはやベンダーを選ばないということだ。その上で動作するハイパーバイザーであるAcropolis(AHV)と仮想マシン、さらにDockerコンテナがあれば「いかなる仮想ワークロードであっても、NutanixとAHVで実行できない理由は皆無」だという。ちなみにこのコメントは新OSとして発表された「Nutanix AOS 5.0」の報道関係者向けの資料から引用した。

Nutanixのソフトウェアアーキテクチャー

Nutanixのソフトウェアアーキテクチャー

最後の質疑応答では「エンタープライズが求めるセキュリティとマルチテナンシーなどのネットワーク機能の今後の実装について」を質問してみた。セキュリティについてはサーバー間のマイクロセグメンテーションを例に挙げてセキュリティの必要性について解説し、その場合でもシンプルな管理機能が必要であり、そのためにPrismがあると解説。またネットワークのマルチテナンシーについては、現状では実現できてはいないが、その必要性は認識しているという回答であった。最新のソフトウェアについてはNutanixのプライベートカンファレンスである「.NEXT CONFERENCE」が、2017年6月28~30日にワシントンDCで開催されるということで、そこでより詳しい解説がなされるということだろう。

日本法人のリーダーである町田氏も就任後まだ数ヶ月ということで、これから具体的なパートナー向けの施策が動いていくことを考えると6月のワシントンDCのカンファレンスでどのくらい日本の顧客を連れて行けるか? がNutanixの日本市場での最初のマイルストーンになることだろう。引き続き注目していきたい。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

連載バックナンバー

AI・人工知能インタビュー

Red HatがAIに関するブリーフィングを実施。オープンソースのAIが優れている理由とは

2024/4/19
来日したRed HatのAI部門の責任者らにインタビューを実施。オープンソースのAIが優れている理由などを訊いた。
クラウドインタビュー

CloudflareのデベロッパーリレーションのVPが来日、デベロッパーアドボケイトのKPIを解説

2024/3/26
CloudflareのVP来日に合わせてインタビューを実施した。デベロッパーアドボケイトのKPIやAIのためのゲートウェイについて訊いた。
設計/手法/テストインタビュー

生成AIはソフトウェアテストをどのように変えるのか 〜mablに聞く、テスト自動化におけるLLM活用の展望と課題

2024/3/1
2024年2月22日、E2E(End-to-End)テスト自動化ソリューションを提供するmablは、Co-Founderの1人であるDan Belcher氏の来日に合わせミートアップを開催した。日本市場に力を入れるmablは、生成AI活用に向けてどのような展望を描いているのか。

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています