ハイパーコンバージドインフラのNutanix、新しいハイパーバイザーを紹介

2015年10月7日(水)
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita

ホワイトボックスサーバーを使いソフトウェアでスケールアウトする統合型アプライアンスを開発する米国Nutanixの日本法人、ニュータニックス・ジャパン合同会社は2015年6月にフロリダで開催された「.NEXT ON TOUR」の国内向けイベントを9月10日に開催した。それに先立ち、メディア向けにブリーフィングを実施。今回はイベントに先立ち紹介された記者向け発表会での最新の製品情報とQ&Aの内容などを紹介する。

左からチヘダ氏、日本の代表、安藤氏、ミラーニ氏
左からチヘダ氏、日本の代表、安藤氏、ミラーニ氏

登壇したのは、日本法人の代表となるマネージングディレクターの安藤秀樹氏、Nutanix本社からはエンジニアリング担当シニアバイスプレジデント、ラジーブ・ミラーニ(Rajiv Mirani)氏、ソリューションマーケティング担当ディレクター、サチン・チヘダ(Sachin Chheda)氏の3名だ。

まず冒頭の挨拶として安藤氏が日本でのビジネスの概況を紹介。業績は好調で、現在の人員、約20名を順次増強していきたいと語った。またVDI(デスクトップの仮想化)がニーズとしては強く更にその部分を伸ばしていきたいと語り、日本ではヤフーなどの導入事例が既にWebなどで公開されているが、新たにイタリアのフェラーリがVDIのプラットフォームとして採用したことなどを紹介した。

また過去の営業のプロセスで「Nutanixのアプライアンスは高い」という印象を持たれていることを反省し、より導入が容易なエントリーモデルを揃えた製品体系を提供する予定であると説明した。

次に登壇したミラーニ氏はガートナーが実施した「統合型システム」におけるマジッククアドラントの調査結果を紹介し、EMC、Cisco、HPなどビッグネームに交じって新興のNutanixが最も革新的である(Visionary)と認められたことを紹介し、2009年の創業以来、ハイパーコンバージドインフラストラクチャーの市場を引っ張ってきた実績を紹介した。

さらにクラウド時代のデータセンターのインフラストラクチャーが様々なベンダーのソリューションで複雑になっていることを紹介し、システム管理者がベンダーやプラットフォームを意識せずに管理運用ができるシステムが必要と語り、「それがNutanixが言うInvisible Infrastructure(インビジブルインフラストラクチャー)、Nutanix Xtreme Computing Platform(XCP)である」と紹介。ストレージからコンピュートエンジン、仮想化そして最終的にクラウド環境も含めてインビジブルにすると語った。つまり具体的に言えば、「ストレージ管理者の管理を容易にすること」、「仮想化プラットフォームを意識しなくても良いようにNutanixのシステムに最適化されたハイパーバイザーを用意すること」、「統合化されたダッシュボードからAWSやAzureのパブリッククラウドへのマイグレーションを可能にすること」であることが次に登壇したチヘダ氏が解説した内容だ。

興味深いのはこれまではハイパーバイザーに関してはVMwareのESXi、マイクロソフトのHyper-V、Red Hatが推進するオープンソースのハイパーバイザーであるKVMを選択肢として推していたNutanixであるが、微妙にそのスタンスが変わっていることだ。今回、Nutanix独自のハイパーバイザーとして紹介されたAcropolisはKVMをベースにNutanixのソフトウェアに最適なチューニングを行ったものだ。それをアプライアンスと一緒に出荷し、個別にハイパーバイザーを選択、導入する必要を無くした。さらに他のハイパーバイザーを使っていても、仮想マシンを停止した後にハイパーバイザーを入れ替えて運用を継続できるというデモを紹介。ハイパーバイザーはどれを使っても大丈夫だが、出来ればAcropolisを使って欲しいというメッセージだろう。そして配布資料をよく読むとサポートされるゲストOSにRed Hat Enterprise Linuxが入っていない。つまり創業当初はVMwareのハイパーバイザーを使用したスケールアウト型アプライアンスとしてもてはやされた後にVMwareがEVO:RAILを出荷した結果、ハイパーバイザーニュートラルなポジションに落ち着いたNutanixが更に顧客のフィードバックを元にハイパーバイザーを入れる手間を省き、よりアプライアンスとしての完成度を高めた結果、Red HatのOS、ハイパーバイザーのサポートが落ちてしまったと言えるだろう。ハイパーバイザーとゲストOSとしてKVM、RHELが無いことに関してはRed Hatと継続的に話し合いを続けているという。Red HatとしてはKVMの亜種でRHELを使われることに難色を示しているということだろうか。

ちなみにチューニングしたKVMのコードに関しては全てオープンソースとして公開し、コミュニティに還元するとミラーニ氏は明言した。

Nutanixのクラスターを管理するインターフェースとなるPrismについては、クラスター、ノード、仮想マシン、仮想ディスクの単位で管理が可能になるという。将来的にはパブリッククラウドであるAWSとMicrosoft Azureも仮想マシンのオフロード先として仮想マシンの移動(VMwareでいうところのパブリッククラウドへのvMotion)が可能になる予定だ。ポリシーベースの仮想マシン管理が可能か?という質問には、今のところ社内で議論を続けていると回答し、仮想マシンのフラッシュへの固定機能とインテリジェントなリソース割り当ての機能でほとんどの顧客のニーズには応えられると説明した。

インビジブルなインフラを目指して自前のハイパーバイザーを用意したNutanix、顧客がそれを受け入れるかどうか、来年の6月にラスベガスで開催される「.NEXT Conference」に期待しよう。

著者
松下 康之 - Yasuyuki Matsushita
フリーランスライター&マーケティングスペシャリスト。DEC、マイクロソフト、アドビ、レノボなどでのマーケティング、ビジネス誌の編集委員などを経てICT関連のトピックを追うライターに。オープンソースとセキュリティが最近の興味の中心。

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