ネットワーク全体から見る「ルーター超入門」
パケット・フィルタリング機能を利用する
ルーターの役割はルーティングですが、ただやみくもにパケットを中継するだけではありません。ルーターには簡易的なセキュリティ機能が搭載されています。それがパケット・フィルタリング機能です。
パケット・フィルタリングとは、ネットワーク層のデータ単位であるパケットのヘッダーに含まれる情報(IPヘッダー情報)に基づいてアクセスを制御する機能のことです。
例えば、「あるネットワークから192.168.1.0のネットワークあてのパケットは通さない」といったIPアドレス・ベースの処理から、「HTTPプロトコルだけは通過を許可する」といったプロトコル単位の制御、さらにTCPフラグなど各種の条件を組み合わせたアクセス制御が可能です。
ルーターを冗長化してネットワークの信頼性を高める
ルーターは、冗長構成を採ることも可能です。ネットワーク障害によるユーザーへの影響度を考えると、ネットワークの信頼性確保は最重要課題です。
ルーターを使った冗長化の代表例は、WANへの出口(WANサービス)を複数存在させることです。この時のネットワーク構成には、大きく2つあります。
- (a)複数のルーターでそれぞれ個々にWAN回線を保有
- (b)1つのルーターで複数のWAN回線を保有
なお、WAN回線サービスを2系統用意する際にもっとも重要なポイントは、それぞれ別の通信事業者(キャリア)のサービスを混在させることです。通信事業者Aのネットワーク網内に障害が起きたとき、バックアップ回線が同一の通信事業者のものだったら、冗長化が意味をなさないからです。
以下では、通常運用しているルーターをアクト系、バックアップ用の装置をスタンバイ系と呼び、話を進めます。
(a)複数のルーターでそれぞれWAN回線を保有
アクト系とスタンバイ系の2系統あるWAN回線それぞれに別個のルーターを割り当てる例が、図3-1です。
この構成では、WANやルーターに障害が発生しても、スタンバイさせている予備のルーターを使った経路へ自動的に切り替わり、処理を引き継ぐことができます。信頼性を重要視した場合の構成となります。ただし、ルーターが2台になるためコストが高くつき、構成も煩雑化するというデメリットがあります。
(b)1つのルーターで複数のWAN回線を保有
2系統のWAN回線を1台のルーターにつなぐ例が、図3-2です。
この構成は、先ほどの構成と比較して信頼性では劣ります。ただし、構成するネットワーク機器が少なくなることで、費用面で優位です。
この構成では、WAN回線に障害が発生しても、バックアップ回線で継続して通信できます。ただし、ルーター自体に障害が発生するとすべての通信ができなくなります。
どういった構成を採用するかは、ネットワーク障害に対するリスクをどこまで許容できるかによります。
以上が、ネットワーク全体から見たルーターの基礎技術です。実際の現場でも、まずはネットワークの全体像を把握したうえで、個々の機器設定や障害対応を行うようにするとよいでしょう。
最終回となる第3回では、ネットワーク全体から見た「VoIP」(Voice over IP)について解説します。