ハイパーコンバージドのNutanix、最新のソフトウェアスタックを紹介

2018年1月18日(木)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
HCIをリードするNutanixが、新しいバージョンとなるAOS 5.5の概要などの解説を行った。

ハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)をリードするNutanixが記者説明会を実施し、2017年11月にニースで開催されたカンファレンスでの発表の概要と、新しいバージョンであるAOS 5.5の概要などの解説を行った。Nutanixは、ハイパーコンバージドインフラストラクチャーという新しい製品の分野を作ったパイオニアと言っても良いだろう。IDCの調査による国内のハイパーコンバージドインフラストラクチャーの売上シェアでも、約46%を占めているトップランナーだ。

国内のHCI市場をリードするNutanix

国内のHCI市場をリードするNutanix

ただ最近同社は「ハイパーコンバージドインフラストラクチャー」という言葉を使わずに、「エンタープライズクラウドプラットフォーム」という呼び名を使いはじめており、単なるアプライアンスメーカーではなくエンタープライズのニーズに応えるソリューションベンダーとしての認知を拡げたいという意図を感じる。それは自社製のアプライアンスだけではなく、LenovoやDELL EMCそれにPowerプロセッサを搭載するIBMのシステムなどにも拡がっていることと、ソフトウェアをベースとしたソリューションベンダーとして製品のポートフォリオを少しずつ変えていることからも見て取れる。

収益のポートフォリオをソフトウェア主体に変更

収益のポートフォリオをソフトウェア主体に変更

興味深いのは、アプライアンスとしてハードウェアとソフトウェアオペレーティングシステムが合算されていたものを、OEM用のソフトウェアとオペレーティングシステムを足して新たにソフトウェアというカテゴリに分け直したところだ。ハードウェアそのもので差別化を行うのではなく、コモディティサーバーの上のソフトウェアによる売り上げが伸びていることを強調したいということだろう。

また日本でもすでに400社を超える事例があることを強調。地方自治体から中小企業、さらに金融機関までシンプルな運用が可能というハイパーコンバージドインフラストラクチャーの利点が活かされていることを解説した。

国内の導入事例も400社を超える

国内の導入事例も400社を超える

最新リリースであるAOS 5.5の技術的な解説は、いくつかの新機能に対して行われた。特にKVMを改造したAHV(Acropolis HyperVisor)については、AHV Turboと呼ばれるI/O最適化が最初に紹介された。これはKVMの中核であるQEMUのI/Oがシングルスレッドであることによるボトルネックを解消するというもので、マルチスレッド化による高速化がなされているという。これはNutanixのアプライアンスだけではなく、OEMのハードウェアでも実装されるという。

AHV TurboによるIOの高速化

AHV TurboによるIOの高速化

またAHVによるNVIDIA GPUのサポートなども解説された。現状では、NVIDIAのTesla M10とM60に対応するという。またTech Preview、つまりベータ版としてマイクロセグメンテーションが最新のAOSに実装されたことを説明。これは複数のNutanixクラスターを仮想LANでセグメント分けすることで、ネットワークセキュリティを強化しポリシーベースの構成管理を可能にする機能だ。ただしセグメントの切り出しをダイナミックに行うことはNutanixだけではできず、OpenStackを併用する必要があるという。この辺りは、Tech Previewという形で機能追加が行われる余地があるということだろう。

マイクロセグメンテーションを実装

マイクロセグメンテーションを実装

またストレージ関連では、高速なメモリーデータ転送を行うRDMAやNVMe、さらに40ギガビットイーサネット(40GbE)への対応が盛り込まれた。またI/Oの高速化という観点で紹介されたのは、AHV上の1つの仮想マシンから100万IOPSを達成することができたというスライドで、単にコンピュートとストレージを容易にスケールできるというハイパーコンバージドインフラストラクチャーであっても、専用ストレージに引けを取らないI/O性能を出すことができたという。

100万IOPSを実現するストレージ性能

100万IOPSを実現するストレージ性能

さらに通常は最小3台のノードから構成されるNutanixクラスターを、エッジでの利用を見据えて1ノードからでも構成できる構成を解説。これは可用性については諦めてでも、Nutanixのノードを配置したいIoTのエッジノードとしても使えることを意味しており、単なるデータセンターのクラスターからIoTまでをAOSで管理するニーズに対する答えといえるだろう。

1ノードでもNutanixが構成できる

1ノードでもNutanixが構成できる

他にも機械学習を応用したアラート機能、S3 API互換のオブジェクトストレージなど、着実に進化していることがみてとれる。究極的な目標は「AWSのような環境をオンプレミスで実現すること」だと説明し、ストレージを持たないコンピュートノードをAcropolis Compute Cloud(AC2)と命名する辺りにその強い意志を感じる。また昨年買収したCalm.ioの資産であるCalmも、Cloud Application Lifecycle Managementというコピーの通り、Nutanix上でのアプリケーションを自動化するDevOpsツールとして着実に統合が進んでいる。マーケットプレイス機能によって、様々なサードパーティのソフトウェアを「ブループリント」と呼ばれるスクリプトによって簡単に実装できることもポイントであるという。

CalmとPrismの統合が実現されている

CalmとPrismの統合が実現されている

しかし最新のIT業界の動向は仮想マシンベースのワークロード管理から、明らかにコンテナ、さらに言えばKubernetesによる複数のコンテナ、マイクロサービスをいかに運用するか? という部分に注目は移っている。その時に仮想マシンを最小の実行単位として管理を行うNutanixはどうするのか? という問いに対して、ニュータニックス・ジャパン合同会社のシステムエンジニアである島崎聡史氏は「最新バージョンでは、既存のAcropolis Container Serviceはすでにサポートされなくなった。今はGoogleと協力してKubernetesベースでコンテナ管理が行えるように開発をしている」という回答を得た。つまり既存のコンテナ用サービスを捨てて、ゼロから作り直しているという意味だろう。また当然だが、アプリケーション実行環境に対してもOpenShiftやCloud FoundryなどのフレームワークをNutanix上で実装した時はアプリケーションはNutanixからでは管理できず、それらのPaaSからの管理が必要であるという。

コモディティサーバーをソフトウェアによって柔軟に構成し、コンピュートとストレージを配置できるのがNutanixの強みだが、今のところは、あくまでも仮想マシンがその最小の単位である。コントローラーVMというノードに配置される仮想マシンベースのエージェントが協調して動くところがアーキテクチャーのキモと言ってもいいNutanixが、コンテナベースの実行環境及び制御のためのコントロールプレーンをどのように実装してくるのか、非常に楽しみである。今後もNutanixの進化に注目していきたい。

AOS 5.5の詳細については、ニュータニックス・ジャパン合同会社のエンジニアが翻訳したリリースノートを参照いただきたい。

Nutanix AOS 5.5 リリースノート参考訳

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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